yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

佐々木則夫監督

2011-08-23 05:44:52 | 文化
女子ワールドカップ決勝戦において、勝敗を決めるPK戦が始まる直前、佐々木則夫監督となでしこジャパンの選手は笑顔でした。対するアメリカの選手の顔は引きつっていました。ご承知の通り、なでしこジャパンはPK戦を大差で制し、世界一の座につきました。
これに先立つ1月28日に、佐々木監督は「なでしこ力(ぢから) さあ一緒に世界一になろう!」という本を出版しており、言葉通りに7月18日に見事に栄冠を勝ち取りました。この本の中には、彼の監督としての思いが書いてあります。

(1)11(イレブン)の心得   (これは多分、指導者としての心得だと思います)
1 責任
2 情熱
3 誠実さ
4 忍耐
5 論理的分析思考
6 適応能力
7 勇気
8 知識
9 謙虚さ
10 パーソナリティー
11 コミュニケーション

これら11の項目は、足し算ではなく掛け算。1項目でもゼロ(ゼロに近い値)があれば、その人に指導者の資質はないと佐々木氏は述べています。

(2)肩書は部下を守るためにある。
 これは佐々木氏が父を見て学んだことです。土木建築業を営む父は、従業員が他人とトラブルを起こした時、文句をつけて来た相手に対して、「責任者はこの私だ。部下に文句があるなら、まず私に挨拶しなさい」と前面に出ていって追い返しました。また、従業員が重機を誤操作して水道管を破裂させた時、父は真冬の寒さにひるむことなく、冷たい水が噴きあがる穴の中に飛び込んで応急処置をしました。佐々木氏は父の背中から「肩書きは部下を守るためにある」ことを学んだそうです。チームが負けた時、批判を浴びる役目は監督が負うべきである、間違っても選手に責任を転嫁してはいけない。結果が残せなければ職を追われるのは当然だ。監督という肩書きは。その責任を引き受ける勇気に与えられるものだ。僕という人間が偉くなったわけではないと、述べています。
「肩書き」という言葉を「リーダー」に置き換えれば、一般社会にもそのままあてはまると私は思います。

(3)スコットランドからの喝采
2008年3月、キプロスに遠征中のこと。スコットランドの女子代表チームがやって来て
練習試合を申し込まれました。試合が終わるとスコットランドの監督が彼のところにやってきて言いました。「いやあ、日本人は素晴らしいよ。」彼が喝采を送ったのはなでしこたちの仕合前の振る舞いでした。両チームの選手たちは、ウォームアップを終えるとその場で上着を脱いでピッチに整列しますが、その脱いだ上着をスコットランドの選手たちはピッチ脇に乱雑に脱ぎ捨て、スタッフに拾わせていました。一方、なでしこたちは上着を軽くたたんで並べて置きました。全員が自然にそうしたのです。
「さすがですよ。礼儀正しさ、きめ細かい心配り、道具への愛着も感じます。」
「きっと、日本人が世界で信頼される理由は、こういうところにあるんですね。」
と、スコットランドの監督は言ったそうです。

 (4)なでしこ
なでしこの花は、紅色または淡いピンクで、「万葉集」では可憐な女性に喩えられ、「枕草子」でも、「いとめでたし」と記述されています。この花のイメージは日本の女性によく似合っていると思うと佐々木氏は言います。日本サッカー協会は2007年になでしこヴィジョンを策定しました。「ひたむき、芯が強い、明るい、礼儀正しい」という4つの心を挙げ、「なでしこらしい選手になろう」と呼びかけました。

 (5)横から目線
佐々木氏は監督でありながら、上から選手に対することはなく、いつも横から目線で接し続け、選手には「ノリさん」と親しく呼ばれました。
禅宗の言葉に「歩々是道場」と言う言葉があります。佐々木氏は「心掛け一つで、どんな場所も自分を高める道場になる」という言葉をモットーとして人間力を磨かれてきました。そして、個々の選手が能力を充分に発揮してチ-ムの力が最高になるのに腐心しました。なでしこジャパンが佐々木氏のような監督を持ったことは、大きい幸運だったのではないでしょうか。
 なでしこジャパンが益々、躍進することを祈念しています。

佐々木則夫著 「なでしこ力 さあ一緒に世界一になろう!」 講談社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする