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電話室便り
ブルージャスミン / Blue Jasmine
2014-07-04 / 映画
5月にシネマフロンティアにて観ました。
ウッディ・アレンの作品の魅力は、たくさんありましょうが、私にとって彼の作品を観に
行く最大の理由、それは 「 人生はコメディ! 楽しみましょう! 」 というアレンの
一貫したメッセージを受け取り、そうそうそうだよねと共感したいってことでしょうか。
今度はどんな手練手管で笑わせてくれるのかワクワクしますし、また、どんな組み立てで
その独特のセンスを展開してくれるのかドキドキもします。
私はウッディ・アレンのセンスがとっても好きなのです。
作品ごとの主題曲ともいえる楽曲選びのセンス、俳優陣に着せるファッションのセンス、
キャスティングのセンス、そして映像センス・・・あんな冴えない ( ゴメン ) 小柄で
しょぼくれたメガネ男、なのにこの手加減なしの見事な選びっぷりには毎回唸ります。
そりゃあ 『 インテリア 』 のような全く笑いのないシリアス作品もありはしますが
( それも最高に素晴らしい出来ですが ) 、アレン作品の真価はコメディ。
次から次と登場する 「 いるよいるよ、こういうヒトっ! 」 の変態たち。
ええーっと仰け反る予想外のストーリーの ( 結果、心が ) ニンマリするような落ち。
字幕読みでも最高に笑える、そして感心しきりの極上の話術。
W・アレン作品を観終わると、わたしはかなり元気になってます。
「 こんなアタシでも、ぜーんぜんオッケーなんだ!! 」 という具合にです。
さて、今回の新作 『 ブルージャスミン 』。
ウッディ・アレン x ケイト・ブランシェットなのですよ。
なんと魅力的な組み合わせでしょうか。
ウッディ・アレン作品は、やはりアメリカが舞台のものが私は好きですが、今作はニュー
ヨークとサンフランシスコ。ホームスタジアムにおかえりなさいって感じです。
ジャスミン ( ケイト・ブランシェット ) のホントの名前は、ジャネット。
彼女曰く、 「 ジャネットなんて平凡 」
だからジャスミンにしただけよ、だから何だっていうわけ?
なるほどねえ、確かにジャスミンって素敵な響きだし、ちょっと珍しい東洋的な匂いも。
昔はジャネットだったはずのジャスミンという女性の虚しい上昇志向、そして得た、華や
かでリッチでどこまでも手応えの無い虚しい上流生活、やがて全てが破綻し何もかも失っ
ても、それがいかに虚ろで中身のない嘘っぱちの暮らしであったかということに全く気づ
けないどころか、どこまでもかつての華やかさにしがみつこうとするジャスミンの哀れ。
ケイト・ブランシェットがねえ、鳥肌もので素晴らしい!
虚ろで憂鬱 ( ブルーな )ジャスミンという女を完璧に体現しているのです。
精神のバランスを失っていく様を、病的な発汗や震えさえ発症しているな、と観客に伝え
ていく演技のニュアンスにさらにアレン一流の 「 アホかいな 」 の笑いをのせて、さら
に、美しい!のです。マスカラがべろんべろんに溶け崩れた顔のアップでも美しくゴージ
ャスで決定的に救い無しで哀れなのです。オスカー女優かくありき。
ブラッサイの写真集 『 未知のパリ、深夜のパリ 1930年代 』 の中に登場する
「 モーム・ビジュー 宝石の女 」、ジャスミンはこのままいくと間違いなく現代版の
モーム・ビジューになっちまうな。
義理の妹・ジンジャーと彼女の男達、ジャスミンの元夫、没落後の彼女が出会う男達。
玄人好みのクセの強い名優揃いの布陣は、まさにウッディ・アレン流です。
いちいちおかしくて、こってりとクドくて、登場するたび、セリフが口から飛び出すたび
に笑えます。こういった脇役俳優たちのいぶし銀のごとき達者な芸を観られるのもアレン
作品ならではの醍醐味でしょう。
ウッディ・アレンは78歳になったのだそうです。
高校1年生の放課後に、友達と制服で観に行ったのが 『 インテリア 』 でした。
それからずっと。
ずっとウッディ・アレンは撮り続けているのです。常にクオリティの高い、時に映画史に
輝く傑作を。
私はファンですけれど、全作品を観ているわけではないんです。
ですが、やはり今しみじみと、ウッディ・アレンと同時代に生きていられて良かった、
そう思わずにはいられません。
マンハッタンへの憧れを、彼の映画を観ずして募らせた我々中年世代っているのかな?
マンハッタンへの愛を彼ほど美しく表現した監督っているのかな?
日々、悪戦苦闘の毎日ですが、へこたれそうになったなら、ウッディ・アレンの映画を
試してみて。スクリーンの向こうで活発にいろんな ” 活 ” をしている変人・奇人の動
向を垣間見てヘラヘラ笑けているいるうちに、アレン流人間愛、街愛 ( ←こんなのアリ
? ) を味わううちに、なんだか気が緩んでビールでも飲もっか、という気になってきて
しまうというものです。なんという変態揃い!でもそれでいいんだよなあ・・・つーか私
のほうがよっぽどまとも!! って感じかな。
「 人生はコメディ。観てくださいよ、こんな人達でさえそれなりにハッピーなんです
から。楽しみましょう。 」
あのしょぼい泣き笑い顔でウッディが言ってくれますから。
現代アメリカ映画界の至宝。
だけど、こういう讃えられ方は全く彼の趣味ではないですね。
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