「鉄コン筋クリート」(2006年、111分)
監督: マイケル・アリアス、アニメーション制作: STUDIO4℃、原作: 松本大洋、脚本: アンソニー・ワイントラーブ、音楽: Plaid
声の出演: 二宮和也、蒼井優、伊勢谷友介、宮藤官九郎、大森南朋、岡田義徳、田中泯、本木雅弘
アニメは大人になってからまともに見ていない、ましてスクリーンで見るのは。 この作品はそれでもなんとなく気になり、アニメの現在はどんなものかという興味と、声優のラインナップに惹かれたことから、見に行ってみた。
絵とCGの組み合わせであるが、なんとも不思議な立体感であり、少し昔の街を再現するというならCGだけよりリアルな感じを結果として受けるかもしれない。
この街に育ったスーパー悪がき(?)のクロ(二宮)とシロ(蒼井)、この対照的であり相互補完的な二人が、街の再開発、ヤクザの抗争の中で、辿る苦悩、苦闘と再生の物語、これは珍しいものではないかもしれないが、感情移入させるには充分なものである。
ただし、途中すこし編集のテンポにたるみがあって、そのあたりはアニメの方が陥りやすいものかもしれない。
監督のアリアスは製作にあたって最もインスパイアされた映画として「シティ・オブ・ゴッド」(2002)をあげた。
もっともだけれど、あのテンポの域に達していればと思う。
終盤、敵から差し向けられたサイボーグのような連中にやられそうな危機でそれを打ち負かすイタチ、そしてその手からクロが逃れ、またシロと一緒になる。
このイタチはおそらく闇の象徴であり、その虚無が敵に勝ち、そしてその虚無からクロが逃れる、そのためにシロが見えないところから気を送る、、、ということなのだろうか。
疑問に思うのは、こういうシュールな世界に入ると絵の調子ががらっと変わるところ、もちろん意識的にそうしているのだが、今これだけCGが使えるということが、このクライマックスの感銘を浅くしていないか、ということである。
声の出演は期待どおりだが、主演の二人はかなり大変だったはず。特にシロの蒼井優は、せりふが多く、感情の起伏も大きく頻繁、しかもある部分ではシロのせりふが実質的に物語の説明を兼ねているから、バランスも難しいはずだけれど、そこはさすがであった。
ところでこの鉄コン筋クリートという言葉、90年代に書かれた原作よりずっと前、特に何かの作品からということでなく、ふざけた言葉の遊びとして、よく耳にした。起源はなんだったのだろう。 この映画で久しぶりに接して妙に懐かしい。