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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

バート・バカラック 死去

2023-02-11 14:56:43 | 音楽
バート・バカラックが亡くなった。2月8日、94歳
いろんな形で聴かせて、楽しませてもらった。
 
聴くだけでなく、いくつもの映画を味わいの深いものにし、また映画がこの人へのオマージュになっているのではないかというものもあった(カジノ・ロワイヤル(1967)、ベスト・フレンズ・ウェディングなど)。
 
いろんな人が歌っていて、バート・バカラック ソングブックというアルバムがいくつも出ている。こういう楽しみがこんなにある人は珍しい。
 
おおげさな話でなく、クラシックからジャズ、ポップス、ロックその他あらゆる分野をまとめてながめ、20世紀の音楽家10人を選んだらこの人は必ず入るだろう。
 
私も10数年前からヴォーカルを始めたが、バカラックの曲をおそらく20くらい人前で歌っている。ほぼ完成するといい気持ちなのだが、セッションなどでいきなり合わせると、バックの人たちは途中で拍子が変わったり、大変なこともあるようだった。
 
これから折にふれ時間をかけて回顧することになるだろうか。
元気をもらった曲もいくつかあるが、とにかくまずは「アルフィー」でも歌おうか。

パリ祭コンサート2022

2022-11-30 10:14:21 | 音楽
パリ祭コンサート2022 
<曲目>
  劇的物語「ファウストのごう罰」 作品24から
  「ハンガリー行進曲」 ベルリオーズ 作曲
  歌劇「椿姫」から 「ああ そはかの人か」~「花から花へ」 ヴェルディ 作曲
  ピアノ協奏曲 イ短調 作品16から 第3楽章  グリーグ 作曲
  バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35から 第3楽章 コルンゴルド 作曲 ほか
<出演>
  ピアノ:アリス・紗良・オット
  バイオリン:レオニダス・カヴァコス
  チェロ:ゴーティエ・カプソン
  ソプラノ:ネイディーン・シエラ
  メゾ・ソプラノ:レア・デゾンドレ
  テノール:スタニスラス・ド・バルベラク
  バリトン:アーウィン・シュロット
  合唱:フランス放送合唱団
     フランス放送少年少女合唱団
  管弦楽:フランス国立管弦楽団
  指揮:クリスティアン・マチェラル
2022年7月14日 シャン・ド・マルス公園広場(パリ) 2022年11月 NHK BSP

この催しは毎年やられているかどうか知らないが、今回初めて見て、ロンドンのプロムナードコンサートやドイツ・オーストリアで夏に屋外で開催されるものと比べてもより楽しめるものだった。
 
上記のプログラムはほんの一部だが、全体にヨーロッパの各地やアフリカなど、楽曲はよく目配りがされていて、バランスが良かった。ただポーランド(ショパン)やロシアがなかったのはこのご時世とはいえよくわからない。どっちにしても音楽は別と知らん顔でというのもフランス人らしくていいのだが。
 
また今時よくと感じたのはドン・ジョヴァンニの選曲、マゼットに悪いと渋るツェルリーナをナンパするジョヴァンニ、またレポレロが歌う「カタログの歌」ではご主人ジョヴァンニの千をこえる相手についてうぶな若い子から年増まで「スカート履いてればだれでもいい」という歌詞がしつこく出てくる。
屋外でこんなに大勢でTV中継もされる場で、今時ジェンダーについてポリティカル・コレクトネスを気にしていればナンバーとして取り上げるのをためらう国も多いと思うけれど。
そこはそういう問題で必ずしも遅れていないフランスでも音楽の場は別ということなのか。それになにしろモーツアルトだから。
 
それに最後のフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」(ベルリオーズ編曲)を久しぶりに歌詞テロップを見ながら聴いたけれど、これも今時国際紛争になりそうな歌詞、それを少年少女合唱団も加わって歌っているし。
 
後半に入ったところであっと思わせたのは先にもアップしたラモー「みやびなインドの国々」のヒップホップを思わせる「未開人の踊り」で、さすがにオペラ座でヒットしただけあり聴衆もよく知っていてのりが格別だった。
出演者はアリス・沙良・オットを除くと初めての人たち(アリス・沙良・オットも映像は初めて)、中ではチェロのゴーティエ・カプソンの美しい音とプレージング、ソプラノのネイディーン・シェラの歌唱に加えあの美貌、が印象的だった。
 
ところであんな大きな屋外会場でも、TV映像と音はこれだけ鮮明で心地よく聴けるのには驚く。実際に聴いている人たちにはどう聴こえているのだろうか。PA技術も発達しているのだろうが。
クラシック系の音楽はどうしてもホールトーンに慣れている聴衆も多いから、この分野の技術は難しいだろうが、うまくいっているとしたらすごいことである。
 
先の「ミュージカルの歴史」にあったように、1960年代のロックあたえりから、音の録り方出し方が変わってきて、それがある程度時間をおいてクラシック分野にも来ているのだろう。



プーランク「人間の声」

2022-11-20 14:03:23 | 音楽
プーランク:モノオペラ「人間の声」 脚本:ジャン・コクトー
ダニエル・ドゥ・ニース(彼女)
アントニオ・パッパーノ指揮 英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
監督:ジェームズ・ケント
製作:2022年 ロンドン(管弦楽)、パリ(声、映像)
2022年11月 NHK BSP

しばらく前にこの作品初演メンバーによる録音(LPレコード)を取り上げた。
演じるのはソプラノ一人、バックにオーケストラはあるがほとんど語りで、これは映像で見たいと思っていた。
 
今回はオーケストラと演技を別のところでとっているが、多分オーケストラが先でこれに合わせたのだろうと思うがどうなのだだろうか。どっちにしろ違和感はない。放送ではドゥ・ニーズとパッパーノが対談しているが、意識合わせは十分だったのだろう。
 
当時のパリの電話事情の悪さ(切断、混信など)もうまく利用しているが、これも映像とあわせると納得できる。
 
ドゥ・ニーズの演技はこうしてアップのカメラで見ると本当になりきった感じで、この作品に最もあった見せ方だろう。
 
電話がコードレスなのには最初驚いたが、彼女のうごきに自由度を与えているようにも見える。オペラが作られた時代にこうだったかどうかは別として。
ただ、コードレスだと最後の場面どうなのかなと思っていたら、終盤からコード付きのものにかわった。やはり、であったが最後は受話器もコードも画面からは見えなかった。
 
が、よく考えてみると舞台であればその方がよくわかるからともかく、こうして彼女のアップの映像が続けばそれはいらない、視覚に支配されない方がいい、という解釈だろう。
 
それにしてもコクトーとプーランク、よくこんなものを考え作った。愛と別れというシンプルなテーマをまたこういうシンプルな場面設定で、観るものを集中させ一気に見せる。



オルガ・ノイヴィルト「オーランドー」

2022-05-22 09:41:54 | 音楽
歌劇:オーランドー
作曲:オルガ・ノイヴィルト、原作:ヴァージニア・ウルフ
指揮:マティアス・ピンチャー、演出:ポリー・グレイアム
衣装:コムデギャルソン(川久保玲)
ケイト・リンジー(オーランドー)、アンナ・クレメンティ(語り手)、エリック・ジュレナス(守護天使)、コンスタンス・ハウマン(エリザベス女王ほか)
2019年12月18、20日 ウィーン国立歌劇場 2022年5月 NHK BSP
 
ウイーン国立歌劇場150周年記念で2019年に上演されたもののうちの一つで、これは新作である。
 
ヴァージニア・ウルフの原作で、なかなかわかりにくいのだが、おそらくエリザベス1世からどちらの性か自分でも意識しないで生きてきてあるとき女性になってしまった(自覚してしまった)オーランドー(作者)の前半生(?)がまず描かれる。いろいろな時代のいろいろな事件、問題が出てくるが、多様、多彩な背景だからここに起用されたコムデギャルソンの多くの衣装が効果を見せている。
 
ただ音楽はというと、あまり流れない瞬発的な効果をねらった劇伴のように聴こえた。
 
原作はヴィクトリア朝時代の女性にとって問題が多かった時期のあとあたりで終わっているようだが、このオペラではそのあとの大戦、原爆などこの上演の2019年までが描かれている。この後の部分は前半よりは音楽が流れているように感じたが、それは作曲者の意図だろうか。
 
2幕3時間あまりの本作品、私にとって見続けるのは難しいと思ったが、なんとか最後までいったのは、ひとえに主役オーランドーを演じたのが私が大ファンであるケイト・リンジーだったからである。ほぼ出ずっぱりで大変だったと思うし、メゾ・ソプラノとはいえ前半はずいぶん低い音域も続いた。この人あって成り立った上演にはまちがいないところだろう。

彼女のレパートリー、いわゆるズボン役といわれているけれど、オクタヴィアン(ばらの騎士)タイプではなく、もう少しあぶないというか、偏った要素がある役で聴かせる、見せるところがある。ケルヴィーノ、ニクラウス(ホフマン物語)、ネロ(アグリッピーナ)など、これだけ興味を続けさせてくれる歌手はめずらしい。
 
ピンチャー指揮ののオーケストラ、この長丁場の新作、ロック・バンドも入って大変だったろうがよくやりとげた。
2019年の記念上演には先にとり上げた「影のない女」もあり、レパートリーの広さはさすがシュターツ・オパー。
 

ヴェルディ「マクベス」(ミラノ・スカラ座)

2022-03-18 17:56:34 | 音楽
ヴェルディ:歌劇「マクベス」
指揮:リッカルド・シャイー、演出:ダヴィデ・リーヴェルモル
ルカ・サルシ(マクベス)、アンナ・ネトレプコ(マクベス夫人)、イルダール・アブドラザコフ(バンクォー)、フランチェスコ・メーリ(マクダフ)
2021年12月7日 ミラノ・スカラ座開幕公演  NHK BSP
 
この前の開幕公演は観客なしの映像編集で内容は別の意味で素晴らしかったが、今回はほぼいつもどおりで、まずはよかった。

私にとってマクベスはヴェルディのなかでもオテロとならんで苦手なオペラで、それは原作がこうだからしょうがないといえばそうなのだが、それでも今回はあの激務ともいうべきマクベス夫人をネトレプコが完璧に熱唱、そして刺激があって快適に追っていける演出、特に舞台美術で、まずまず鑑賞できたと思う。
 
かなわないなという感じの悪女だが華があるということになると、いまはネトレプコしかいないかもしれない。マクベス、バンクォー、マクダフも皆よかったが、衣装を含めもうすこし対照があったほうがよかったと思う。
 
装置は現代のいろんなものをうまく使い、せりとして檻のようなエレベーター、そしてやはり檻状のしきりなどが、眼を飽きさせない背景、照明とともに効果的であった。
しかし、カーテンコール時の感じでは、賛否が分かれていたのだろうか。
 
この上演では、いわゆるパリ版のように、つまりパリでの上演ではそれがないと客が入らないから入れているバレエが入っている。終盤に入る前あたりであるが、筋立てを暗示する感じであっても、説明がすぎるところもあり、評価はわかれるところである。振付はなかなかいいが、スカラのバレエは他の主要オペラ座と比べるとあまりうまくないのは今回も残念。
 
このオペラ、特に最初に述べたように、私にとってはオーケストラが立派であればなんとかなのであるが、シャイー(ずっとマスク着用だったのは年齢を考えての責任意識だろうか)の指揮は文句のつけようがない。激しいところこわいところでも音響は割れたようにならない。それはこのところ技術向上が著しい音の採録とトーン・コントロールにもよるのだろう。