未唯への手紙

未唯への手紙

新聞の印刷・宅配をやめてキンドルを無料配布せよ

2013年09月09日 | 6.本
『米ハフィントン・ポストの衝撃』より 共同創業者が説く破壊的イノベーション

「ニューヨーク・タイムズは直ちに印刷所を閉鎖し宅配をやめ、代わりに読者にキンドルの無料配布に踏み切ればいい」。これは、アリアナ・ハフィントンとジョナ・ペレッティとともに「ハフィントン・ポスト(ハフポスト)」を立ち上げた共同創業者ケネス・レラーの言葉だ。

レラー発言は、ハフポスト創刊からちょうど4年経過した2009年4月下旬に飛び出した。レラーはニューヨークのコロンビア大学ジャーナリズムスクールで、私も含めて数百人の同スクール同窓生を前に1時間半にわたって講演中だった。

実質的に「ガラパゴス化」している日本の新聞界にしてみれば、「印刷所の閉鎖」「キンドルの無料配布」といった発言は荒唐無稽にさえ聞こえるのではないか。

日本とは比較にならないほどの激震がメディア業界で起きているアメリカは違う。2012年1月9日のことだ。同日付のニューヨーク・タイムズ最終面に書店チェーン大手バーンズ&ノーブルの全面広告が載った。そこではこんな広告コピーが躍っていた。

 「号外! 号外! タックがタダになりました」

「タック」は電子書籍端末で、タダになるのは99ドルのモノクロ版「ヌックシンプルタッチ」。バーンズ&ノーブルは同年3月9日までにニューヨーク・タイムズの1年購読契約を結んだ読者に対し、シンプルタッチを無料配布すると宣言したのである。

言うまでもないが、タックはインターネット小売り大手アマソン・ドット・コムが販売する「キンドル」ではない。だが、同じ電子書籍端末だ。レラーがコロンビア大で講演してから3年足らずで、「キンドルの無料配布」が実質的に現実になったのだ。

ここでのポイントは、バーンズ&ノーブルが事実上の新聞販売店の機能を担うということだ。読者はニューヨーク・タイムズではなくタックの「ニューススタンド」上でバーンズ&ノーブルと同紙の購読契約を結ぶのである。いわば「電子端末の新聞販売店化」であり、印刷所・宅配不要論につながる動きだ。

タック経由で契約した場合、ニューヨーク・タイムズの購読料は月額19ドル99セント。Iドル=100円換算で月2千円であり、日本の全国紙(朝夕刊セットで月3925円、朝刊のみで月3007円)と比べてざっと半額。タックを無料でもらうためには2万4千円(1年購読契約での支払総額)を払えばいいということだ。日本で全国紙を1年購読する料金(約4万8千円)を払えば、タックを無料でもらったうえに2年分の新聞を購読できる計算になる。

バーンズ&ノーブルは同時に、娯楽誌ピープルの1年購読契約(月額購読料9ドル99セント)を結んだ読者に対して多機能のタブレット端末「ヌックタブレット」を大幅に割り引くと提案。50ドル値下げして199ドルだ。199ドルは、アマゾンが前年11月に発売した格安タブレット端末「キンドルファイア」と同じ値段だった。

レラーは講演でこう語っている。

 「キンドルなど電子書籍端末が安くなり、性能が向上するなか、ニュースを紙に印刷する意味はますます薄れています。ニューヨーク・タイムズが新聞を印刷し、宅配するのにどれだけコストがかかっているのか、調べてみると面白い結果が出てきます。年間購読者全員にキンドルを無料で配るコストの2倍です。『直ちに印刷所を閉鎖せよ』ということです」そのうえで、レラーは既存の新聞経営者に対してこう警鐘を鳴らしてしている。

 「単刀直入に言えば、いわゆる『破壊的イノベーション』を受け入れろ、ということです。それに抵抗する人は、過去15年間に起きたことを理解していません。抵抗すればするほど貴重な時間が浪費されるでしょう」

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