未唯への手紙
未唯への手紙
これからのシティ・マネジメント
『公民連携白書』より 日本でのシティ・マネジメントの未来
スタッフに対するリーダーシップの発揮
シティ・マネジャーは職員のリーダーとして、政策の立案や業務の効率的な執行をするためには、職員を統括する強いリーダーシップを発揮しなければならない。
しかし、欧米の行政体と異なり、わが国の公務員はすべて終身雇用制で、明確な規律違反でもない限り身分は安定しているエこのような集団に対して、どのようにリーダーシップを発揮しなければならないか、新たな方策を講じることが必要である。これらも実態に即して、しっかりと学ばなければならない。
多様な健全化手法の習得
国の単年度ごとの裁量(地方財政計画)によって収入の大部分が決定する自治体の運営はいわば、他人の財布に頼っているのと同じで、前例主義が堂々とまかり通っている。だからこそ運営専門職・エキスパートのシティ・マネジャーが求められている。
膨大なインフラ施設、図書館や市民会館を代表とする公共財産、これらの運営・管理を一っとってみても、多様な改革・改善手法がある。しかし自治体における施設白書(利用率や維持管理費を含む施設の一覧表)の導入などは、極めて少ないのが現実である。 PPPやPFIへの転換も遅々として進んでいない。私も市長時代、地方自立計画・行政パートナー制度(有償ボランティア・市民との協働)を導入したが、現行の交付税システムの中では、公務員という常勤の専門職ですることが当然だと、復古主義の意見が数多く飛び出してくる。しかし国と連動する地方財政を考えると、このままの財源が保障されるはずがない。言い換えると、自治体における健全化手法は、意識改革を含めて限りなく用意されていることになる。マネジャーの活躍にとって、十分な宝の山に恵まれていると言える。
住民意思の把握と痛みを嫌う市民
シティ・マネジャーの役割には、確かな住民意思の把握が求められる。かつて市長の時に「市民プールの新設」について市民の意思を確認したところ、議会の全員が必要だとの判断をしたにもかかわらず、市民の82%が不必要だと回答した。学校プールの一時使用やスポーツジムの活用で十分との結論である。このようにハコものひとつとっても市民の要求は驚くほど、変化している。
一方では、中央集権システムによって負担と受益が乖離しているため、市民の痛みを伴う改革については、強い嫌悪感を持っているのも事実である。シティ・マネジャーは相反する二つの民意をどのように捉えるかが、役割のひとつである。
求められる中央集権システムの解体
日本の中央集権システムの弊害については、その一例を紹介してきたが、国の財政悪化の限界や今後の高齢社会の加速、地方の衰退などを考えると、中央集権システムと現在の三層構造システムを抜本的に変える日は近い。
補完性の原則によって各政府の役割分担を明確にし、地方の自己責任を確立して財政規律を回復する。国民の監視機能も強化されるだろう。道州制を導入して、国の内政的業務を地方の広域団体(道州)に移管し、システムにおける行政経費のムダを省く。分権社会の確立によって一極集中から分散型社会に転換し、地方は画一的運営から解放され、地方自身の努力と創意によって、自立の道を歩むことになる。
ちなみに広域的な地方の補完機能を持つ現在の都道府県は、国からの内政的業務は移管されていないものの、行政経費の約45兆円強を基礎的自治体(市町村)と均等に費消している。この不可思議な現象について、私たちは特段の関心を持たなければならない。
中央集権システムのムダは18.9兆円
NPO法人地方自立政策研究所が主宰した国と地方の実務者による「国と地方における事務・事業(現行の公共サービス)の役割分担明確化研究会」の試算では、①官と民の役割分担の明確化によるコスト削減効果(公務の領域外) 5.8兆円(地方3.6兆円、国2.2兆円)、②民間開放のコスト削減効果6.0兆円(地方5.1兆円、国0.9兆円)、③国と地方の事務移管(ベストの政府が実施主体)によるコスト削減効果5.5兆円(地方事業の移管で3.8兆円、国の事業移管で1.7兆円、このうち道州制の導入で4.5兆円が削減されるため道州制の導入は必要不可欠である)、④補助金廃止によるコスト削減効果1.6兆円、⑤人件費、出先機関等の物件費のコスト削減額6.1兆円(国家公務員20万人の削減1.8兆円・公務の領域外、民間開放、道州制の導入等に伴う国と地方の人件費27万人の削減2.3兆円、物件費の削減で2.0兆円)で「中央集権システムの解体」によって、単年度で18.9兆円にのぼる行政経費が削減されることになる。
本格的なシティ・マネジャーの登用は近い
財政の悪化と環境の激変、中央集権システムの膨大なムダを考えると、改革を極度に嫌うわが国とはいえ、システムの解体は避けて通れるものではない。中央集権システムが解体され、国(中央政府)と道州(広域地方政府)と市町村(地方政府)の水平的な三層構造が確立されると、自治体の自立権が十分に確保され、一極集中から多極分散型に移行される。地方の生き残りをかけた、多様な運営が展開される。シティ・マネジャーは全自治体に登用されることになるだろう。人材は一日で育成されるものではない。本格的な分権社会に備えるためにも、日本型シティ・マネジャーとしての人材が、十分に供給できる体制づくりが求められている。
スタッフに対するリーダーシップの発揮
シティ・マネジャーは職員のリーダーとして、政策の立案や業務の効率的な執行をするためには、職員を統括する強いリーダーシップを発揮しなければならない。
しかし、欧米の行政体と異なり、わが国の公務員はすべて終身雇用制で、明確な規律違反でもない限り身分は安定しているエこのような集団に対して、どのようにリーダーシップを発揮しなければならないか、新たな方策を講じることが必要である。これらも実態に即して、しっかりと学ばなければならない。
多様な健全化手法の習得
国の単年度ごとの裁量(地方財政計画)によって収入の大部分が決定する自治体の運営はいわば、他人の財布に頼っているのと同じで、前例主義が堂々とまかり通っている。だからこそ運営専門職・エキスパートのシティ・マネジャーが求められている。
膨大なインフラ施設、図書館や市民会館を代表とする公共財産、これらの運営・管理を一っとってみても、多様な改革・改善手法がある。しかし自治体における施設白書(利用率や維持管理費を含む施設の一覧表)の導入などは、極めて少ないのが現実である。 PPPやPFIへの転換も遅々として進んでいない。私も市長時代、地方自立計画・行政パートナー制度(有償ボランティア・市民との協働)を導入したが、現行の交付税システムの中では、公務員という常勤の専門職ですることが当然だと、復古主義の意見が数多く飛び出してくる。しかし国と連動する地方財政を考えると、このままの財源が保障されるはずがない。言い換えると、自治体における健全化手法は、意識改革を含めて限りなく用意されていることになる。マネジャーの活躍にとって、十分な宝の山に恵まれていると言える。
住民意思の把握と痛みを嫌う市民
シティ・マネジャーの役割には、確かな住民意思の把握が求められる。かつて市長の時に「市民プールの新設」について市民の意思を確認したところ、議会の全員が必要だとの判断をしたにもかかわらず、市民の82%が不必要だと回答した。学校プールの一時使用やスポーツジムの活用で十分との結論である。このようにハコものひとつとっても市民の要求は驚くほど、変化している。
一方では、中央集権システムによって負担と受益が乖離しているため、市民の痛みを伴う改革については、強い嫌悪感を持っているのも事実である。シティ・マネジャーは相反する二つの民意をどのように捉えるかが、役割のひとつである。
求められる中央集権システムの解体
日本の中央集権システムの弊害については、その一例を紹介してきたが、国の財政悪化の限界や今後の高齢社会の加速、地方の衰退などを考えると、中央集権システムと現在の三層構造システムを抜本的に変える日は近い。
補完性の原則によって各政府の役割分担を明確にし、地方の自己責任を確立して財政規律を回復する。国民の監視機能も強化されるだろう。道州制を導入して、国の内政的業務を地方の広域団体(道州)に移管し、システムにおける行政経費のムダを省く。分権社会の確立によって一極集中から分散型社会に転換し、地方は画一的運営から解放され、地方自身の努力と創意によって、自立の道を歩むことになる。
ちなみに広域的な地方の補完機能を持つ現在の都道府県は、国からの内政的業務は移管されていないものの、行政経費の約45兆円強を基礎的自治体(市町村)と均等に費消している。この不可思議な現象について、私たちは特段の関心を持たなければならない。
中央集権システムのムダは18.9兆円
NPO法人地方自立政策研究所が主宰した国と地方の実務者による「国と地方における事務・事業(現行の公共サービス)の役割分担明確化研究会」の試算では、①官と民の役割分担の明確化によるコスト削減効果(公務の領域外) 5.8兆円(地方3.6兆円、国2.2兆円)、②民間開放のコスト削減効果6.0兆円(地方5.1兆円、国0.9兆円)、③国と地方の事務移管(ベストの政府が実施主体)によるコスト削減効果5.5兆円(地方事業の移管で3.8兆円、国の事業移管で1.7兆円、このうち道州制の導入で4.5兆円が削減されるため道州制の導入は必要不可欠である)、④補助金廃止によるコスト削減効果1.6兆円、⑤人件費、出先機関等の物件費のコスト削減額6.1兆円(国家公務員20万人の削減1.8兆円・公務の領域外、民間開放、道州制の導入等に伴う国と地方の人件費27万人の削減2.3兆円、物件費の削減で2.0兆円)で「中央集権システムの解体」によって、単年度で18.9兆円にのぼる行政経費が削減されることになる。
本格的なシティ・マネジャーの登用は近い
財政の悪化と環境の激変、中央集権システムの膨大なムダを考えると、改革を極度に嫌うわが国とはいえ、システムの解体は避けて通れるものではない。中央集権システムが解体され、国(中央政府)と道州(広域地方政府)と市町村(地方政府)の水平的な三層構造が確立されると、自治体の自立権が十分に確保され、一極集中から多極分散型に移行される。地方の生き残りをかけた、多様な運営が展開される。シティ・マネジャーは全自治体に登用されることになるだろう。人材は一日で育成されるものではない。本格的な分権社会に備えるためにも、日本型シティ・マネジャーとしての人材が、十分に供給できる体制づくりが求められている。
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