お江戸もの



このところ、私と息子 ( 4歳 ) は、お江戸ものの絵本を楽しんでおります。

” お江戸もの ” ???

お江戸もの、それは、勝手に私がそうカテゴリー化しているだけなんですが、

江戸の町を舞台にしている時代劇風の絵本のことなのです。

これがですねえ、子供向けだなんて侮れないおもしろさなのです。

お江戸ものは、昔話絵本とは一線を画しています。

町並みには、武家屋敷があり、商家があり、職人の専門店の看板があり、町行く大勢の人

の交差があり、お太鼓橋があり、防火の貯水樽があり、屋台があり、

江戸弁があり、風俗がある。

それらがお話と一体となって、作者・画家の腕の見せ所とばかりに遊びに遊んで作品を

作っているのです。つまりは、とっても都会的!!!

そして、読み聞かせの楽しさ、これがもうたまりません!

はっきし言って、私、江戸ものを読んで聞かせるのって、物凄くうまいです。

才能あるなあ、アタシ・・・と、毎回自分の読みに酔います。

登場人物の声色、口調はもちろん、スピードの強弱や声量の微調整、気配を漂わせた

り、場面ががらりと変わった時のすっぱりとした変化のつけ方 e.t.c. e.t.c.

どうしてこんなにノリノリで、どうしてこんなに解っていて、どうしてこんなに

巧みに読み膨らませる事が出来るのだろうか・・・・・職業替えをして、

江戸モノ紙芝居やのおばさんになったほうが余生にお金を貯められそうか???

などと、あまりの自分の入り方に驚き、その理由といいますか、ルーツを探っていき

ましたところ、どうやら突き当たりましたよ。

それは、『 遠山の金さん捕物帳 』 ではないかしら、と。



    ♪ 気前がよーくて 二枚目でー、

      ちょいとやくざな

      遠ー山ざくらあー

      ごぞんじ長屋の金さーんにいー

      惚ーれなーいやーつは悪だーけさあー

      おおっとー 金さーん まかせたよー  ♪


ああ、、そうでした。 子供の頃、毎週欠かさず観てました。

もちろん 中村梅之助の金さんです。( 金さん役は梅之助に限る、絶対にっ!!!

・・・ といっても、杉良太郎とか高橋英樹、松方弘樹の金さんは観てないのにねえ、

またしても独断の決めつけー!)

長屋の金さん こと、江戸北町奉行・遠山佐衛門尉景元の大活躍時代劇。

お話の前半は、町の遊び人金さんがお馴染みの登場人物たちと事件に遭遇、

半ばに悪人どもに金さんが自慢の桜の刺青を見せ付けておいて、

最後にはお白砂での裁き、そして、

証拠の桜吹雪のくりからもんもんをガバリッともろ肌脱いで見せ付けて 、

出た~っ名セリフっ、

「 やいやいやいっ! この桜吹雪を忘れたあ とは言わせネエぜっ、 」

ざっくり裃で上段を降り、羽織もろとも半身脱ぎ捨て、刺青奉行の見事な見栄~!!!

まあ、毎回同じこのパターン、というのがホントっ手管でしたよね~。

金さんカッコイイー! と子供心にスカっとして溜飲が下がり、

そして悪人どもが 「 ああーっ! 」 っと目を見開いて激しく驚き、

あの桜の刺青の遊び人と目の前のお奉行様が同一人物であることにはじめて気づいて

「 ははあーーっ 」 と深くうなだれたり、無駄な抵抗で暴れたりするのが楽しみだ

ったわけなのですが、このシリーズにて、江戸の町のムードとか、所属する階級によって

いろいろな話し方やら所作やらがあるんだなあ、と教えてもらい、知らず知らずに

心と体に沁み込んでいたのですねえ、

いやあ、『遠山の金さん捕り物帳 』 が40年の時を経て今、息子への読み聞かせで

活きようとは、当時の私には全くもって想像だにしなかったことではありまする ( ま、

あたりまえだよネ )。

絵本作家の先生方も、こういった時代劇や、もっと前のチャンバラ劇なんかの薫陶をもろ

に受けてお育ちになった年代かと思われ、永遠不滅の懐かしさ、日本人のDNA 、お江戸文

化の魅力を絵本に目一杯込めてるなあ、と。

お話の筋運び、定石のキャラクター設定、細かいところまで勝負している江戸の町や

人々の風俗の描き込み方、色づけの見事な配慮・・・・・ 全くもって絵本の顔した

大人の遊び、かもしれません。


” お江戸もの ” 絵本収集、しばらく地道に続く予感、まずは、おもしろかったもの、

ご紹介です。







たしか、『 ほっぺ 』 っていう幼児向けおはなし月刊誌での連載だったかと思いますが

ワタシの読み聞かせでの才能が炸裂 ( 笑 ) した記念すべき1冊。

新米お籠持ちのしんたとちょうたが事件に巻き込まれ、ああどうなっちゃうの?!

という楽しい作品で、あやしいお屋敷、あやしい人物達、あやしい大荷物、と、あやしさ

てんこ盛り、さらに江戸弁のスピード感、絵の迫力も満点!

キャラの立つこと立つこと、最高です。連載時では、おかみさんが猫のぶんたに話しかけ

ている場面では、キセルとお銚子で燗酒だったと思うのですが、絵本ではお茶になってお

り、セリフもかなり省略変更されています。変更前の方が粋でいいのになあ。

飯野和好さん、時代物ノッてます。


『 しんた ちょうたの すっとびかご! なぞのおおにもつ 』
ISBN978-4-05-203340-7
作者: 飯野和好  
出版社 : 学研








シリーズあともう1冊、『 くものすおやぶん ほとけのさばき 』 が出ています。

両方とも ” むしまち ” が舞台ですが、まあ、虫版の江戸の町なんです。

主人公は岡引のくものすおやぶん こと おにぐものあみぞう !!! 

もうこれだけでサイコーな感じがひしひしと。 こぶんの はえとりの ぴょんきち

をつれ大活躍、つくつく寺 ( もちろん蝉の住職に蝉の幼虫の小僧さんたち ) に押し入

った泥棒の正体は? そして無事捕まえる事ができるのか??  

むしまちなので、全て、虫。あらゆる虫に着物を着せているんですよー!!! 

いやはや、それが巧みで全く無理がなく、要は作者・秋山あゆ子さんが物凄く上手いと

いうことねー。こう、なんといいますか、妄想入ってます、かなり。

細かーい部分まで描き込んでいるけれど、作風があっさりしているので重くならず、

本質的なおたく臭さの消臭効果高し。 江戸文化( お寺とか仏像とか装束とか ) の

知識もかなり高レベルであることもうかがえるのでした。



『 くものすおやぶん とりものちょう 』
ISBN4-8340-2149-1

『 くものすおやぶん ほとけのさばき 』
ISBN978-4-8340-2546-0

作者 : 秋山あゆ子
出版社 : 福音館書店






さて、もうひとシリーズ、これもいいよ~!!

おでんさむらい、こと ひらた おでん は剣の達人。おとものカブトムシ かぶへい

( 大きさ犬並み!腹掛けつけてます ) をつれて江戸の町に現れる化け物どもを

やっつけます。この本は、息子が図書館から借りてきたのが出会いですが、もういっぺん

で大好きになってしまった!!

さかやきもぼさぼさに伸びちゃっていて、無精ひげで、地味で質素な貧乏侍のおでんが

なかなかにイイ男、なんですよ。心優しくて照れ屋で剣豪、密かに茶店のおみっちゃん

に恋しているんです。

そして、この絵本、結構奥が深い。江戸時代の庶民の暮らしは異界との共存であった

ろうということが裏テーマになっているようです。

春・夏・秋・冬 の四季ごとの4冊のシリーズなのですが、それぞれに毒蜘蛛の妖怪、

火の車の妖怪、嘆き女にとりついた般若、傘おばけの子供、と、立ち現れるのが全て

化け物なのです。しかも、昼日中堂々と、人込み構わず現れます。

「 女の恨みや嘆きがやがて鬼になる、という狂女伝説そのものよーっ、この絵本! 」

と、秋の 『 おでんさむらい ちくわのまき 』 を手にして驚くH女史。

ちなみに、H女史は日本文学系業界のひと。たかが1冊の子供向け絵本とは思えぬ・・・

と感心しておられました。 さすがは内田麟太郎、全体に漂うへんてこムードと江戸文化

のミックス加減の手腕に痺れます。

ほんわかと優しいタッチの絵がこれまた見事で、和紙に描かれているそうです、なるほど

暖かで渋さもあり、名コンビ西村繁男画伯の絵がさらに楽しさをプッシュ!

今、シリーズ3冊まで入手していまして、あと1冊 春の 『 しらたきのまき 』 を

残すのみ、頑張ろう! かなりのオススメですよー!



『 おでんさむらい こぶまきのまき 』
ISBN9784774311326

『 おでんさむらい しらたきのまき』
ISBN9784774313818

『 おでんさむらい ひやしおでんのまき』
ISBN9784774317427

『 おでんさむらい ちくわのまき 』
ISBN9784774314280

文 : 内田麟太郎 絵 : 西村繁男
出版社 : くもん出版




息子はこれら時代劇絵本の影響をモロに受けちゃっておりまして、目下彼は、サムライ

に変身した際は、「 一刀流・煮干力之助 にぼしちからのすけ 略してニボチカ 」

( 命名、とーしゃん )なのです。本人大マジメ、「 とやーーーあっ!!! 」 と立ち

回り、こちらは笑いをこらえるのと、刀で切られないようにかわすので必死でーす!


























   





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