山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

二人の超老に思う

2019-01-12 02:06:59 | 宵宵妄話

この正月の幾つかの特別番組の中で、二人の超老の話と暮らしぶりを見て感動し、思うこと大なるものがあった。その二人とは、篠田桃紅という方と杉本フクノという方である。篠田桃紅さんは著名な書・画家であり、杉本フクノさんは熊本県に住まわれる普通のご婦人である。

超老というのは、自分の老世代論の世代区分での最上位に位置する95歳超の世代を意味する。因みに簡単にその世代区分を言うと、65歳までは準老で、老となる準備をする世代、65~75歳は順老で、老に馴れる世代、75~85歳は真老であり、これは老となったのを実感する世代、そして85~95歳は深老であり、老の深まりを覚える世代である。95歳を超えると、人はもう老などというものにはとらわれなくなり、まさに我が思いのまま己の生を動かす世代だと、自分はそのように老という世代を区分して考えることにしている。この世代区分は健康で我が身を処することが可能であることを前提としており、病などにより心身が侵されて動きがとれなくなった状態では、この世代区分は当てはまらない。

自分は今真老の世代に入って3年目となるのだが、このまま順調に超老に辿り着くとは思えず、深老世代まで行ければ御の字だなと思っている。この正月もそのようなことを想いながら一つ新しい年を数えたのだった。

さて、前記のお二人のことだが、先ずは杉本さんのこと。見ていた番組は日本各地の巨樹の何本かを紹介する番組で、杉本さんが登場されたのは、熊本県熊本市北区にある「寂心さんのクス」と呼ばれる樹齢800年ほどの楠の大樹で、この樹は巨樹の中では比較的若い方だと思うけど、その枝ぶりは見事で、未だ若者という樹勢を思わせる姿だった。この樹の紹介に合わせて杉本さんが登場し、根元の力瘤をなでながら、この樹からパワーを頂戴していると、心底崇めている姿が印象的だった。もう60年近くこの樹にほぼ毎月会いに来ておられるという話で、ご自身はあと何ヶ月かで95歳になると話されていた。そのことだけならば、まあ熱心な樹の崇拝者が居られるものだとさして驚きもしなかったのだが、そのあとこのおばあさんは何とご自分で車を運転して、ご自宅を紹介されたのである。80代も後半になったら、運転免許を返上しなければならないだろうなと思っていた自分には、度肝を抜かれるほどの驚きだった。くるま旅の知人で90歳でも旅を楽しんでおられた方がいて、尊敬していたのだが間もなく鬼籍に入られて、もうそのような方は居られないのではと思っていたのだが、この杉本さんの姿を見て、本当に驚いた。ご婦人なのにである。女性が運転免許を持つことの少なかった時代からであろうから、今日に至るまでにはいろいろご苦労されることが多かったのかもしれないなと思った。しかし、95歳の今になっても日常的に車を運転して出掛けておられるというのは、これはもう普通ではない。別格の生き方だなと思った。25人ものお孫さんやひ孫さんに囲まれて墓参りをされている姿も放映されていたが、それを美しいなと感動的に拝見したのだった。

もう一方の篠田桃紅先生は、杉本さんよりも10歳年上の105歳の書家、芸術家である。この方のお姿はTV画面で何度か拝見している。少し前、まだ日野原重明先生がご存命だった頃に、超老のお二人が対談されているのを見たことがあり、感銘を受けたのを思い出す。日野原先生は既にあの世に旅立たれて、今回は篠田先生お一人の現在の生きざまについての紹介だった。見ていて、話を聴いていて、そのアーティストとしての作品にかけるエネルギーの凄まじさに圧倒される感じがした。もはや老をあれこれ論ずる様な心境などどこかへ放散されつくしている感じさえした。老の先にある死でさえ超越した意識が、作品に向かっている様に思われ、凄いの一言に尽きると思ったのである。

お二人を比較するのはナンセンスというものであろう。暮らしの足場が全く違っているし、年齢も超老とはいえ10歳もの開きがある。しかし、お二人ともまさに超老なのである。自分が思ったのは、自分も又自分なりに超老の境地を味わってみたいということなのだ。普段、超老にまで辿り着けるとは思っておらず、自分も両親と同じように米寿(88歳)まで生きられるかどうか自信は無いのだが、お二人のそれぞれの生きざまを見ている内に少し欲が出て、折角天から戴いている生命なのだから、がんばって超老の世界を覗いて見たいと思った。まだ真老の半ばにも達していない。この後様々な災厄がやって来るに違いないのだが、何とか払いのけ、乗り越えてその心境を味わってみたいと、初めてそう思った。この新年の最大の収穫だった。

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