山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

つくば市の総合運動公園騒動に思う

2015-08-12 04:09:22 | 宵宵妄話

 つくば市は私の住む守谷市には隣接していませんが、20kmほどの近場にあり、その中心となる研究学園エリアは、商業施設等も多く、又文化活動も盛んで、私どもも月に数回は家内のフォークダンスの練習や買い物などで訪れている所です。

 そのつくば市で、先日総合運動公園基本計画の賛否を問う住民投票が行われました。その結果は、賛成が20%弱、反対が80%強と、圧倒的に反対が賛成を上回りました。このことについて、野次馬の立場から私見を述べてみたいと思います。

 まず私が一番先に思うのは、この住民投票は計画に対する賛否を問うているわけですが、休日の1日をかけて多くの住民に問う内容としては、あまりにも単純で、住民の本心を捉えていない、無駄の多い投票だったと思います。本来問うべきは、市当局が作成した計画の良し悪しではなく、総合運動公園が必要か否かということではないかと思うのです。その上で、現在の企画案が良いか悪いかを確認すべきではなかったか。投票で住民の労を煩わすのであれば、もう少し投票のあり方を工夫すべきだったと思います。ま、しかしこれはもう済んでしまったことなので、今更ツベコベ言ったところで始まらないことです。

 さて、この投票結果から、市長は計画を白紙に戻すことを検討しているということですが、これは当然のことだろうと思います。投票率が47%程度ですから、投票しなかった人たちの声を勘案しても反対の声が大きいのは間違いないことであり、民意を尊重せざるを得ないということでありましょう。問題は白紙にした後、市長をはじめとする市政の幹部関係者がこのテーマをどう扱うかということです。反対が多かったので、もう考えることは止めるというのであれば、それは余りにも無責任というものです。なぜなら総合運動公園計画がポシャったのは、反対する市民のせいだという理由だけで片づけてしまってはならないからです。

 私がつくば市民であれば、基本的に総合運動公園の建設は賛成です。仮に500億円をかけて、もっともっと立派な施設を造るべきと考えます。しかし、今回の様な投票のやり方では、やはり「反対」に一票を投ずることになると思います。それは費用が305億円もかかるからという理由ではなく、計画や企画の目的や理念等に関して、或いはその内容や進め方に関して不明で納得し難いものがあるからです。その主な理由としては、次のようなことがあります。

 この問題を考える上では、つくば市民の暮らしという立場だけではなく、つくば市の茨城県における位置づけ、首都圏エリアにおける位置づけ、更にはわが国における位置づけ等々を考えた上で、この先何を目指すのかという視点が重要だと考えます。しかし、今回の計画ではこの点がどのように考慮されているのかが判りません。もし、305億もの費用を投じて、つくば市民のためだけの福利厚生施設の充実を図るというのであれば、それはナンセンスな話であり、これはもう費用対効果という観点からも、福祉倒れ逼迫財政を招来するに違いなく、反対しない方がおかしいということになるでしょう。今回の投票では、その大極的な視点からの発想がどう活かされているのかが見えてきません。

 思うに、つくば市は茨城県の中では、県都水戸市に次ぐ人口を有する市であり、将来的には水戸市を抜いて茨城県第一の雄都となる可能性大です。というのも、つくば市のロケーションは東京という大都市圏の中にあり、TX(=つくばエキスプレス)の運行により近郊の開発は益々進展し、それに伴って人口の増加も継続しているからです。また、日本国内の位置づけを見ても、つくば市は研究学園機能を持つ国内最大級の市であり、日本の頭脳といわれる方たちの多数がこの街で暮らしています。科学エキスポの開催に伴って生まれたこの市は、一方に農村エリアを抱えながらも、確実に国際性を備えた大都市化の道を歩んでいると考えられます。

 そのようなつくば市なのですが、体育文化施設といえば、現在はほんのわずかしかなく、陸上競技場、野球場はもとより、劇場も音楽堂も美術館も他に誇れるようなものは皆無といっていい状況です。これらの施設は茨城県全体を見ても貧弱であり、万人を超える収容力のあるものといえば、サッカーの鹿島スタジアム(鹿嶋市)の他はケーズデンキスタジアム(水戸市)くらいのもので、鹿島スタジアムを除けば、プロのゲームを招聘出来る能力のある施設は無いというのが現状です。

 このような状況の中で、つくば市は半端な運動公園などを造るのではなく、国内でも有数といえるような施設を志向すべきではないかと考えます。陸上やサッカー、ラグビーなどの国際マッチが可能な競技場をメイン施設として、プロ野球の興業が可能な野球場などの他に観客席を備えた総合体育館など、茨城県内では他にない規模の体育運動施設を志向すべきと考えます。勿論これらを一挙に造るというのは乱暴な話で、先ずは百有数年先の市の国際的、国内的な位置づけ等のビジョンを明確に示し、その上で優先順位を決めた各種運動文化施設の企画プランを提示しなければならないと思います。

 今回の投票のことで気になっているのは、305億円という費用が本当に無駄の多い投資なのかということです。民意というものが、運動文化施設というものの意義を忘れ、単にコストのことばかりを問題にするというのならば、つくば市には永遠に国内に誇るような施設は生まれないということになります。確かに今回の東京オリンピック開催に係る国立競技場の問題に関しては、あまりにもずさんな取り組みにあきれ返るばかりですが、だからと言って国を代表するような運動施設が、お金がかかるから不要だということにはならないと思います。

 私はつくば市に建設されるメイン施設としての競技場が300億円を超えるようなものであっても、市の誇れる施設として必要だと考えます。つくば市は、もはや県の代表的な都市として、水戸を凌ぐほどに国内では知名度が高くなっているのです。暮らしの充実という点での民意なるものも確かに大切な視点だと思いますが、当座の暮らしばかりに気をとられている発想では、後世に残るような建造物も遺産も生まれないのです。庶民の暮らし優先だけの行政(=治世)感覚が、後世に残る世界遺産を生み出したというような話は世界のどこを探しても見当たりません。つくば市が民意という妖怪に飲み込まれて、未来に対して何も創り出そうとしない、そのような市とならないことを心から願っています。この後のつくば市の総合運動公園騒動の行く末をしっかり見守りたいと思います。

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