「007/カジノ・ロワイヤル(CASINO ROYALE)」(2006年、米・英、144分)
監督: マーティン・キャンベル、原作: イアン・フレミング、脚本: ニール・バーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス、音楽: デヴィッド・アーノルド、主題歌: クリス・コーネル
ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニ
こうしてジェームズ・ボンドは007となった、ということが初めて映画で描かれたということなのだろう。だから、冒頭の危機を咄嗟に乗り越えたあと、「007/ドクター・ノオ」(1962)のタイトル・シーンが出てくるのは、それを示すと同時に、これまでのシリーズの関係者に対するオマージュなのだろう、と受け取った。
全体としては、この2時間超を飽きさせずに見せており、アクション娯楽編としてよく出来ている。監督・編集のテンポもいい。
ダニエル・クレイグのニュー・ボンドも決まった時には非難ごうごうというのが、出来あがってみればみんな黙ったというのもよくわかる。
がしかし、彼は体は強そうだし、歳も30代なのだから、もう少し敏捷であってほしかった。最初のアフリカ、建設機械の中でチェイスを続けるシーン、どう見ても逃げる方の俳優の見事な体のこなしに比べるとあまりにも重い。
これまでもこんなに長いアクションシーンはなかったのではあるまいか。ヴェニスのところも長いし。
カジノのポーカーの場面。ポーカーはあまり知らないけれども、この長丁場に、休憩時間に行われるエピソードを挟んで展開するが、あの「シンシナティ・キッド」(1965)のスティーヴ・マックイーンを覚えている人は皆あれを思い出してしまうから、ちょとと甘いかな、ボンドもル・シッフルもと思ってしまう。
今回のプライム・ボンド・ガールのエヴァ・グリーンは、製作者の期待に応えているばかりか、ボンド、そして見るものに感情移入させるに充分な素材であり、演技である。
それにしても、ジェームズ・ボンドという役は、そしてストーリーはもう少しいいかげんな、例えばアクション、女たらしぶりが似合うのではないだろうか。「こんなことありえない、、、」というアクション映画でも、このごろのものは、妙に苦心して、CGなど使ってリアルにしたがる。
思えば、原作の東西冷戦という背景は、それがあまりにも圧倒的な力を持っていたために、そのパロディとしてのボンド・シリーズが可能であった、とは言えないだろうか。
今、東西冷戦を扱った小説がそのまま映画化されにくい、それは何なのか、よくわからないが。
マティス役のジャンカルロ・ジャンニーニ、どこかで見た顔と思って調べてみたら、ヴィスコンティの「イノセント」(1975)の主役だった。これはスクリーンで見ており、それ以来。(「ハンニバル」(2001)にも出ていたらしいのだが覚えていない)
ジュディ・デンチのM、今は彼女しかないだろう。みかけはともかく結構男が好きそうという匂いも漂わせて。
カジノからアストン・マーチンを飛ばして追いかけ、道に転がっているものをよけたもののひっくり返ったシーン、おそらく今の最高級日本車だったら、転がらないだろう。