レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『ズルい言葉』

2010-07-28 05:14:09 |   ことばや名前
 酒井順子『ズルい言葉』、
 世に氾濫している、よく使ってしまう便利で、しかしちょっと安易と思わないでもない、そういう言葉のあれこれについてのエッセイ。筆者自身が共感を持っているものも、嫌いなものもある。
 筆者つまり酒井さんが嫌いだと書いていて私も嫌いなのは、食材相手の「してあげる」。私が実際に料理番組を見るということはほとんどないけど、そういえば確かに、「タマネギは水にさらします」でなく「さらしてあげます」なんて言い方を耳にした記憶はある。料理だけではなくて、計算問題の説明でも、「合計点を人数で割って」を「割ってあげて」なんて言うのをイライラしたことがある。
 道順の説明でも、「改札を出て、横断歩道を渡って、しばらく直進して」ですむところをいちいち、「出て頂いて」、「渡って頂いて」なんてある。「お客様に命令してはいけない」という決め付けが強すぎでかえって煩わしい。シンプルに「してください」でいい、私に決める権限はないけど、それで不快になりはしない。 へりくだっておけばそれで安心、という態度はそれはそれで横着になるものだと思う。
 ほかに興味深いのは、バブル時代にタクシーの運転手がわりにいばっていた時代によく使ったという「近くて申し訳ないんですけど」が話題の章で前ふりに出てきた「間違ってるかもしれないんですけど」。小学生のとき授業で指された生徒が答えの前によく口にした言葉であるそうだ。間違ってても笑ったり怒ったりしないでほしい、という防御壁だったという。そしてあんまりみんながそれを言うので先生はあるとき「キレた」。--私もきっと腹立つだろう。間違ってるかもしれないのはあたりまえだ、授業中に間違えるのをいちいち言い訳するな鬱陶しい!と。間違いを正すために先生はいるようなものなんだから。
 (学者先生の書いた本や、テレビでの講釈に間違いがあったら激怒するけどな。)
 「夏バテ防止」の章で、夏になると料理番組や料理記事で頻出するのが「夏バテ防止」だけど、自分を含めて、夏だからって食欲が落ちたりしないんだけど、という主張(?)には大いに同感する。私もなった覚えないぞ、夏バテ。寒さには警戒するけど、夏場にはわりに元気だ。睡眠不足やら悪条件が重なればともかく。思えば、過去の貧血体験もむしろ冬のほうが多かった。
 夏ヤセなんてこととも無縁である。
コメント
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