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てらまち・ねっと



 先日、最高裁が、東京の「たぬきの森」をつぶして建設中のマンションの建築確認の取り消しの確定した事件。
 高裁判決を支持して、取り消した。
 「たぬき」という滑稽さと、建設中のマンションを取り壊す事態という痛快さとを感じだ。

 とはいえ、日本の法律にもとづく裁判は現状追認が多い。
 悔しい思いはいくつもある。

 ●たとえば、ひとつは、ゴルフ場の開発許可。
 開発や建築の許認可を受けて業者が事業・工事を進めていく。
 周辺住民が「許認可処分の取り消し」を求めて訴えても、もし、「完成」してしまえば、そこで「もう、訴えの=処分を取り消す=利益がない」として却下されてしまうのが日本の法律。

 以前、ここの町のゴルフ場の開発許可の取り消しを求めた訴訟、原告は開発の下流域の数十人の住民だけど、そんな風に門前払いされてしまった。
 都市計画法の許可取り消しで、まず、県の建築審査会に申し立て、認められなかったので、裁判所に提訴(法律でこの順番が決まっている)。

 そんなことで、訴訟手続きが何年か経過していくうちに、工事が強行されたゴルフ場が完成。
 進行中の訴訟で、被告の県が、
      「このほど、完了検査も済んだ」
 として、その証拠書類出してきたので、中身に踏み込まないままに終結して、却下の判決。
 おかしな裁判所の考え方だ。

 ●ところで、最高裁の判決や決定が出るには、通常は数年かかるのが相場。
 最近でこそ、1年.2年というケースもあるけど。

 今回のタヌキのマンションは、7割から9割の建築が進んでいたが、高裁判決で「取り消し」判決が出て、建設はストップ。
 最高裁が、完成したら原告の訴えは元もこもなくなるからと急いで判決したのだろうか。
 だって、高裁判決が「平成21年1月14日」と1年も経っていないから。

 あるいは、肝心の主要な争点については、高裁判決を追認して上告を棄却するだけだから早かったのか。
   (最近では、最短の棄却コースは4~5ヶ月もあるらしい)。

 ●こちら、去年の春と去年の秋に上告した2件について、まだ音沙汰がないので、なお、気になる最高裁のこと。

 ●ともかく、今後のために、ブログ末で今回の判決全文を記録しておく。

 今日もお仕事を片付ける。
 それを済ませて、夕方には名古屋へ。

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 ●新宿・たぬきの森 建設中マンション 区の建築確認『違法』
       東京 2009年12月18日
 「たぬきの森」と呼ばれ、緑地が残っていた東京都新宿区の住宅跡地で建設中のマンションをめぐる訴訟の判決で、最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は十七日、「区の建築確認は違法」として建築確認を取り消した二審東京高裁判決を支持、区側の上告を棄却した。完成間近のマンションが違法建築と確定する異例の事態となった。 

 建築に反対する周辺住民が、「安全基準を満たしていない」として、区の建築確認の取り消しを求めて提訴していた。区側は今後、マンションを取り壊すなどの対応を迫られる。業者側は「区への賠償請求も含めて対応を検討する」としている。

 問題となったのは、新宿区下落合で建設中の三階建て約三十戸のマンション。都建築安全条例では、災害時の避難路の確保などのために、この規模のマンションでは幅八メートル以上の通路が必要と定めている。しかし、周囲が住宅地やがけとなっているため、もっとも狭い所で幅四メートルしか確保できていなかった。区は「中庭などがあり、安全に支障はない」として特例で建設を許可していた。
 一審東京地裁判決は、住民側の訴えを退けたが、今年一月の二審東京高裁判決は、区の建築確認は条例に反すると判断し、住民側が逆転勝訴した。

 マンション建設現場は、樹齢二百年の古木などがあった屋敷跡で、タヌキの生息も確認されていた。周辺住民は公園用地として買収し、保存するよう区に要望。しかし、区による買収は進まず、二〇〇六年からマンション建設工事が始まった。〇九年春に完成予定だったが、二審で住民側が勝訴して以降は、工事がストップしていた。

●マンション:9割完成 建築確認取り消し 最高裁判決
     毎日新聞 2009年12月17日

 建築確認が取り消された「タヌキの森」のマンション。
 手前左が問題とされた通路
 =東京都新宿区下落合で2009年12月17日午後1時37分、
 本社ヘリから内林克行撮影

 タヌキがすむ東京都新宿区の住宅跡地へのマンション建築を巡り、反対する周辺住民が区を相手に建築確認取り消しを求めた行政訴訟の判決で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は17日、区の上告を棄却した。区側逆転敗訴の2審・東京高裁判決(1月)が確定した。

 住民側代理人によると、マンションは9割方完成していたが、高裁判決後の1月に工事がストップ。完成間近の建物の建築確認が取り消されるのは異例。違法建築になるため、建設業者は建物の取り壊しを迫られる。区の責任を追及する動きも起こりそうだ。

 問題となったのは、新宿区下落合4に建設中の3階建てマンション(30戸)。敷地はがけや塀に囲まれ、長さ約34メートル、最小幅4メートルの通路だけで外の道路に通じる。

 災害時の避難のため建物敷地に接する道路の幅を定めた都条例では、幅8メートルの通路が必要とされているが、区は「中庭が設置され、耐火性があるなど安全上支障はなく、条例の例外規定に該当する」として建築確認を出していた。

 1審・東京地裁は区側勝訴としたが、2審は「幅8メートルの通路がある場合と同程度の安全性はなく、例外を認める根拠はない」と指摘。小法廷も「2審の判断は是認できる」と述べた。

 ◇200年の古木「タヌキの森」
 周辺住民は、樹齢200年の古木がある「タヌキの森」の保存を区に要望。土地を買い取り公園化するよう求め、一時は約2億3000万円の基金を集めていた。しかし、区は土地を買収できず、06年に工事が始まった。

 現在、敷地内の樹木は伐採され、タヌキも姿を消したが、周辺では生息が確認されているという。記者会見した原告の武田英紀さん(44)は「大変うれしい判決。また自然を復元する活動を続けたい」と喜びを語った。【銭場裕司】

 ▽中山弘子・新宿区長の話 司法の最終判断を真摯(しんし)に受けとめ、適切に対応していきたい。

 ▽建設業者の話 区が安全認定を出したことを信頼して土地を取得し、許可を得て開発を進めてきた。判決に非常に困惑している。当社の手続きに不備はないので、今後は区とも協議し、区に何らかの対応を求めていく。

●完成間近のマンションの建築確認を取り消し 最高裁で確定
     サンケイ 2009.12.17 20:13
  建築確認が無効とされたマンション
 =1月、東京都新宿区下落合 (原告の武田英紀さん提供)
 東京都新宿区内のマンション建設に反対する周辺住民が、区の建築確認を取り消すように求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は17日、区側の上告を棄却した。建築確認を取り消した区側逆転敗訴の2審東京高裁判決が確定した。マンションは完成間近の状態で、工事がストップしている。

 最高裁が建築確認の取り消しを求めた訴訟で判断を示したのは初めて。住民側の代理人の弁護士らによると、工事が進んだ建築物の建築確認を取り消すのは異例。区や業者は取り壊しなど、対応を迫られる。

 問題のマンションは、タヌキが生息する「タヌキの森」と親しまれている同区下落合の屋敷跡に建設。地上3階地下1階で、延べ面積約2800平方メートル。敷地の周囲はがけ状で、長さ約30メートル、最小幅4メートルの空き地で外の道路に通じるが、災害時の避難のために建物敷地が接する道路の幅を定めた都条例では、延べ面積が2000平方メートルを超える場合、幅8メートルの通路が必要とされていた。これに対し、区は特例で対応していた。

 今回の判決で、「違法建築」が確定したため、区や業者は対応を迫られることになる。区などによると、取り壊しのほか、適法にするために、外の道路に通じる空き地の幅を広げたり、建物の面積を圧縮したりすることも考えられるという。

 原告の1人は「住環境が守られた。更地に戻して木を植えるなどし、自然を後世に残したい」と話した。中山弘子区長は「司法の最終判断を受け止め、適切に対処する」、建設業者は「当惑している。不備はないと考えているので、区と協議し、対応を求める」とのコメントを発表した。

●7割完成のマンション、最高裁「建築確認違法」
      2009年12月18日 読売新聞
 ・・宮川光治裁判長は「マンションの建築確認は違法だ」として、建築確認を取り消した2審・東京高裁判決を支持し、原告勝訴の判決を言い渡した。マンションは本体工事を終えるなど7割方完成しているが、建築確認が取り消されたため、建物を取り壊すなどの措置を取る必要が出てきた。
 国土交通省などによると、工事が進んでいる大型建築物の建築確認が取り消されるのは極めて異例。

 問題となったのは、千葉市の建設会社が同区下落合で建設中の地上3階地下1階建てのマンション(約30戸、延べ床面積約2820平方メートル)。周囲ががけなどに囲まれ、西側に長さ約34メートル、最小幅約4メートルの通路だけで外部の道とつながっている。

 判決によると、都建築安全条例では、延べ床面積が2000平方メートルを超える建築物は幅8メートルの通路が必要だが、区長が安全だと認める場合には例外とする規定がある。新宿区はこの例外規定を適用した上で、2006年7月に建築確認をした。

 1審・東京地裁は08年4月、「提訴できる期間を過ぎている」として訴えを退けたが、同高裁は今年1月、「マンションの敷地は周囲ががけになっており、通路以外で避難できない。災害時の避難に支障がないとする区長の判断は合理性を欠き違法」と請求を認めた。

●都心近くの「タヌキの森」、住民ら復元目指す マンション建築確認違法、建設会社「被害者の気分」
      読売 12.18
 豊かな緑が残る東京・新宿区下落合の「タヌキの住む森」と呼ばれる一角で建設中のマンションについて、最高裁が17日、区の建築確認を違法として取り消した。
 都心近くの緑の保護を訴えてきた原告の住民らは、この日の記者会見で「伐採された緑を復元したい」と話した。一方、敗訴した区は「違法建築になったので、建設会社を指導する」と言葉少な。都心のタヌキたちのすみかは、これからどうなるのか――。

 建設現場はJR目白駅から西へ約500メートルほどの高台で、目白通りと新目白通りに挟まれた場所にある。以前は古い住宅と屋敷森で、近くに区立下落合野鳥の森もあり、タヌキや貴重な野鳥が生息している。住民らによると、最近も路上や民家の軒下を歩くタヌキが目撃されているという。

 マンション建設計画が持ち上がったのは2004年11月。建設会社が土地を買い取り、3階建て約30戸の集合住宅を建てる計画を示した。これに対し、地元住民は翌年、森の保全を求めて「下落合みどりトラスト基金」を設立。森の買い取り資金を集めて区立公園にするよう区に働きかけた。

 しかし、集まった資金は建設会社が提示した10億5000万円に届かず、同社は06年、区の建築確認を受け、着工に踏み切った。建設地の樹木は伐採された。今回の訴訟は、こうした中、近隣住民が起こしたものだった。

 判決後、霞が関の司法記者クラブで記者会見した、基金の事務局長で原告の武田英紀さん(44)は、「地域住民の住環境が守られた。この地域にはタヌキやたくさんの自然が残されており、後世に残す一歩を踏み出したと言える」と語った。今後、改めてトラスト活動で買い取り資金を募る考えで、「区は知恵を出してほしい」と求めた。

 同席した基金の会計担当、森山崇さん(63)も、「最終的に公園になるまで努力していく」と話した。
 ただ、判決を受けて建設中の建物は取り壊す必要などが出てきたものの、実際にどうなるかは不透明だ。

 マンション建設は7割ほど進んでいるが、東京高裁で住民側が勝訴した昨年1月以降、停止している。建設会社は区に損害賠償を求める構えで、同社の役員は「区が建築確認を出したのに、こんな判決が出るとは。被害者のような気分だ」と戸惑った様子で話した。

 これに対し、区建築指導課は「現状で違法建築物になったので、建設会社に今後改めるよう指導していく」と話すだけ。住民と今後のことを話し合うかどうかは「未定だ」としている。・・ 野村昌玄、渡辺光彦)

  最高裁 判決のページ

事件番号 平成21(行ヒ)145
事件名 建築確認処分取消等請求,追加的併合申立て事件
平成21年12月17日 最高裁判所第一小法廷 判決

原審 東京高等裁判所 平成20(行コ)217  原審裁判 平成21年01月14日

判決全文
主文
1 原判決のうち被上告人X1に関する部分を破棄する。
2 上告人のその余の上告を棄却する。
3 上告費用は上告人の負担とする。
4 本件訴訟のうち被上告人X1に関する部分は,平成20年5月25日同被上告人の死亡により終了した。

理由
第1 上告代理人石津廣司ほかの上告受理申立て理由第1点及び上告補助参加代理人大脇茂ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1(1) 本件は,上告補助参加人及びAを建築主とする建築物の建築計画に対して建築基準法6条1項に基づき新宿区建築主事がした建築確認について,本件建築物の敷地の周辺に建物を所有し又は居住する被上告人らが,同建築主事の所属する上告人を相手としてその取消しを求める事案である。

(2) 東京都建築安全条例4条1項は,法43条2項に基づき同条1項に関して制限を付加した規定であり,延べ面積が1000㎡を超える建築物の敷地は,その延べ面積に応じて所定の長さ(最低6m)以上道路に接しなければならないと定めている。ただし,本件条例4条3項は,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては,同条1項の規定は適用しないと定めている(以下,同条3項の規定により安全上支障がないと認める処分を「安全認定」という。)。特別区は,特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例により,安全認定に係る事務を処理することとされ,区長がその管理及び執行をしている。

本件条例4条1項によれば,延べ面積が約2820㎡である本件建築物の敷地は8m以上道路に接しなければならないとされており,本件建築物の建築計画につき,Aほか1社は,その申請に基づき新宿区長から平成16年12月22日付けで安全認定を受け,その後,上告補助参加人及びAは,その申請に基づき新宿区建築主事から同18年7月31日付けで本件建築確認を受けた。被上告人らは,本件安全認定は違法であるから本件建築確認も違法であるなどと主張している。

2 原審は,本件安全認定は,新宿区長がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを
濫用してした違法なものであるから,本件建築物の敷地は本件条例4条1項所定の
接道義務に違反しており,本件建築確認は違法であると判断して,これを取り消し
た。

所論は,先行処分である安全認定が取り消されていない場合,たとえこれが違法であるとしても,その違法は後続処分である建築確認に承継されないのが原則であり,本件において本件安全認定が違法であるとの主張はできないのであるから,これと異なる原審の判断には,法令解釈の誤りがあるというのである。

3(1) 本件条例4条1項は,大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより,避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり,これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は,同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について,同項を適用しないこととし,建築主に対し,建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。

平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では,同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は,建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが,この改正により,建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。

これは,平成10年法律第100号により建築基準法が改正され,建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったことに伴う措置であり,上記のとおり判断機関が分離されたのは,接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり,建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが,安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。

以上のとおり,建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして,前記のとおり,安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。

(2) 他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。

そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。

(3) 以上の事情を考慮すると,安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮川光治 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志)


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