yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

過香積寺  王維

2023-06-04 06:19:07 | 文学
初唐の自然詩人、詩仏ともいわれた王維の五言律詩を紹介します。香積寺は長安の南、終南山の山すそにある寺。王維が終南山に遊び、この寺をおとずれたときの作です。
 
      過香積寺

      不知香積寺 
      数里入雲峰
      古木無人逕
      深山何処鐘
      泉声咽危石
      日色冷青松
      薄暮空潭曲
      安禅制毒龍 

        「読み方」
香積寺ニ過(よぎ)ル

      知ラズ 香積寺(こうしゃくじ) 
      数里 雲峰ニ入ル
      古木 人逕(じんけい)無シ
      深山 何処(いずこ)ノ鐘ゾ
      泉声 危石ニ咽(むせ)ビ
      日色 青松ニ冷ヤカナリ
      薄暮 空潭(くうたん)ノ曲(くま)
      安禅 毒龍ヲ制ス

      「訳」

     ここが香積寺の霊域とは知らぬまま、私は数里の間、雲にそびえる峰の奥 へと分け入った。あたりには古木が生い茂るばかり、人の通う道もない。その深山の奥で、どこからか、鐘の音が聞こえてくる。泉の水は高い岩にあたって、むせぶような響きをたて、日光は松のみどりにさして、つめたい色をたたえる(いかにも静澄な、ゆかしい世界だ)。夕ぐれ、人気のない淵のほとりで、心静かに坐禅を組みつつ、諸人に害をなすおそろしい竜を、そしておのれの煩悩を封じこめている一人の僧の姿を、私は見た。

           前野直彬 注解 「唐詩選 上」岩波文庫



 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする