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ネット時代の図書館 変革への一〇のステップ

『ネット時代の図書館』より 危機に瀕しているもの

いまもこの先も使える、図書館を気にかけるすべての人々のための、変革への一〇のステップ

 1.デジタル・プラス時代に向けて図書館を再定義し、プラットフォームとして作り直す。〝デジタル・プラス〟とは、資料がデジタル形式で作られ、その後さまざまなフォーマットに直されることを意味する。あるものは印刷され(伝統的な本や、画像のハードコピーなど)、あるものはデジタルのままである(電子書籍、双方向型のゲーム、画像ファイル、デジタル形式の視聴覚作品など)。〝プラットフォーム〟とは、それぞれの図書館は個別の存在であり競争相手であるよりは、高度なネットワークで結ばれたデジタル社会で、ネットワークの接点として機能すべきだということを意味する。

 2.図書館は、意欲的なネットワーク機関としての役割を果たさなくてはならない。それには大規模で動き、利用者のためにその規模を有効に使えることが必要である。図書館は、アーカイブや歴史協会や博物館やその他の文化遺産組織などの提携機関と効果的にネットワークでつながらねばならない。

 3.この再定義の基本は、需要主導型でなくてはならない。過去がどうだったかというノスタルジーに陥るのではなく、人々や地域社会が現在、そして未来の図書館に何を求めているかが基本である。地域社会のニーズと協調することで、問題解決の手助けがよりうまくできれば、図書館の資金問題も緩和されるだろう。ブライアン・バノンと彼の仲間たちは、シカゴのラーム・エマニュエル市長の熱い支持を受け、それを成功させた。

 4.図書館の再定義の段階で、フィジカルとアナログを排除してはならない。未来の図書館には、資料や空間のための場所と、利用者が経験するための場所がある。

 5.司書はただ公共の利益のために、必要なことだけをして、立地条件を生かすよう努めるべきである。

 6.図書館は著者やエージェントや編集者や出版社と連携すべきである。知識を生み出すエコシステムの二鄙として、図書館は存在する。こうした役割は変わるかもしれないが、その機能の価値は変わらない。

 7.図書館の空間は、むしろ研究所や〝共同制作機関〟に近い機能を果たすべきであり、人々はそこで情報に触れ、新しい知識を利用する。本が学術探究の素材として利用された一九世紀末には〝本の研究所〟として知られていたが、共同生産が基準であるデジタル・プラス時代には、図書館は真の研究所であるべきだ。

 8.司書たちは協力し合い、オープンに共有された大規模なデジタルインフラを作るために技術者と連携すべきである。このデジタルインフラを生み出すインターネットを作ったハッカー精神を参考にする。これにはいま以上の資金と時間の投資が必要である。

 9.知識の保管には、いま以上の連携が必要である。図書館は物理的スペースを維持すべきだが、それを資料の保存以外のさまざまな目的に使うべきである。根本的に、われわれは長期デジタル保存への投資が不足している。

 10.一九世紀末から二〇世紀はじめにかけて慈善家や地域や大学が力を入れたように、図書館が新たな時代へと移行するには投資が必要である。アクセスにも保存にも力を注ぐ、図書館の研究開発に取りかかったこれらの資本コストは、民主主義に大きな利益を生むだろう。

図書館を機関として、そして司書の役割を専門職として見直した結果、重要なのは伝統と革新のバランスになるだろう。先見の明のある司書は、長いあいだこのバランスをとろうとしてきた。司書の昔からの行動指針--情報への普遍的アクセス、個人のプライバシー、表現の自由、そして何より誠実であること--はいまも変わらず必要であり、それを持続させなくてはならない。同時に、図書館のリーダーとしては、より力強く新たな方向へ向かう必要がある。そうでなければ図書館はアメリカの一般大衆への影響力を失ってしまうだろう。このバランスが必要なのは図書館だけではない。たとえば学校や新聞は、同じように危機や改革の瞬間に直面しており、未来を描く中心的役割を果たしている。こうした機関はすべて、大衆に情報を与え、教育し、共通の利益に従事させる役割を持つ。われわれはこの三つすべてを正しく理解しなくてはならない。

図書館の世界がもっともうまく発展するのは、個々の図書館を独立した機関ではなくネットワークとして機能させる、革新的なシステムが成長するときである。このネットワークの構成分子は、すでに整っているか、長い時間をかけて発達しているかのどちらかだ。ネットワークの人的部分である司書自身は、効果的な方法で提携への道を探してきた。それに世界じゅうの図書館への高速ネットワークアクセスが加わり、すばらしい技術ネットワークが確立した。いま加わろうとしている次の構成分子は、こうしたネットワークを最大限に活用する方法を知っている有能な司書たちだ。彼らはソーシャルネットワークや、オープンソースのプラットフォームや、オープンアクセスの資料を、現在や未来の図書館利用者にとって重要なやり方で利用する方法を知っている。最終的には、利用者の要望により迅速に応えられ、図書館分野と社会の長期的なニーズに応じる大規模なコラボレーションに携わる、地方機関になるだろう。

さらなる公的支援がなければ、司書はこのスイッチをネットワーク化された協調モードに切り替える立場にはなれないだろう。とりわけこの変化の時代には、個人であれ組織のリーダーであれ、われわれすべてが、図書館の支援にもっと多くの資金と時間を捧げる必要がある。公的投資、私的投資の増加を主張するために、図書館はノスタルジー以上のものを利用できなくてはならない。これは価値ある取り引きであり、公共図書館のもともとの使命に忠実なものだ。

こうしたサービスは、なぜ民間企業でなく、公共機関が提供しなくてはならないのか? 一九世紀なかばのボストンなどで起きた議論同様、真の〝公共の選択肢〟という概念こそ、わたしの議論の中核をなすものだ。民主主義システムが依存する知識や情報に関しては、地域社会のニーズに応じるのに市場だけに頼るべきではない。民間企業はデジタル革新で大成功をおさめており、たとえば企業の電子メールシステムの供給のように、民間企業がするのがふさわしい分野もある。けれども社会の文化的、歴史的、政治的、科学的記録に関しては、公共機関が主導的役割を果たす必要がある。その役割は、短期的に見れば、人々がよき市民となりますます情報化の進む経済社会で成功するために必要な、公平で普遍的な知識を利用できるようにすることである。そして長期的には、火災や技術の変化や政治上の悪意、そのほか重要資料の保存を脅かすものなど、歳月による避けられない損害から記録を守り、それを残すことである。

情報豊かで、開放的で、自由な共和国の運命は、図書館の未来で決まると言っても過言ではない。アメリカ図書館協会の当時の会長であり、わたしに希望を与える偉大な司書であるモーリーン・サリバンは、わたしにこう言った。「図書館の未来がとても重要だと思うのは、アメリカのすべての子どもたちが、投票できるようになる前に、必要な情報にアクセスできるようにしたいからだ」。輝かしく喜ばしいデジタル時代の未来に、われわれ公共機関が協力し合う理由は充分にある。図書館は民主主義にとって非常に重要なので、この任務に失敗するわけにはいかないのだ。

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