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特区・地域再生の未来

『特区・地域再生のつくり方』より

「特区には、行政への甘えを感じる。都市のイメージで特区を作っても実質がついていかない」「世界に飛躍する自動車産業の集積地を目指した」特区で行っているのは、車高規制緩和と仮ナンバーでは情けない。

○特区・地域再生制度の存在意義

 特区制度については、すでに、平成19年3月に、一応の制度の見直しを行っている。見直しを検討するに当たっては、地方公共団体、シンクタンク、有識者等に対し、ヒアリングを行ったが、その際、「そもそも特区制度は必要か」ということについても、意見を求めた。これに対し、「特区制度はもはや役目を終えた」といった指摘は見られず、「地域の駆け込み寺」、「現場の声に基づき、国と地方が協議するテーブル」として、地域にとって引続き意義のある存在であるといった声が寄せられた。また、提案制度についても、提案の実現に向けて内閣が地域の目線で関係省庁と調整を行う、提案を巡る関係省庁との議論が公開され透明性が高い等、評価する声が寄せられた。また、地域再生制度については、まだ、運用期間が短いこともあり、本格的な制度の見直しの検討は行われてはいないが、「地域再生計画認定制度等め事後評価に関する調査」(平成18年3月)における地方公共団体に対するアンケート調査結果からは、制度について、肯定的な回答が多く、現状で大きな問題はないとされている。

 これらは、主として、制度を活用する地方公共団体の視点からのものであるが、制度を企画・立案する内閣の視点ではどうであろうか。近年、内閣主導の政策決定プロセスが定着しつつあるが、こうしたプロセスが望ましいとすると、具体的な政策ツールを、個別の各省庁ではなく、内閣補助部局における意義は小さくないものと思われる。もし、そうしたツールが内閣になければ、たとえば、地域の提案に基づいた制度改正は、内容の検討はもちろんのこと、法案の提出等、形式面においても、各省庁に全面的に依存することとなり、「お願いベース」となってくる。内閣自身が、たとえば、次期通常国会に特区法改正案を提出する、など、具体的な法律改正等のスケジュール感を提示しながら議論を進められることは、内閣主導を具現化する際の重要な要素となりうる。また、行政改革のツールとしての意味もあろう。国の制度に対する地域からの多くの改善提案を求め、それを踏まえて実際に制度改革を行う特区制度は、いわば、量的アプローチによる政策評価とも言える制度である。個々の意見ひとつひとつに、学術的な意味での精緻さは乏しいとしても、それを補完してあまりある多くの「目」にさらされる点が重要である。賢人会議ではなく、民主的なプロセスによる評価制度としての意義も小さくないのではないか。こうしたプロセスを内包する制度を内閣が有することは、2001年に行われた中央省庁等改革の理念に合致したものと言えよう。

○地域政策の担い手の多様化への対応

 ひとつのイメージとして、地域の民間を含めた構成メンバーが相互に「協定」を締結した「協議会」を法律でオーソライズした上で、その「協議会」の代表者なり指定する者に権限や財政的なインセンティブを付与する、というようなことが考えられる。

 「協議会」についても、いくつかの個別の行政分野で「協議会」を法律上位置づけ、何らかの機能を付与している例がある。たとえば、教育の分野でいえば、「学校運営協議会」である。いわゆるコミュニティ・スクールと呼ばれているものである。公立学校の管理・運営は所管の教育委員会が行うこととなっているが、「学校運営協議会」とは、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づき、教育委員会が個別に指定する学校ごとに、当該学校の運営に関して協議するためにおかれる機関である。学校運営協議会の構成員は、当該学校の所在する地域の住民、当該学校に在籍する生徒等の保護者、その他教育委員会が必要と認める者、である。「学校運営協議会」の権限として、校長が作成した学校の教育方針について承認をする、学校の教職員の採用について、任命権者に意見を言う、といったことが法定されている。すでに、先行するいくっかの個別の分野で活用されている「協定」や「協議会」といった仕組みを使って、多様な主体が分野横断的に地域政策に携われる枠組みを作れないか、というのがひとつのアイディアである。

 地域政策の担い手が多様化するなか、一定の正統性を付与しつつ、様々な主体が地域の課題解決に向けより積極的に取り組むことのできるような枠組みを検討しておくことは、決して無駄ではないと考えている。
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