Sunday Song Book #1110

2014年01月19日 | Sunday Song Book

2014年01月19日プレイリスト
「極私的・青山純追悼 Part 1」
1. RIDE ON TIME / 山下達郎 '80
2. DRIVE ME CRAZY / 水口晴之 "ブラック・オア・ホワイト" '80
3. 渇きの海 / 難波弘之 "パーティー・トゥナイト" '81
4. アンフィシアターの夜 / 竹内まりや "ヴァラエティ" '84
5. GUILTY / 鈴木雅之 "ラジオ・デイズ" '88
6. DAYDREAM / 山下達郎 "ライド・オン・タイム" '80
7. MY SUGAR BABE (INST. VER) / 山下達郎 "ライド・オン・タイム" '02 BONUS TRACK
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■内容の一部を抜粋
・近況
ツアーが終わって一月近く経って、ようやく声が普通に戻ってきたそうだ。
「本日1月19日。今年最初の収録でございます。先週、先々週は昨年、前倒しで収録しておりました。年が明けて2014年になりました。今年も変わらずご愛顧何卒よろしくお願い申し上げます。今年もサンデー・ソングブック、いろいろとですね、がんばってやってみたいと思っております。今日は1110回目のサンデー・ソングブックでございます」と達郎さん。

・極私的・青山純追悼 Part 1
「12月3日にドラマーの青山純さんが亡くなりました。享年56歳でございました。青山くん、僕ら青ちゃん、青ちゃんと言っておりますけれど。私、特に'80年代のほとんどのレコーディングと、それから全てのライヴを青山純と一緒にやってまいりました。全くもう本当に身内のような人間でございます。彼が若い頃からずっと一緒にやって来ましたがですね、大変残念なことですが。最近は本当にそうした訃報が相次いでおります。大滝詠一さんもですね、突然お亡くなりになりましたですしね。私もそうした年になって来たのかなという感慨もございます。去年もアラン・オデイ、佐藤博さん、岩谷時子さん、いろいろな追悼特集をやってきましたけれども、青ちゃんはいってみれば身内なので、そうした俯瞰的な特集みたいなことはできません。従いまして今週、来週、青山純追悼特集でございますが、本当に私的な、私的なを通り越して極私的なですね、追悼特集であります。一般的な青山純像というのは'80年代、'90年代を代表するスタジオ・ミュージシャン、そして大変なテクニシャンでありまして、いろいろな仕事を、スタジオ、それからステージを手掛けているという、そうした印象をお持ちの方だと思いますが。私は本当に彼のスタート時点からずっーと一緒にやってる人間でございますからですね。ちょっと彼のドラマーとしての、音楽家としての僕の見解というのは一般的な評価とちょっと違うものがあります。そうしたものをほとんど今まで語ることはありませんでしたけれども、青ちゃんが亡くなってしまいましたので、今週、来週二週間、彼の追悼ということで、やることで、そうした私が感じる青山純というひとりの演奏家の思い出というのを語りつつ、業績とそれから彼の冥福を祈ろうという企画でございます。今週、来週二週間、極私的青山純追悼特集と題しまして、ほとんど私の作品、それから私がプロデュースした作品、そういうふうなものを中心にお届けをしたいと思います。年始から湿っぽいものになりますが、でも彼はミュージシャンなので音楽家としての彼の足取りを、特に自分のパートナーとしての彼のドラマー人生を僕が語ってあげることで、少しでも彼の業績を偲べればという企画でございます。あくまで音楽的な内容でございます。日曜日の午後のひととき、ちょっと湿っぽいアレですけれども、音楽は掛け値なしに彼の素晴らしいドラミングをお楽しみいただけます」と達郎さん。

・RIDE ON TIME
青山純さんはそれまでもいろいろな人とやっていたが、いわゆるメジャー・フィールドで本格的に活動するきっかけになったのは達郎さんとの仕事が最初だったとか。1980年5月1日にリリースされた「RIDE ON TIME」が達郎さんとの仕事の最初の作品になる。

・DRIVE ME CRAZY
青山純さんは東京・世田谷出身。杉真理さんと青山純さんのお兄さんが学校の同級生で、その関係で杉真理さんのバンドで青山純さんがドラムを叩いていた。その時代に杉真理さんの後輩のまりやさんがそこに参加したという経歴もある。青山純さんは高校時代からドラムのアカデミックな教育を受けていた人で、プロになり伊藤広規さんというベーシストと出会い、佐藤博さん、織田哲郎さん、鳥山雄二さん、北島健次さん、いろいろなミュージシャンと交遊を深める中でプロの道に入ってゆく。ふとしたきっかけで達郎さんと出会うことになり、青山純・伊藤広規というリズム・セクションで1979年の終わりからライヴ活動をはじめて、その後、ほとんどのレコーディングを彼らに頼むことになってゆく。とにかくうまいドラマーで、いちばん最初に達郎さんと会ったときは22,3歳で、達郎さんが26,7歳のとき。テクニックだけではなく、青山純というスタジオ・ミュージシャン、ステージでも活躍しているが、'80年代的な意味でいうとフュージョン系、いわゆるJ-POPのスタジオ・ミュージシャンという印象があるが、達郎さんの持ってる青山純像はジャズのエッセンスのほとんどない人で、いわゆるロック・ドラマー、特にブリティッシュ・ロックから入って来たので、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、例えばジョン・ボーナムに影響を受けたドラムのチューニングをやってる人だった。その上にちゃんとしたドラムの教育があったので、恐ろしいテクニックを持った人だった。

「RIDE ON TIME」と同じ年にクールスのリード・ヴォーカルの水口晴之さんのソロ・アルバムを達郎さんがプロデュースした。このアルバムでは当時の達郎さんのバンドのリズム・セクション、青山純さん、伊藤広規さん、難波弘之さん、椎名和夫さんでレコーディングした。このアルバム『ブラック・オア・ホワイト』は達郎さんのアルバム『RIDE ON TIME』より前に出たので、青山純さんとスタジオでがっぷり四つに組んでやったのは『ブラック・オア・ホワイト』でだった。今でもそのときのドラムのテクニックは鮮烈に印象に残ってるという。1980年5月21日発売『ブラック・オア・ホワイト』の1曲目「DRIVE ME CRAZY」は筒見京平さんの作曲、水口晴之さん作詞の作品。「イントロからはじまりましてエンディングのフェイドアウトに行くまでのドラムのあらゆるテクニックと申しましょうか、パッセージの素晴らしさ。これでもう、この人はすごいなと思いました。ときに青山純23歳の演奏です」と達郎さん。

・渇きの海
1981年の難波弘之さんのソロ・アルバム『パーティー・トゥナイト』は青山純さん、伊藤広規さん、難波弘之さん、北島健次さんのカルテットの演奏。プログレッシブ・ロックとしては見事なインストゥルメンタル。SFのアーサー・C・クラークの作品『渇きの海』から素材を得た「渇きの海」。エンディング近くのダブル・バスはふつうに8分音符を打った後に、後被せで16ビートのウラを入れるという超絶的なテクニック。しかもダイナミクスが全く狂わない。

2曲聴いたがこういうものがルーツで、それから16ビートに行ったので、ひじょうに重たい16ビートを作れる人だった。東京は世田谷出身なので何処か知的なところがあるのも魅力と達郎さん。

・アンフィシアターの夜
1984年のまりやさんの復帰第一作アルバム『ヴァラエティ』から「アンフィシアターの夜」。レコーディング・メンバーは青山純さん、伊藤広規さん、達郎さんが左のギター、右のギターは松浦善博さんというサザン・ロックの名手、キーボードは中西康晴さん。

・GUILTY
ロックンロールから佐藤博さんとかの影響でだんだんR&Bを嗜好するようになり、もともとロックンロールのテイストがあるので重い16ビートが青山純さんの持ち味となってゆく。その典型的な作品が1988年の鈴木雅之さんのソロ・セカンド・アルバム『ラジオ・デイズ』に入ってる達郎さんプロデュース、作曲の「GUILTY」。レコーディング・メンバーは青山純さん、伊藤広規さん、難波弘之さん、達郎さんのギター、リード・ギターは大村憲司さん。こうしたR&B的なものを演奏するには重いドラムだが、言ってみればジョン・ボーナム、カーマイン・アピス、彼らもR&Bが好きでチューニングが重たくて、結果的にツェッペリンやバニラ・ファッジ、ベック・ボーガード&アピス、カクタスのように、青山純さんのドラムも近いものがこの時期はあると達郎さん。

・DAYDREAM
青山純さんのドラム・セットはドイツ製のソナー。えらい重い音のするドラム・セットでお馴染みだが、達郎さんが青山純さんといちばん最初にはじめたときはパールのドラム・セットを使っていた。でも基本的に重さは全然変わらないそうだ。今日聴いた中では「RIDE ON TIME」、水口晴之さんの作品はパールで叩いている。のちのソナーとそんなに遜色ないのはビート感のタイムの賜物。達郎さんのアルバムでいうと『RIDE ON TIME』から『FOR YOU』まではすべてパールで演奏している。達郎さんはこの時代の音色が好きなのだとか。ある意味でソナーよりもこの時代の方が青山純さんらしいプレーじゃないかと思ってるという。アルバム『RIDE ON TIME』から達郎さんがいちばん好きな青山純さんの演奏で「DAYDREAM」。達郎さんのギター、青山純さん、伊藤広規さん、難波弘之さん、椎名和夫さんのファイブ・リズム。トロンボーンのソロは向井滋春さん。

青山純さん、伊藤広規さんのリズム・セクションは'80年代から日本を代表するリズム・セクションに成長してゆく。彼らをいちばん最初に起用したとき、スタッフも聴衆の多くも「無名のミュージシャンをどうして使うんだ?」という反対、それから抗議があったという。今から考えれば嘘みたいな話で、世の中というのはそういう有名性やブランド性を金科玉条として崇めるところがある。

・MY SUGAR BABE (INST. VER)
青山純さんはブリティッシュ・ロックから入って、どちらかというとハード・ロック、ロックンロール系のドラムではじめたが、だんだんR&Bに興味を持つようになり、達郎さんと一緒にはじめた1979年に、達郎さんが青山純さんのために当時聴いていたR&Bやソウルをカセットに入れて渡したら、「世の中にこんなにすごい音楽があったんだ」と電話してきたという。二十代前半の感受性が豊かな頃にそのような音楽を浴びるように聴いて、青山純さんのスタイルは固まって行った。1980年のアルバム『RIDE ON TIME』を2002年にリマスターして再発したときに、ボーナス・トラックとして収録した「MY SUGAR BABE 」のインスト・ヴァージョン。これは勝新太郎さん監督・主演のテレビ・ドラマ『警視-K』の主題歌に使われた「MY SUGAR BABE 」をドラマのBGM用にインストで一発録り録音したもので、コード進行だけ同じでリズムは全く違っている。いわゆるシカゴ・ソウルの跳ねたビートで演奏している。それまでこうした曲をやりたくても日本のドラマーはなかなか演奏できなかった。青山純さんが登場していとも容易くこうしたビートが叩けるので、「遂に自分のやりたい音楽ができるリズム・セクションができた!」と喜びに満ちたテイクになった。この時代はクリックはなく、リズム・ブロックスを聴いてない一発録りだが、このリズム・セクションの安定感があるのは青山純さんのタイム感の正確さによるもの。難波弘之さんのキーボード・ソロも素晴らしい。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係

2014年01月26日は、「極私的・青山純追悼 Part 2」
http://www.tatsuro.co.jp
コメント (2)
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