アマゾンからこんな広告が来た:
「Andrew Johnston」の 『Caesar und Calpurnia.』をお買い上げのお客様は、「Ulla Schmid」 の著書もお求めであるため、このご案内をお送りしています。 Ulla Schmid 著『Die List des Arminius』Perfect 、現在好評発売中です。
訳すならば『アルミニウスの企み』か。歴史小説らしい。名前からするとドイツ人作家が、長いこと「ゲルマンの英雄」として扱われていた人物を描くとは、興味は感じる。
大学の教室で、まえの授業のプリント残りが置いてあって、それが案外興味のあるものだともうけもの。「トイトブルクの森の戦い」戦場記念発見に寄せてーーアルミニウスの神話化と脱神話化ーー (坂井栄八郎) という、どこの本か知らないけど、2000年に行われた講演からまとめたものがあった。
言うまでもなくアルミニウスといえば、アウグストゥス晩年の打撃として必ず出てくる「ヴァルスよ、軍団を返してくれ!」のあの事件の首謀者である。
この講演の副題のほうに私の興味は向いている。少々まとめてみると:
ローマ=ゲルマン時代の出来事はローマの史書によって伝わった。それが16世紀にドイツに知られ、人文主義者によって伝えられるとアルミニウスはローマを破ったゲルマンの英雄として人気が出てくる。ただしドイツでだけ有名だったのではなく、ヨーロッパ中でたくさんのオペラがつくられていて、ドイツ・ナショナリズムとは関係なく、ローマものまたは愛憎劇が多かった。
ドイツ・ナショナリズムは対ナポレオン戦争の影響が大きいけど、その中で劇作家ハインリヒ・フォン・クライストの『ヘルマンの戦い』(1808)は、もろに対フランスの時代なので、支配者であるローマとフランスがだぶっていて敵意が激しい(そもそもクライストという作家が人も作品も激烈なんだけどねーーレーヌスの私見)。その初演は1839年。その前年にはトイトブルクの森の南部に「ヘルマン記念像」を建てる運動が始まっていて、このころから民族の英雄としてのイメージが広がっていったと見られる。完成は1875年。ドイツ統一は1871年なので、まさにドイツのナショナリズムと連動していた。しかし20世紀の後半から、「脱神話化」、アルミニウスの戦いは外国支配に対する民族蜂起などではないという意見、時代によってかなりイメージに変化があることなどに注意されるようになってきた。
ーーということである(私にとって興味のある部分は)。
ナショナリズムというもの、日本でもドイツでも警戒される度合いがたぶんよそ(アメリカやフランス)よりもはるかに強いだろう。ドイツ人の間で(自国の)歴史を娯楽のタネにすることが、少なくとも日本人ほど盛んでない(ように思える%)ことは、「あつものに懲りてナマスを吹く」現象だろうか?
% 「ドイツの歴史では、どういう事件・人物・時代が人気ありますか?映画などでよく取り上げられますか?」と、たびたびドイツ人の友人知人に尋ねてみたけど、答らしい答を得た試しがない。日本人なら、特別歴史に知識がなくても、娯楽ものなら江戸時代、大河ドラマでは戦国末期がよく出てくる、などどなにか答えられるだろうに。
「シシィ」は、アニメやら映画やらでポピュラーなようだし、ルートヴィヒ2世もミュージカルになったりしてるから、これらの名前を挙げる人はいるかもしれない。
ゲルマニストの私が言うのもナンだけど、やはりドイツ史(狭義の意味での)はノリが悪いと思う。彩りに乏しいって感じだ。
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大学の教室で、まえの授業のプリント残りが置いてあって、それが案外興味のあるものだともうけもの。「トイトブルクの森の戦い」戦場記念発見に寄せてーーアルミニウスの神話化と脱神話化ーー (坂井栄八郎) という、どこの本か知らないけど、2000年に行われた講演からまとめたものがあった。
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この講演の副題のほうに私の興味は向いている。少々まとめてみると:
ローマ=ゲルマン時代の出来事はローマの史書によって伝わった。それが16世紀にドイツに知られ、人文主義者によって伝えられるとアルミニウスはローマを破ったゲルマンの英雄として人気が出てくる。ただしドイツでだけ有名だったのではなく、ヨーロッパ中でたくさんのオペラがつくられていて、ドイツ・ナショナリズムとは関係なく、ローマものまたは愛憎劇が多かった。
ドイツ・ナショナリズムは対ナポレオン戦争の影響が大きいけど、その中で劇作家ハインリヒ・フォン・クライストの『ヘルマンの戦い』(1808)は、もろに対フランスの時代なので、支配者であるローマとフランスがだぶっていて敵意が激しい(そもそもクライストという作家が人も作品も激烈なんだけどねーーレーヌスの私見)。その初演は1839年。その前年にはトイトブルクの森の南部に「ヘルマン記念像」を建てる運動が始まっていて、このころから民族の英雄としてのイメージが広がっていったと見られる。完成は1875年。ドイツ統一は1871年なので、まさにドイツのナショナリズムと連動していた。しかし20世紀の後半から、「脱神話化」、アルミニウスの戦いは外国支配に対する民族蜂起などではないという意見、時代によってかなりイメージに変化があることなどに注意されるようになってきた。
ーーということである(私にとって興味のある部分は)。
ナショナリズムというもの、日本でもドイツでも警戒される度合いがたぶんよそ(アメリカやフランス)よりもはるかに強いだろう。ドイツ人の間で(自国の)歴史を娯楽のタネにすることが、少なくとも日本人ほど盛んでない(ように思える%)ことは、「あつものに懲りてナマスを吹く」現象だろうか?
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「シシィ」は、アニメやら映画やらでポピュラーなようだし、ルートヴィヒ2世もミュージカルになったりしてるから、これらの名前を挙げる人はいるかもしれない。
ゲルマニストの私が言うのもナンだけど、やはりドイツ史(狭義の意味での)はノリが悪いと思う。彩りに乏しいって感じだ。
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