ポスターの公費負担 ニューストップ > ワードBOX >ポスターの公費負担/(2011年5月28日掲載)
立候補の機会均等を図るため、国や自治体は候補者のポスター代を公費負担する。国政選挙で始まり、1992年の公選法改正で町村を除く自治体の選挙にも導入された。
公費負担の上限額は自治体が選挙区ごとに条例で定めるが、国の算定式に倣う例が多い。福岡市議選は76万2290円(城南区)―97万2534円(東区)、福岡県議選は67万1220円(筑紫郡)―107万3640円(久留米市)と幅がある。枚数の限度は各選挙区のポスター掲示場の2倍。1枚当たりの単価は掲示場の数に応じて決まり、数が多いほど単価は安くなる。得票が少なく、供託金を没収された候補者には公費負担はない。 |
●選挙ポスター代「水増し」続々発覚 制度に穴 内訳求めず 議員 「使わないと損」
選挙ポスター代を公費で賄う公営制度に対する信頼が揺らいでいる。昨年12月の福岡県福津市議選で水増し請求が発覚したのに続き、今年4月の福岡市議選では過大見積もりが問題化。福岡県議の一部も本紙の取材に対し、「過去に水増し請求していた」と認めた。背景には、業者に詳細な内訳の提示を求めないなど、不正をチェックできない制度の不備が浮かぶ。
「公金だからおかしな使い方をすべきじゃないと思っていたが…」。福岡県議の一人は過去の不正請求を打ち明けた。
実際のポスター代は上限額を大きく下回るのに、4年前の前回選挙まで公費で賄われる上限額に近い額を請求。「浮いた分を(公費負担の対象にならない)名刺やはがきの印刷代に回していた」という。福津市議選で水増し請求問題が報道されたため今回は「満額請求」をやめた。かかった費用は上限額の半額以下で済んだ。
前回県議選で上限額いっぱいの公費負担を請求したのは全候補者124人のうち78人。今回は福津市の問題が影響してか、129人中30人に激減した。
別の県議は「上限額で作っていい」と印刷業者に持ち掛けた。業者は後援会メンバー。「こんなときしかお返しできない。予算がついているんだから上限いっぱいを使わないと損」と明かした。
一方、4月の県議選で「満額請求」した福岡市内の業者は「候補者が示した予算額に見合うよう何度もデザインをやり直した結果、上限額になった」と釈明した。
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総務省によると、公費負担するポスター代の上限額は各自治体が条例で選挙区ごとに定める。多くは公職選挙法の施行令にある国政選挙の計算式を引用。掲示場数が500カ所以下の場合、写真撮影料やデザイン料などの企画費を30万1875円、印刷代を1枚当たり510円48銭として掲示場数に応じて単価を算出する。
候補者は告示日に業者との契約内容を選管へ届け出。選挙で法定の得票数を満たせば費用が支払われる。代金は業者が直接自治体に請求するが、その際、デザイン料や写真撮影代など詳細な内訳の提示を求める自治体はほとんどないという。
実際の費用に関係なく、上限額を書き込んで請求することも可能で、ある福岡県議は「業者と組めば簡単に水増し請求できる」と明かす。
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「上限額の設定自体が高すぎる」と指摘する印刷業者も少なくない。
公選法施行令が定める30万円超の企画費について、福岡市博多区の業者は「選挙ポスターのデザイン料なら通常10万円程度。30万円は高すぎる」と疑問を投げ掛ける。この業者は県議選の新人候補から受注した150枚を、上限額の5分の1に当たる約14万円で仕上げた。
「満額請求」だった福岡県議は、こう開き直った。「業者は商売だから上限いっぱいで請求するに決まっている。上限額を見直さない選管が悪い」 |