「プルートで朝食を」(BREAKFAST ON PLUTO、2005年アイルランド・英、127分)
監督: ニール・ジョーダン、原作: パトリック・マッケーブ、音楽: アンナ・ジョーダン
キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、ルース・ネッガ
同じニール・ジョーダン「モナリザ」、「クライング・ゲーム」などの細かいところは忘れたが、これらでも扱われたと記憶する夜の世界、IRA、ホモセクシュアルなどがここにもあるけれども、それらがもっと自由に軽々と扱われ、母をたずねて三千里の要素も加わり、見終わっていい気持ちになる傑作である。
アイルランドの教会入り口に置かれたゆりかごに入っていた男の子、もらわれ育てられるが、自身の意識は女、そして母を捜してロンドンへいくが、IRAとも知り合いになり、その性ゆえにトラブルもある。コミカルな要素も交えながら主人公パトリックが生き抜いていくという形でドラマは進む。
IRAが、そして警察が絡むシーンは厳しいが、パトリック個人の一つ一つの出来事が、それ以上の重さで扱われているから、全体として暗くならない。こういう境遇、社会に生きていても、人一人には個人に特有な具体的な問題があり、それを見つめることによって、世界の見え方は異なるのだ。
と、いうのだろう。
パトリック役のキリアン・マーフィは見事というにつきる。
神父役のリーアム・ニースンは、最初立派過ぎるかなと思ったし、もう出てこないかと思ったが、どうして、、、ここらは脚本がうまい。
元IRAのチャーリー(ルース・ネッガ)が妊娠中絶に悩むところからの、彼女とパトリックのかかわりは、驚きの連続で、しかもしっとりとした味わいを残すのは、演出のうまさだろうか。
面白いのは、いわゆる風俗の覗き部屋が教会の告解室に対置されるていること。
音楽は、冒頭「シュガー・ベイビー・ラブ」(ルベッツ)から、「風のささやき」(ダスティ・スプリングフィールド)、「慕情」をはじめ、なんともうまく採用されて快調に続く。それも楽しさの一つ。
これらと物語のトーンから「ガープの世界」を連想したが、「プルートで朝食を」の方が思い切りがいいと言えるだろう。
昨年5月からはじめたブログ、これでちょうど100本になった。