未唯への手紙

未唯への手紙

住民-行政関係 非協力問題にどう対応すべきか?

2014年08月30日 | 3.社会
『公務員の働き方』より 住民-行政関係の再構築 住民-行政関係をめぐる職員の悩みと対応方策

まちづくりや地域活性化を進めるうえでは、住民の参加・協力が不可欠だと言ってよいでしょう。たとえば、地域活性化のためにグリーンツーリズムを進めようと思えば、農家の協力は不可欠です。しかし、その提案に乗ってくれず、話が進まないというケースは決して珍しくありません。こうした「非協力問題」に対し、どのように対応したら良いのでしょうか?

なすべき対応は、非協力の原因次第で異なります。上記の例に関して言えば、第一に、住民自身がそもそも地域活性化の必要性自体を感じていない、あるいは、単に無関心である可能性があります。第二に、その必要性は感じているけれども、グリーンツーリズムという方策に納得できていない可能性があります。第三に、グリーンツーリズムにも納得しているのだけれど、「面倒」とか「不安」といった理由で非協力になっている可能性があります。

このうち、第二の場合、先進事例の紹介を交えながらわかりやすく説明をしたり、そうした先進地で実際に取り組まれている方を招いてお話を伺う機会を設けたりすることが考えられます。

これに対し、第一の場合は、そもそも必要性を感じていなかったり、無関心であるため、そうした機会を設けても聞きにきてくれないことでしょう。そこで、やはり工夫が必要になるように思います。この点、地域の有力者に声かけしてもらうなども一つの方法ですが、その人たちが関心のある別のテーマで集まってもらい、そこで説明を行なうという方法もありえます。

地域活性化の問題ではありませんが、以前、僕は、福岡市の事務事業外部評価会議(二〇一一年度)の場で後者の方法を提言したことがあります。それは、人権問題の啓発に関連した事業(PTA指導者研修事業)に関してでした。担当者曰く、「広く啓蒙する必要があるのだけれど、講演会を開催しても、いつも来るメンバーは同じ。つまり、関心のある人しかこず、真に聞いてもらいたい人はきてくれない」とのことでした。

僕が提言したのは、〝教育委員会と連携して、授業参観の際に人権問題を取り上げてもらってはどうか〟というものでした。予め宿題をだしておけば、子どもは親にいろいろと相談するかもしれません。そうなれば、親も一緒に人権問題を考えなければならなくなります。仮にそうならなくても、親は子どものことには関心があるので授業参観には来る。来れば、授業時間に、人権問題について事実上レクチャーを子どもと一緒に受けることになります。

この提案は思いつきの域をでていませんが、同様の方法は、他のケースでも活用できるのではないかと思います。

最後に、第三の場合(=「面倒」とか「不安」といった理由で非協力になっているケース)にはどう対応したら良いのでしょうか。具体例を考えたほうがわかりやすいので、次のようなケースを念頭に置きましょう。ある地域でグリーンツーリズムを通じて地域活性化をしようということになりました。そして、日帰りの農業体験や農産物直売所における農産物販売だけでなく、滞在型の「農泊」もしたほうがいいという話になりました。しかし、実際に話を進めていくと、「面倒だ」、「見知らぬ者を家に入れることはできない」、「人に泊まってもらうような家ではない」といった理由で、どこの家も協力してくれない、というケースです。

このように住民のなかに面倒な気持ちや不安な気持ちが先立っている場合においては、とりあえず一軒でも良いので成功事例を創りだすことが大事です。そうした「成功事例」を創りだすことができれば、それは自ずと広がっていくからです。しかし、問題は、いかにして、その成功事例を創りだすかです。

この点、非常にユニークな方法でこれをしてみせたのが、「神子原米」のブランド化によって過疎の村を救ったとして有名になった、石川県羽咋市の職員、高野誠鮮氏です(高野誠鮮『ローマ法王に米を食べさせた男--過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』講談社、二〇一二年、第二章)。

高野氏が採った方法のポイントは二つです。一つは、平安~室町時代から伝わる日本古来の文化である「烏帽子制度」(=元服を迎えた若者に、自分のかぶっていた烏帽子をかぶせ与えて、杯を交わし、仮の親子関係を結ぶという制度)の活用です。もう一つは、「酒が飲める女子大生」の募集です。

高野氏は、高齢化率五四%の限界集落に、若い女性、それも酒の飲める女子大生がやってきて、農家の親父さんと杯を交わし、「仮の親子」となるという仕掛けをしたのでした。親父さんにとっては、新しくできた「娘」が朝早くから働いてくれて、夜は一緒に楽しくお酒を飲める。これはたまらないわけです。

実際にこれを実行したところ、あまりに受け入れ家庭が楽しそうなものだから、集落の多くの人たちが、「あんないい子なら、俺らでも受け入れる」と言い始めたそうです。

この例では「酒が飲める女子大生」が効果的だったわけですが、ご婦人方が多い集まりであれば、「さわやかな若い男性」が効果的かもしれません。高齢者一般について言えば、「子ども」が非常に効果的です。ターゲットに応じて工夫をしてみると良いように思います。

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