メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

AKIRA

2007-01-27 19:18:41 | 映画
「AKIRA」(1988年、東宝、124分)
監督・原作・脚本: 大友克洋、音楽: 芸能山城組
声の出演: 岩田光央(金田)、佐々木望(鉄雄)、小山茉美(ケイ)、  石田太郎(大佐)、北村光一(ミヤコ)
 
普段コミックを読まず、アニメもほとんど見ていないということは、こういう作品に出会うと利いてくる。始まってしばらくいろいろ戸惑ってしまう。先日の「鉄コン筋クリート」に比べるとドラマの部分が特殊であるからかもしれない。
 
しかし通して2回見ると、これが日本のアニメの、特に昨今の海外から憧れの眼差しで見られるものそれもトップクラスのものである、ということも少し納得がいく。
 
おそらく、ゲームをやる感覚で見る人もいるだろうから、実写ドラマに比べると、一つ一つの要素としてのシーンが長くくどい。がそれはその細かくスピード感ある描写、絵を楽しみたいわけであるから、それは理由があるのだろう。
事実、冒頭からのバイクのチェイス、そしてSF的、宇宙的な、非現実的なアクションシーンというか怪物的な力との戦いのシーン、これらは圧倒的である。
 
「鉄コン筋クリート」監督のマイケル・アリアスは、この作品に最初夢中になったらしい。
有名なバイクのテールランプの残光、破壊が続くシーンの重ね描き、AKIRA的な力の飛び交う画面、これらが20年前にセル画で作られたというのは驚くが、単にその腕と労力にではなく、それらがもたらした描写と効果に感心する。
 
物語は、1988年つまり公開の年に第3次世界大戦がおこり、その30年後2019年の東京、日本は2020年のオリンピック開催を目指している。鉄雄はバイクで疾走中に転倒後、日本のアーミーに連れ去られ薬の投与で不思議な力を持ち始めるのだが、それがある秘密であるAKIRAとどう関係するのか、鉄雄の仲間であった金田、もと反政府組織にいたが金田と知り合って鉄雄を追う少女ケイ、アーミーの大佐、そして冥界からこれらにかかわる老人の顔をした子供のような三人、、、 ここらは勝手に解釈するしかない。
 
せりふにもあるようにAKIRAとは絶対のエネルギーとでもいうべきもので、これを解明し力を出させるということは宇宙生成の追試とでもいうべきものだろう。
 
最後は鉄雄と女の子が犠牲になって他の連中を助けるということに、結果的になったのだろうか。
 
この種の話として、見る前の想像と違っていたのは、ここにはアポカリプスがないということである。つまり、人間世界は堕落しているのだが、それを怒ったものが罰を下すという図式にはなってない。一部の強欲な連中は滅びるが、それは日本にある普通の因果応報である。
最後は、少年・少女達がなんとか片付けていくのである。
 
案外、こういうところが海外から見て新鮮なのではないだろうか。アポカリプスでないというのは良いことではあるが、今後もう一つ別の次元に突き抜けるとどうなるか、期待はある。
 
絵で気になったのは、登場人物の顔に類型が少なく、また女性も男性と変らないから、最初のうち見ていてわかりにいこと。
 
冒頭から音響、音楽の質が高いと思ったら、クレジットに芸能山城組、なるほど。
 
AKIRAのエネルギーが大友克洋の作画の源泉だったのだろうか、そんなことを思った。

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