yoshのブログ

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静夜思 李白

2022-06-20 06:22:22 | 文学
盛唐の詩人 李白の静夜思を紹介します

牀前看月光
疑是地上霜
頭挙望山月
頭低思故郷

 「読み方」

 牀前(しょうぜん)月光ヲ看(み)ル
疑(うたご)ウラクハ是(こ)レ地上霜カト
頭(こうべ)ヲ挙(あ)ゲテハ山月ヲ望ミ
頭(こうべ)ヲ低(た)レテハ故郷ヲ思フ

 「訳」
秋の静かな夜ふけ、寝台の前に月の光がさし込んでいる。あまりにも白いので、地上に降った霜かと疑ったほどであった。光をたどって頭をsげてみると、山の端に名月がかかっている。その名月を眺めるうち、故郷のことがふと思いおこされ、知らず知らず首をうなだれて、しみじみ望郷の念にひたったことである。
 「鑑賞」

後半は対句ですが、近体の格には、はずれます。つまり、この詩は、古朴な味わいをねらいとしたものです。五言絶句は、もと南朝の民歌から発しました。その民歌の持つ素朴なうたいぶりによって、望郷の念をしみじみ歌ったものです。
 冴え冴えとした晩秋の気、すきとおる月の光、その中にこみあげる郷愁がくっきりと浮かび上がる。谷崎潤一郎もいうように、恋しいとも悲しいともいわないが、作者の痛いほどの感傷は、読者に強く迫ってきます。この詩は、時空を超えて人々に感動を与えます。

谷崎潤一郎はこの詩について以下のように書いています。
「この詩には何か永遠の美しさがあります。御覧の通り、述べてある事柄は至って簡単でありまして、、、今から千年以上も前の「静夜の思ひ」でありますけれども、今日われわれが読みましても、牀前の月光、霜のやうな地上の白さ、山の上の高い空に懸った月、その月影の下に
うなだれて思ひを故郷に馳せてゐる人の有様が、不思議にありありと浮かぶのであります。
又、現に自分がその青白い月光を浴びつつ郷愁に耽ってゐるかの如き感慨を催し、李白と同じ境涯に惹き入れられます。」

「唐詩選」の編者、李攀竜(りはんりょう)も李白を評して、「五言七言絶句の如きに至りては、実に唐三百年に一人のみ、蓋し不用意を以って之を得たり」と絶賛してます。

この詩は、いたって平易で自然体なよみぶりの中に、しみじみとした感慨が詰まった佳作であり、故郷を離れて暮らす人々に勇気を与え愛されています。

石川忠久「漢詩の楽しみ」時事通信社
石川忠久 「吟剣詩舞道漢詩集 絶句編」日本吟剣詩舞振興会



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