yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

遊三樹酒亭 菊池渓琴

2016-04-03 06:15:46 | 文学
幕末明治の漢詩人、紀州の菊池渓琴(1799~1881)の七言絶句です。正式な題は三樹亭ニテ摩島子毅とトモニ同じく賦ス

三樹ノ酒亭ニ遊ブ

烟濃山淡映晴沙
日落春樓細雨斜
朦朧三十六峰寺
箇々鐘聲緩出花

烟(けむり)濃(こま)ヤカニ山淡クシテ晴沙ニ映ズ
日落チテ春樓細雨斜ナリ
朦朧タリ三十六峰ノ寺
箇々ノ鐘聲緩ヤカニ花ヲ出ズ

「訳」
   春の一日、心通う友達とうち連れて鴨川のほとり、三本木の酒楼に上れば、靄が濃く立ちこめてきて、山色が淡く薄れ、晴天の川砂の明るさとの対照が美しい。やがて日が沈むと楼外は小雨となり、細かい雨足が斜めに、わずかに風が吹いているもようである。おぼろに霞む東山三十六峰の寺々から晩鐘の音が一つ一つゆるやかに花の雲の間から洩れ聞こえてくるのである。

「鑑賞」
  詩の好きな親友、摩島子毅と京都三本木の料亭に遊んだ折の作。この詩は菊池渓琴が到達した最高の境地を示している。起・承・転・結の運びにより、みごとに時間の推移による景色の変化を見せている。起句は淡彩の山と日ざしの明るい川原を対映させており、承句では、いつしか日も暮れて降りだす小雨、転句では、その雨にけぶる三十六峰のおちこちの寺、それをうけて、結句では花の雲間からゆるやかに鳴りいでる寺々鐘の声に耳を澄ますという光景をよく詠じている。作者の感性の繊細さを感じさせる詩である一方、しなやかさはあっても弱さがない、骨のある詩としてまとまっている。

   「吟剣詩舞道漢詩集 絶句編」 日本吟剣詩舞振興会
コメント
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