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フィンランド-ソ連戦争『冬戦争』

『世界全戦争史』より

ポーランド分割のあと、不可侵条約を信じないスターリンはドイツの侵攻を恐れて先手を打って、有利な戦略態勢を築こうとした。ソ連は、フィンランドに対して、相互防衛条約の締結を要求し、カレリア地峡南部、その周辺諸島を占領することと国内に軍事基地の建設を求めた。

フィンランドは即座にソ連の要求を拒絶し、すぐに国軍の動員を開始してマンネルハイム元帥の指揮のもとに国境に配備した。ソ連は、ただちにフィンランド軍の撤退を要求した。

一九三九年一一月三〇日、ソ連は宣戦布告することなく、交戦状態に入った。ソ連軍約一〇〇万はフィンランドを東方からと東南方から陸上侵攻するとともに、フィンランド湾を横断して上陸作戦を開始した。フィンランド軍約二五万が迎撃したが、彼らの八〇パーセントは予備役兵士であった。フィンランド南岸に対するソ連の全上陸作戦は撃退された。

ソ連軍の主侵攻はカシリア地峡に指向された。しかしマンネルハイム・ラインに跳ね飛ばされて大損害を出して撃退された。他のソ連軍侵攻縦隊は、東部と中部フィンランドの巨大な湖と森林地帯を押し進んだが、独立戦闘としてソ連軍を襲った。深い積雪と零下のフィンランドの気候は、フィンランド軍の戦闘行動と機動に何の影響も与えなかった。なぜならフィンランド軍は全員がスキーヤーであった。全員が軽くて温かい獣服を着用していた。ソ連第五列は根こそぎに潰された。

一二月~一九四〇年一月、スオムッサルミの戦闘となった。東部フィンランドにおいてソ連第一六三狙撃師団(歩兵師団)は二本の狭い森林道に沿って進撃した。二つの道路はスオムッサルミ村で合流していた。深雪が師団の機動を遅滞させた。零下四〇度の気温がウクライナから徴兵され、北極服を着用していない兵士を打撃した。ソ連軍の両翼では、白い服を着たフィンランド市民警護隊がスキーを着用して音もなくソ連軍補給車両や野外給食施設を急襲した。

一二月七日~一一日、餓えたソ連縦隊はスオムッサルミ村で停止して偵察しようと試みた。フィンランド第九師団の歩兵部隊が到着し、砲兵部隊を待つことなくただちに攻撃した。ソ連軍は動けなくなった。二つの補給路は阻止され、輸送は待ち伏せ攻撃を受け、全ての補給が断たれた。ソ連第四四自動車化狙撃師団が第一六三師団を救出するために突破しようとした。しかし、たちまち市民警護隊の擾乱攻撃によって動けなくなってしまった。

一九四〇年一月一日~八日、細断されたソ連第四四師団は順次に撃滅された。ソ連軍の損害は戦死・凍死計約二万七〇〇〇、捕虜一三〇〇、歯獲は戦車五〇と師団の全大砲、全装備品であった。この戦闘におけるフィンランド軍の損害は、戦死約九〇〇、戦傷一七七〇であった。

一九四〇年一月一日~二月一日、ソ連軍は再編成して攻撃を再興したが、屈辱的敗北を受けて撃退された。東部国境の六ヵ所において攻撃の先導部隊が仰天するような損害を出して阻止された。一個師団と一個戦車旅団が丸ごと捕虜となった。他の三個師団もほとんど撃滅された。そこでソ連軍は圧倒的に優勢な兵力の集中可能なマンネルハイム・ラインに対する攻撃を準備した。

二月一日~一三日、ソ連第七軍と第一三軍計五四個師団が四日~五日ごとに休みなくマンネルハイム・ラインに対しして攻撃を行なった。その火力支援は膨大な砲兵数の砲撃と航空攻撃であった。砲撃に続いて弾痕に破壊された大地を限りない歩兵の波が押し寄せた。

フィンランド兵士の中には、ソ連兵を殺し続けて心身に異常をきたすものが出始めた。彼らは殺戮するのに飽きて苦しんだ。共産党軍と戦争するときには、共産党兵士を全員倒すまで戦い続けなければならないという戦史の教訓を残した。

二月一三日、結局、マンネルハイム・ラインはスマ付近において突破された。

三月一日、マンネルハイム・ラインのフィンランド軍中央と右翼は、遂次後退を繰り返しながらヴィボルグ(ヴィープリ)に撤退した。後ろはフィンランド湾である。

三月一三日、フィンランド軍は消耗し尽くした。ソ連の要求した平和条項は、実質的に最初の要求と変わらなかった。スターリンはフィンランドがゲリラ戦を行わないかぎり、外国の介入を招くようなこれ以上の侵攻は行わないとした。この戦争におけるフィンランド軍の損害は、戦死約二万五〇〇〇、戦傷約四万三〇〇〇であった。ソ連軍の損害は、各種の資料から推定すると戦死約二〇万、戦傷約四〇万以上と判断されている。その戦争を観察していた世界の軍人たちは、「兵士は消耗品だ!」という共産党の考え方を見落とした。そして第五列を撃破されては、作戦できないという教訓も軽視した。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (μ)
2011-01-28 20:12:12
この戦争でソ連はひどい目にあったが、フィンランドの戦略を侵攻してきたナチに対して行った。ドイツ第6軍崩壊につながった。歴史は循環する。そして、複雑性です。
 
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