ALQUIT DAYS

The Great End of Life is not Knowledge but Action.

やさしい影

2011年01月15日 | ノンジャンル
クリニックの待合で、他の患者さん達の話を聞くとはなしに
聞いていた。

まだ若い女性は、朝も飲んでしまったらしい。
痩せ細って、ごぼうのような足をしている。

顔色も悪く、飲んだせいか、大きめの目だけが
ギラギラしている。

先生はマスクをしているので、大丈夫かなと思って、
来院したらしい。

若いうちは仕方がないとは思いながら、処置室で
シアナマイドを飲む彼女を見て心配になった。

シアナマイドを服用して、お酒を飲めば、救急車で
運ばれることになる。

だが、お酒を飲んでからシアナマイドを服用しても、
あまり大変なことになったという話は聞かない。

クリニックでは、初診のみ、アルコール臭をさせての
来院、診察を認めている。
当然、抗酒剤もその場で服用させられるが、状況によっては、
点滴などの処置後に服用させるらしい。

何事もなく、帰ることができたならいいのだが・・・。

別の男性は、もう20年近くクリニックのお世話に
なっているらしい。
無論、通算20年ということで、断酒20年ではない。

自助グループに参加して、終わった後に飲み、
通院して、帰りに飲むということを繰り返していたらしい。

お酒の話ばかりで、それがやっと終わると、今度はその反動で
飲んでしまうということらしかった。
自分では言い訳と自覚していながら、そうせざるを得なかった
ようである。

ある日、クリニックの帰りに、自動販売機でお酒を買い、
それを飲もうとしたときに肩を叩かれた。
それが故院長先生であった。

「まだやめられんのやな。」

一言先生は仰って、そのお酒を受け取り、代金を彼に
渡したそうである。

彼はそれから飲まなかったという良い話にはならない。
そういう病気である。

だが、彼にとってはその出来事が、お酒をやめようという
ひとつの原点となっている。
お別れの会に出れば、その後の自分に自信がない。
だから行かなかったと言う。
その人なりの先生に対する想いが見えて、今更ながら
涙が浮かんだ。

クリニックから駅までには、酒屋、コンビニ、自動販売機、
飲み屋がずらりと並んでいる。
先生は帰りがけにはそこを通って、患者さんがいないか
見ておられたという話を聞いたことがある。

クリニックにも、いや、私を含め、患者さん達の心に今なお、
そしてこれからも、先生のやさしい影が残っている。

帰り際には、いつも外から診察室に向かって一礼する。
今日はひとしお、先生の面影に感謝する想いであった。




なにか?

2011年01月15日 | ノンジャンル
「君子危うきに近寄らず。」

断酒初期に、口を酸っぱくして言われることである。

「酒席はできるだけ避けましょう。」

治療プログラムを一通り終え、復職するとすぐに出張、
接待となりましたが、なにか?

「身近にアルコールは置かないように。」

目の前で、カミサンが飲んでいますが、なにか?

「お酒がつき物だった状況をつくらないように。」

家族で居酒屋、焼肉、お好み焼きと、食事しましたが、
なにか?

昔は、食べるものといえば、お酒の肴、あて、つまみ。
今ではすべてご飯のおかず。

「危うきに近寄らず。」は正論であり、心がけるべきである。
ただ、避けられないなら、「危うきを危うきと知る。」
ことが最も肝要だと思うのである。

危ういと知れば、想定される状況に前以て心の準備ができる。
そして、その危うきを脱したときが、最も危ういことをも
知っておかねばならない、

薄氷を踏むような、幾多の危険を脱してきたのは、
その都度の前以ての気構え、心構えという準備であったのだ。

そして危険を脱したときの安堵の時に訪れる最大の危機を
乗り越えるには、さっさと寝てしまうことである。

ということで、寝ますが、なにか?