喉鳴りは喘鳴症と呼ばれ、これは喉頭片麻痺の同義語としても使われたりする。しかし、育成段階から含めて、いわゆる「喉鳴り」の中で最も多いのはDDSP軟口蓋背方変位だ。
左の披裂軟骨が麻痺する喉頭片麻痺の喉鳴りはヒューヒュー。一方、DDSPはゲロゲロ、ゼロゼロ、ブルブルというように表現される。
DDSPは若い馬に多いのだが、馬が肉体的にも精神的にも強くなってくると、ほとんどの馬が自然に治る。
それで、DDSPの喉鳴りだと診断しても、あまり積極的に手術は勧めていない。
ただ、3歳になってもDDSPが治まらないとか、2歳でも調教が進められないとか、悠長に待っていられない。という場合はなんとかしなければいけない。
昨年からは、コーネルカラーhttp://www.vet-aire.com/を使ってみるように提案してきた。ほとんどの馬はDDSPを起こし難くなるようだ。
ただ、コーネルカラーを付けたまま競馬をするのは日本では無理なようなので、治してしまいたければ手術を考えるしかない。
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DDSPの手術方法は何種類も行われている。
喉頭を引っ張る筋肉を切除する方法。その筋肉の付着部を切断する方法。これらはいずれも、喉頭が後(尾側)へ引っ張られて、軟口蓋の下へ落ちるのを防ごうと言う考えだ。
軟口蓋の辺縁を切除する方法。軟口蓋の鼻側を焼烙する方法(左)。軟口蓋の口側を焼烙する方法。軟口蓋の口側を舟形に切り取り縫い縮める方法。これらは、軟口蓋を固くしたり、持ち上がらないようにして、喉頭蓋が落ち込むのを防ごうとする方法だ。
これらの方法は、いくつかを組み合わせて行うことができる。
しかし、いずれの方法も成功率は6-7割と考えられている。
私の経験でも、喉頭蓋が薄いとか短いとか弱いなどの問題がなければほとんどの馬が手術で良くなったが、喉頭蓋の異常がある馬では、良くならない馬がいた。
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コーネルカラーを開発したグループは、同じ考えによる手術も考案し報告している。その成功率は8割以上としている。
左はその術式を示した図。甲状軟骨を舌骨へ糸でひっぱることで、喉頭を前(鼻側)へ牽引し、喉頭蓋をしっかり軟口蓋に乗せ、落ち込まないようにする。
前へ引っ張るのでTie-forwardと呼ばれていくだろう。
この手術にあわせて、甲状軟骨を後(尾側)へ引っ張る筋肉の付着部を切ることもできる。
舌骨にドリルで孔をあけ、そこに通した糸で甲状軟骨を引っ張る。
この傷は縫って閉じてしまうので、喉頭切開した傷のように開けっ放しにはしない。
全身麻酔したついでに、鼻から入れた内視鏡に高周波焼烙器(電気メス)を通して、軟口蓋の焼烙もあわせて行っている。
以上、図と写真はEquine Surgery 3ed. http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1416001239/httpdrhiblogj-22 より
自分とこでやってる写真は今度撮っておきます。なかなか写真撮ってる余裕が無いんだよな~。