『ザ・ビジョン』より ビジョンを持った企業だけが生き残る
誕生時から不変のAmazonビジョン
私は、かなりのAmazonユーザーです。かなりと書いたのは、購入だけでなく検索も含めるとAmazonを利用しない日はないからです。
まず、本の8割はAmazonで購入します。それ以外にもプリンターのインクや紙、パソコン関連の品物、文具、サプリメント、薬、家電…………変わったところでは庭の枝切り用の電動バリカンなんてものも買っています。
ここ4~5年の購入品数は年間180品くらいから220品前後。ほぼ2日に1回は注文を出しています。それ以外にも、いろいろな本や製品の評判をチェックしたりすることもよくあります。また、それほど数は多くないのですがプライム会員用のビデオを見たり、音楽を聞いたりもしています。
かつ、わが家にはAmazon Echo Dot(アマゾンエコードット)も置かれているので、毎日「アレクサー」と呼びかけて翌日の天気などを教えてもらっています。また、夜眠る前にはKindle Oasis(キンドルオアシス)で本を読んでいます。
こう書きながら、ふだんの生活の中で、Apple以上の存在感を持っていることに気づきます。
Appleの場合はiPhone、Apple Watch(アップルウォッチ)、iPad(アイパッド)などのデバイスヘの接触こそ頻繁ですが、Apple Store(アップルストア)での購入はそれほど多くはありません。Amazon以の場合は独自デバイスこそOasisと Dotだけですが、購入頻度も金額も圧倒的です。私のAmazon以ヘの依存率はGAFAの中でも最大だと言っても言い過ぎではないでしょう。
そして、すっかり「Amazon以=書店」というイメージは無くなりました。
私の購入履歴では本の購入が圧倒的ですが、それはこうして執筆したり、コンサルティングを行う自分の職種がかなり影響しているのであって、Amazonを頻繁に利用している方ほど〝何でも売っているネットショップ〟というイメージに近いのではないかと思います。
一見、これは書店から総合スーパーヘ業態を転換したように見えます。
でも、Amazonの歴史を学ぶと、これは創業者のジェフ・ベゾスが当初からイメージしていたビジョンに、ただ淡々と近づいているだけだということに気づかされます。
ごく初期に芽生えていたAmazonのビジョン
Amazonの誕生は、創業者のジェフ・ベゾスが、1990年にD・E・ショーというヘッジファンドにネットワーク開発責任者としてスカウトされたことを抜きには語れません。D・E・ショーの創業者であり、ジェフ・ベゾスの雇用主でもあったデビッド・ショーは、その当時人手で行われていた株の「裁定取引」をコンピューター・ネットワーク上で行えないかとベゾスを雇います。
プリンストン大学でコンピューター・サイエンスを学んでいたベゾスは、まだMicrosoftのWindows95も出ていない、1994年の初め頃から、ショーといっしょにインターネットでのビジネスを検討し始めます。
そして、この過程でベゾスはインターネットの驚異的な可能性に気づきます。
彼がもっとも驚いたのは、その成長率でした。1993年1月から94年1月のデータ量の急増ぶりを見て、彼はインターネットの成長率を前年比で2300%と割り出します。これがどれほど凄いことか。100人の顧客が3年後には140万人近くに膨れ上がる計算になるのです。
ベゾスはインターネットの素晴らしい可能性に気づくとともに、ショーとのビジネスの検討の中から、天啓のようにあるビジョンを獲得します。それが、次のものでした。
The Everything Sore ジ・エブリシング・ストア
これはインターネットでメーカーと消費者をつなぎ、世界中にあらゆる商品を販売するということを意味します。あらゆる商品と消費者をスムーズに、ダイレクトにつないでいくイメージです。
本のタイトルにもなっている「すべてのものが買えるお店(ジ・エブリシング・ストア)」が、いまでもAmazon以の小売業として目指す姿です。
インターネットの黎明期に、この発想が降りてきたのは幸運としか言いようがありません。成功するためには、適したタイミングに、適した場所に居ることが必要だと言いますが、ベゾスはこうした運も持っていたのでしょう。
その後、ベゾスは大手ヘッジファンドのD.E.Shaw & Co.(ディーイーショー)を退社し、Amazon以の前身となる会社をわずか数名で立ち上げ、本の売り方を学ぶために書店開業セミナーに参加します。このセミナーで、講師が話した顧客サービスの一つのエピソードが、ベゾスのビジョンを完成させることになります。
そのエピソードとは……。書店の前にクルマを止めた女性客が、バルコニーのプランターから土が落ち、クルマが汚れたと怒ったのですが、その書店のオーナーは「ではクルマを洗いましょう」といって女性のクルマに同乗し、近所のガソリンスタンドヘ向かったのです。
スタンドは、あいにく休みだったのですが、オーナーはここで諦めずに彼の自宅へ移動し、自らの手でクルマを洗ったのです。女性客は書店オーナーの誠意ある行動に驚き、ついには気持ちをやわらげていっただけでなく、午後には再来店してたくさんの本を買ったのです。
この話に心を動かされたベゾスは「顧客サービスをAmazonの礎にする」ことを決めます。
こうして、創業者の心に宿ったビジョンが完全に姿を現します。それは「すべてのものが買えるお店」であり、そうであるために次のグローバル・ミッションを設定します。
地球上で最もお客様を大切にする企業であること
Amazon以のFacebookページAmazon.comには、ミッションと題された文字の下に、この二つの内容が「私たちのビジョン」として英文で表記されています。
Our vision is to be Earth's most customer centric company; to build a place where people can come to find and discover anything they might want to buy online。われわれのビジョンは、地球上で最も顧客中心の企業であること。つまり人々がオンラインで買いたいと思う可能性のあるあらゆるものを探し出し、発見しに来ることができる場所をつくることである(訳文筆者)。
しかし、なぜ、Amazon以ネット上の書店として出発したのでしょう。
それは技術に明るく優秀だとはいえ、資金もない経験もない30歳の若者が、すべての商品をいきなり扱えるわけもないからです。
ベゾスは非常に冷静に、「1種類での無限の品揃え」ができる最初の商品として、コンピューターソフト、事務用品、アパレル、音楽など20以上もの候補の中から本を選びます。
①商品として良く知られている
②市場が大きい(当時の書籍全米売上は年間190億ドル)
③競争は激しいがインターネット参入には大きな余地がある
④スタートアップでも仕入れが容易(大きな取次から仕入れ可能)
⑤本にはすべてISBN番号が振られ、販売書籍のデータペース作成が容易
⑥自前在庫の必要がなくディスカウントのチャンスがある
⑦送りやすく送料も優遇されている
⑧検索しやすく探しやすい……
検討していくと、書籍ほどインターネット販売に適した商材はなかったのです。
プリンストン大学卒業式祝辞(2010年)でベゾスは「オンラインだからこそ可能になる超大規模な本屋」をつくろうと思ったと語っています。「すべてのものが買えるお店」を、まずは「すべての本が買えるお店」としてオープンさせたのです。
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