Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

魅惑の外ランチ

2009-05-30 01:35:00 | アメリカ生活雑感
5月も下旬になってから、急に夏めいて来た感じ。
もう、急に肌寒くなったりすることもないだろう(たぶん・・)。

暖かくなってきたらいよいよ行動開始だ。
冬の間はパスしていた大学の講義受講を、今期からまた再開。今回受講するのは前回同様Sosiology(社会学)クラス、テーマは「Social Problem(社会問題)」。
毎週火曜と木曜、1時から3時50分までの約3時間という長丁場だけれど、1時間やそこらの授業は本当にあっという間に終わってしまうので、少々長く感じるほうがいいかも。(・・・しかし、現実はそう甘くなかった。この話はまた改めて)


さて。
今日はその第2回目の授業だったが、その前にめずらしく“友達と外でランチ”の約束。シカゴにきてから初めての経験。
ブログをとおして知り合った、隣町に住む日本人のMさんが「お友達とランチをするので一緒にいかがですか?」と誘ってくれたのだった。
日本人村以外で日本人の友達ができるというのは本当にまれ。こんな機会は滅多にないので、喜んで参加させていただくことに。
ブログってこういう効果もあるのね
公私ともどもすっかりインターネットのお世話になっている私。
昔、インターネットもなく田舎住まいをしていた日本人はさぞや暇でさびしかっただろう、とつくづく思う。


お隣町のNapervilleのインディアン・レストラン。
バフェ(食べ放題)スタイルのランチに集まったのは、Mさんほか“南西部郊外組”の4人。うち、おふたりは珍しい長期駐在組、あとのおふたりはご主人がアメリカ人、そこに私が加わった“アラフォー5人”。(私もどさくさにまぎれて入れてもらってます
皆さん、私より若いのにアメリカ生活は15年以上というベテラン揃いで、なんというか「しなやかな貫禄」があった。
お子さんたちの年齢も近いこともあって、現地の学校のこと(アメリカの性教育についてなどなど)や、ピアスをあけてやるかどうか、爪をかむ癖をどうやってやめさせるか・・・なんていう話がどんどんはずんでいて、まるで別世界のように面白かった。
たった1時間しかご一緒できずに先に失礼させていただいたけれど、とても心地よかった。また集まれたらいいな。
今日はなんだか「有閑マダム」になった気分



いろんな種類のカレー、タンドリーチキン、ナン・・・
すべておいしかった。

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なんちゃってガレージセール

2009-05-26 01:00:59 | アメリカ生活雑感

さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!
持ってけ、ドロボー!



アメリカはメモリアルデー・ホリデー3連休。
毎年、この連休を利用してあちこちで地域ぐるみのガレージセールが行われる。
うちのコミュニティー(団地)もしかり。
去年は別段売るほどのものもなく近所を冷やかす側だったけれど、今年はなんだかどうしても参加したくなって、家の中のいろんな不要物を庭に引っ張り出して“開店”することにした。
前オーナーがガレージに残していったあんなものやこんなもの、引越しの際にPちゃんの上司から受け取った山のような食器類(2年間手をつけず)、古い照明器具やヨガマットセット、Pちゃんが職場から拾ってきた誰かが捨てたCDなど・・・
結構いろんなものが出てきた。

はじめは「そんなもの出すほうが恥ずかしいからいやだ」と消極的だったPちゃんも、私がむりやり開店準備を始めるとガレージの大掃除もかねて調子に乗ってあれもこれもといろいろと“商品”を持って来てくれた。
案外好きなんちゃうん?

よそのガレージセールに行ってみればわかるが、とにかくアメリカ人は何でも売る。
そんなもの売る前に捨てろよ、と思うようなガラクタまで臆面もなく並べていてコチラが恥ずかしくなるのだが、一切気にしないらしい。
このあたりの神経の図太さ、美的感覚のなさは、フランス人にはとても真似できないだろう。
そんな様子を前日に見ているので、私たちもちょっとだけ気持ちが大きくなって、とにかく捨てるには惜しいものをならべてみた。


しかし。


誰も来ない。
開店が遅かったのと、うち以外隣近所は誰もやっていなかった(去年出し尽くしたのか?)せいか、いまひとつうちの通りは盛り上がりに欠け。

1時間くらいたったころ、一人のメキシカンガイがふらりとやってきた。
ボロボロのオイルタンクを指差して、「これいくら?」
アメリカでは、ガス欠防止のため予備のガソリンを小さなタンクに入れて車に積んでおくことができるのだ。
Pちゃんがうれしそうにやってきて、交渉成立。3ドルでお買い上げ。

しかしこのお兄ちゃん、その後自分の商売の売り込みを始めた。
ガレージの通路がかなり傷んでいるので、コーティングしないか?というのだ。
そういえば1週間ほど前、うちに「安くやります」とチラシがはいっていたのは彼の会社(?)だったようで、前から手をつけたかったPちゃんは即発注。
「じゃ、明日ね」と早速商談成立。

3ドルのオイルタンクを買って、35ドルの仕事を受注したお兄ちゃんの勝ち。
この人、とっても謙虚そうないい人だったのでPちゃんも何かしてあげたくなったらしい。
ガレージセールを回って、何気なく営業するという手口もなかなか巧みだ。

アメリカ人がうかれてBBQばかりしている休日に一生懸命働くメキシカン。
えらいぞ!
君たちがいなければこの国はたちまち機能しなくなるだろうな。


翌日の正午には終了。
「立ち入り禁止」サインしてくれてるのかと思ったら、
ちゃっかり営業してるし。
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アメリカンアイドルがどうしても崩せなかった壁。

2009-05-23 06:40:47 | アメリカ生活雑感
(注)ネタバレあり。ファイナルの結果を楽しみにしている人は今は見ないでね。

全米が狂ったように大騒ぎした、アメリカンアイドル・シーズン8が終了して一夜明け、翌朝の新聞を見てみると、やはり見出しは

“Shock and.... huh? え?クリスが勝ったの?”だった。

第2のプレスリーか、フレディー・マーキュリーか、とも囁かれ、もっとも頂点の座に近いところにあったアダムが敗れたのだから仕方ない。
しかし所詮選ぶのは、プロのアーティストでもなければサイモンのような腕利きプロデューサーでもない。
アメリカの“普通の(ちょっといかれた)若い女の子たち”がメインなのだ。
この結果は、予想されていたともいえる。

アダムは出来上がりすぎていたし、それにどぎついメークを「きもい」と嫌う人たちも多い。
諸刃の刃のようなスターだったからだ。
それに比べると、クリスは純朴で謙虚な田舎の青年然としていて、清潔でかわいい。
ジョイナス・ブラザーズか、若かりし頃のブライアン・アダムスか、という雰囲気があり、アダムとは180度違う。
女の子の心をつかむのに十分な理由はある。

しかし、今日の新聞にはさらに面白い分析があった。
いわく、敗因は「アダムがゲイであること」だというのだ。
本人ははっきりと明言していないが、シーズン途中に男性とのキス写真がインターネットで流れ、それから彼は誹謗中傷を受けるようになる。
いくらアメリカン・アイドルがタレント&歌唱力コンテストであっても、「キリスト教の国、アメリカの“アイドル”としてゲイを選んでもいいのか」という心ない書き込みや議論がインターネットをにぎわし始めた。
もっと怖い話では、ある教会が信者に「アダムを支持してはならぬ」とお達しを出したという。
そういえば、ベスト3で姿を消したライバル、ダニー(私のお気に)は、教会の音楽ディレクターだった。
彼が姿を消してから、その支持者の票がすべてクリスに流れたというわけだ。


ここまでくると、なんとも言えない無力感が襲ってくる。
こんなところまで、宗教上の「倫理観」とやらが介入してくるのか?
ゲイは一等賞をとってはいけないのか?


つい先日、オバマ大統領がカトリック系の大学であるノートル・ダム大学の卒業式に招かれ、ちょっとした騒ぎになった。
プロチョイス(中絶容認)のオバマ大統領は、カトリックの敵。そんな人物を式典に招くなどけしからん、というわけだ。
オバマ氏の出席に抗議し、卒業式典をボイコットした学生も多数おり、大学の外には血まみれの赤ん坊の絵を描いたプラカードを掲げたプロライフ派が押し寄せ、もみあいにもなったという。



自由な国、のはずのアメリカ。
黒人の大統領が誕生し、ひとつの大きな壁をうち破ったこの国がどうしても突き破れない次なる壁・・・・
その影にはいつも、“敬虔な(狂信的な)”クリスチャンたちがいる。
アメリカにゲイの大統領が誕生する日は来るのだろうか。

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America Idol Season8 Finale

2009-05-21 14:22:05 | アメリカ生活雑感
なんだかんだ言っている間に、A.Iも今日でシーズンフィナーレ。
個人的には昨シーズンほど盛り上がらなかったものの、終わると思うとやはりさびしい。
今シーズンは不況の影響か、全体的に地味だった。
毎年豪華絢爛なゲストも、今年はそれほどメジャーなシンガーが登場せずおわってしまった感。
あえてメジャーといえば、スモーキー・ロビンソンとRock Weekのスラッシュくらいなもの。

と思っていたら、最後の最後にど派手なゲストが続々登場してこれまたびっくり。
シンディー・ローパー、ロッド・スチュアート、カルロス・サンタナ、キース・アーバン・・・
さらに、歌い手との組み合わせも絶妙だった。
ダニーはライオネル・リッチーと。
(ダニーが歌いだすとなぜかほろっとしてしまう・・・彼に弱い私)
アダムはKISSと堂々のステージ。
そしてなんと、オーラスはQueenの登場で場内騒然。ブライアン・メイだよ~!!!
「クィーンの次のボーカリストには誰が適任か」というアンケートで、なんとアダムの名前もあがっているという巷のうわさ。
そこにきて、ブライアンとアダムのツーショットが見られたのもなかなか意味深だ。


さて、問題の結果は???
ここからはネタバレあり。













はっきりいって、かなり番狂わせの結果だった。
だいたい私の一押しのダニーが、先週vote outされた時点でかなり納得がいかなかった。というのも、負けた相手がクリスだったからだ。
クリスという男、妙に人気が高い。
アメリカ人の女の子はああいうタイプに弱いようで、週を追うごとに彼のファンが倍増していき、あれよあれよという間にファイナリストにまでなってしまった。
歌唱力では圧倒的に上なのに、クリスの人気の勢いにやられてしまったダニー。
このままではアダムも危ないかもしれない、
でもまさかアダムが負けるわけがない。

そんなドキドキ感を抱きながら最後の5分間を迎える。
「2009年のアメリカンアイドルは・・・・」
一瞬の間のあと、ライアンの口が一気に動いた。

「Kris!!」

本人が一番あっけにとられていた様子。
「だってアダムが・・」とわけのわからんことをつぶやいている。
今まで(票に響くから)あまり表に出てこなかった妻と、最後の最後にステージで抱擁。
ああ、かわいそうに。ふたりの運命はこれで大きく変わってしまうに違いない。
アメリカンアイドルになる覚悟は、むしろプロであるアダムのほうが出来上がっていたのだが、最後は“無欲な隣のお兄さん”にさらわれてしまった。
実力で勝ちながら、人気で負けたアダム。
しかし、彼のカリスマ性が見る人を惹きつけたことは確か。
これから、どんなキャリアが待っているのか楽しみだ。

私はタイプじゃないので買わんけどね。
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送別夕食会。(invitacion por la cena de adios)

2009-05-21 01:37:26 | アメリカ生活雑感
Nos invitamos a la cena por la pareja de mi Srilankan amigo Anu.
Ella cocinó la cena maravillosa y nosotoros commimos muuuuuucho.
Vosotoros vais a NY la semana proxima.


★ ★ ★ ★

去年受講していた大学の「幼児発達学クラス」のクラスメートで、その後も一緒に野球を見に行ったりして何かと親しくしていたアヌ夫妻が、いよいよ来週ニューヨークへ移ることになった。
せっかく暖かくなってきて、これから一緒にいろんなことがたくさんできると思っていた矢先なのでとてもさびしい。
そのアヌ夫妻から、最初で最後のDinnerにお招きいただいた。


アヌのアパートは、うちからシカゴ方向に車で30分くらいの閑静な住宅街、ウエストモントにある。
7時半ごろお宅に到着し、まずはビールで乾杯。
もともとアヌと私が友達だというのに、Pちゃんとナラカ(Anuのご主人)はとても気が合うらしく、まるで古い友達のようにしゃべりまくっていた。
やはり同業者(フィジシスト)しかもAthiestという共通点は強烈らしい。
それにナラカはPちゃんの超ナンセンスギャグに付き合ってくれ、しかも倍返ししてくれるのでPちゃんも炸裂。
笑いのつぼが同じ人って、貴重。
まったく惜しい人をなくしてしまう・・・


アヌとナラカの故郷であるスリランカではつい先日、長年政府と闘争状態にあったタミル人武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の最高指導者が殺害され、いわゆる25年にわたるスリランカ内戦が終結したばかり。
ふたりともほっとした様子だった。
そんなこんなをしゃべりながら、晩御飯に突入。


初めて飲んだ、スリランカビール「ライオン」。
ほのかな甘みがあっておいしかった。



そして、アヌの“母の味”じゃがいもと牛肉の、スリランカ風カレー。
サラダ、ピリ辛いんげんフライ、サラダ。
おなかいっぱいご馳走になった。
おいしかった~


2年前(2007年)8月に結婚式をあげたふたり。
その後、AnuはNarakaの待つアメリカへ一人でやってきた。
国を出るのは産まれて初めてだったそうだ。
まるで、小説『Namesake』のよう・・・


今度はNYで再会しようね!
そのときまで、お互いにGood Luck!!
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Reunion de Espanol (スペイン語の会)

2009-05-19 01:57:52 | アメリカ生活雑感
広いアメリカの、しかも田舎に住んでいたら、一日中誰とも会わない、しゃべらないという日が多くなる。
バークレーでは車なしでも動き回れたし、クラスメートや音楽仲間、飲み仲間などもたくさんいていつでも会いに行くことができたが、ここではそうもいかない。
引っ越してきて1年半たったけれど、思うような人脈が広がっていないことにいらいらすることもある。


そんなことを考えている人たちのための「お友達&コミュニティー」サイトの存在を知ったのは、最近のこと。
実はこのサイト、半年ほど前にPちゃんが「Athiest Group」(無宗教グループ)はないかと探していて偶然見つけたもの。
そのサイトでは、同じグループ仲間同士のコミュニケーションはもちろん、定期的にミーティングのお知らせなども広報され、メンバーの出欠状態も共有できる。
一度、興味半分でそのミーティングに出かけていったPちゃんは、「年齢も職業も住んでいる町もばらばらの人たちが、熱心に同じトピックで話をするのはなかなか面白かった」と興奮して帰ってきた。

ならば、と「スペイン語をしゃべろう」グループはないものかと調べてみたら、あるわあるわ。シカゴ市内はもちろん、郊外あちこちにグループがあって、定期集会を持っている模様。
そこで、「西部地区郊外のスペイン語グループ」というのにサインアップしてみた。
メンバーのほとんどが、アメリカ人。それも、なんらかの理由でスペイン語を使っている、もしくは勉強を続けているという人たち。
そのグループの5月度の集会がたまたま先週の金曜日だったので、Pちゃんを誘ってふたりで顔を出してみることにした。

郊外のカフェに集まったのは、10人。
みんな、いすに腰掛けたかと思うとすぐさま隣近所の人たちとしゃべり始めた。もちろん全部スペイン語。(汗・・・)
片言の人なんかいやしない。
私なんか自己紹介するのがやっとで、あとは人の会話を聞くのに精一杯。
隣に座ったPちゃんも、さっそく“自虐ネタ”(スペイン名前のくせに、スペイン語がうまくしゃべれない)で笑いをとりながら、それでもネイティブ(ボリビア出身の女性)とそれなりに会話を楽しんでいた様子。
ドイツ人も数人いて、途中からドイツ語会話もやっていた。
ミーティングといっても、途中で抜ける人あり途中でやってくる人あり、何にも縛られないとても自由な雰囲気。それに、みんなとてもいい人たちだった。
何がなんだかわからなかったけれど、もっとボキャブラリーを増やして6月のミーティングも参加してみるつもり。

言葉の習得を“勉強”だと思うととたんに苦痛でつまらなくなるけれど、こうやって会話を楽しむためのツールと考えると、楽しくなる。
何より、自分の意思(ボタン)ひとつで今まで会えなかった人たちと会うことができ世界が広がるという、日常からの脱却が面白い。


★ ★ ★

Pedro y yo hisimos socio de "Conversacion de Espanol" y fuimos a la reunion viernes pasado.
Nosotros nos encontramos a las personas que hablaron espanol y pasamos un bueno rato.

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『MILK』

2009-05-16 05:36:23 | movie
本年度アカデミー賞作品賞ノミネート、主演男優賞(ショーン・ペン)受賞作『MILK』。

全米で初めてゲイであることを明らかにして公職選(市会議員)に当選した、ハーベイ・ミルク(Harvey Milk)の、最後の8年間を当時の映像や証言などを交えながらドキュメンタリータッチで描いた作品だ。

NYから恋人のスコットとともにサンフランシスコ・カストロ地区に移り住んだミルクは、ゲイコミュニティーの抱える問題に積極的にかかわり始め、そのその親しみやすい性格とリーダーシップから“Mayor of Castro Street (カストロストリートの市長)”と呼ばれるようになる。
1973年、サンフランシスコ市の市政執行委員(=市会議員)に立候補するも、落選。
1977年、4回目にしてついに当選を果たし、ジョージ・マスコーニ市長とともに市政に携わるが、1978年11月27日、元同僚議員で敬虔なキリスト教徒であるダン・ホワイトにより、市長とともに射殺される。


1977年という時代。
同性愛者は“病気”と忌み嫌われて差別され、社会から抹殺されようとしていた。
フロリダ州では、人気歌手のアニタ・ブライアントが先頭に立って同性愛者差別を禁止する法律を廃止。“リベラル”なカリフォルニア州でさえ、“プロポジション6”(同性愛者及び同性愛者の権利を支持する教師を公立学校から排除する法案)が議会に提出されていた。
この法案が通ると、同性愛者は社会的地位や人権はなくなるも同然。ミルクは先導して反対運動を率い、ついに劇的な否決を勝ち取る。
ここに、アメリカにおけるゲイの地位は、大切な第一歩を踏み出すことになった。

この映画の全米公開日翌日の2008年11月27日は、ミルクが射殺されてちょうど30年目だった。
11月4日に、カリフォルニア州の住民投票でプロポジション8(同性婚禁止を求める住民提案)が可決されるという、衝撃の出来事が起こったのも記憶に新しい。
(大統領選挙投票と同時に行われたため、今まで選挙に行かなかった保守派の黒人層がオバマ効果で選挙にのぞみ、こぞってこの法案に投票したという皮肉な背景がある)


30年たった今でも、「同性愛者の権利」はいまだにアメリカを二分する議論のひとつ。
「異性同士でなければ夫婦にあらず」と主張する保守派クリスチャンは、共和党を支持し、ことごとく同性愛者の結婚に意義を唱え続けてきた。
映画のなかでも「子どもたちを守れ!」というわけのわからない合言葉が何度も聞かれる。
いったい何から守る、というのか?
「同性愛者は子どもを作れない。だから教師となって子どもたちを彼らの世界に引きずり込もうとしている悪魔集団だ」というのが、彼らの言い分だ。
こんなことを本気で言っているのだ。
彼らがいったい何をしたというのだ!?

ふと、数年前にお会いした、サンフランシスコ市政執行委員Bevan Duftyさんが脳裏をよぎった。
彼はサンフランシスコのミッション地区という、貧しい南米移民の居住地にあるミッションハイスクールの校長だった人。
この学校は生徒たちの非行と暴力で荒れに荒れていたのだが、彼がここの校長になってからは、そのあふれるような愛情で生徒を包み込み、生徒たちはみるみる立ち直っていったそうだ。
彼は「ゲイ」をカミングアウトしている市議会議員、という点ではミルクを継いだ人物のひとりだったのだ。
そう考えると、ますます感慨深い。


・・などと言いつつ、思えば日本にいたときは「ゲイの人権」などまじめに考えたこともなかった。
初めてアメリカで暮らし始めたのが、運命的にサンフランシスコ・ベイエリアだったこともあり、次第に社会の中でゲイの存在を目の当たりにした。
ゲイの“聖地”、カストロストリートにも何度も足を運んだ。
ゲイのシンボルであるレインボー・フラッグが、誇り高く街のあちこちに掲げられていた。
肩を組み、腕を組み、時にはキスをしながら颯爽と歩く男性カップル(なぜか女性カップルはあまり見かけなかったが)に、なんともいえない衝撃を受けたものだった。
彼らが今こうしてあるのも、ミルクが最初の扉を開いたからこそ。
映画の中にたびたび登場する、サンフランシスコの市街やカストロ地区、市庁舎など、すべてが懐かしかった。


個人的には、私が一番好きな俳優であるショーン・ペンがこのミルクをどう演じるかを楽しみにしていたけれど、「演じる」という言葉自体が無意味なほど、彼はミルクだった。
その動き、目使い、しゃべり方、感情表現・・・すべてが「ああ、ミルクはこういう人物だったのだ」と確信させるに十分だった。
私が2番目に好きな俳優ジェームス・ブランコは、なんとミルクの恋人役。
二人の濃厚なキスシーンを見ていると、なんとも複雑な気分になった。
ミルクを射殺する元同僚ダン・ホワイト役には、J.W.ブッシュの半生を描いた映画『W』(2008)で、あほブッシュそのものになりきった(?)ジョシュ・ブローリン。

いい作品力にすばらしい演技陣。
ミルクを知る人も知らない人も、アメリカにおけるゲイムーブメントを知ることのできる映画だ。



A triumphant Harvey Milk leading
marchers in the 1978 Gay Freedom Day
Parade in San Francisco


Sean Penn plays Harvey Milk(2008)

copyright Momentum Pictures (2008)
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最近の記事

2009-05-14 00:38:45 | アメリカ生活雑感
最近、ふたつの記事を書きました。
是非ご一読ください。

US新聞.COM
「SHOKOのシカゴ郊外の町から」

Pちゃんの職場でもある、物理施設「Fermilab」についてレポートした記事。


エデュケーションプレス
「“夏はプロ野球選手、冬はアメフト選手”を生み出す、アメリカの体育事情」
アメリカではどんな“体育”教育がされているのか?をまとめたレポート。
ご協力いただいた皆様、この場を借りまして本当にありがとうございました!

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裁かれる者

2009-05-13 05:12:11 | アメリカ生活雑感
きのう、映画のレビューでナチス・ドイツの戦犯裁判について感想を書いたこのタイミングで、今朝こんなニュースが飛び込んできた。

89歳のナチス戦犯、独移送=ユダヤ人虐殺で逮捕状-米当局
【5月12日 AFP】(一部修正)第2次世界大戦中のナチス(Nazi)強制収容所の元看守で、ドイツの裁判所から逮捕状が出ている、米オハイオ(Ohio)州在住のジョン・デムヤンユク(John Demjanjuk)容疑者(89)が11日、ドイツに強制移送された。
 デムヤンユク容疑者は担架に乗せられ、自宅から民間の救急車で運び出された。その際、同容疑者は泣いているように見えた。自宅からの移送は4人の係官によって行われたが、大きなシートが掲げられ周りからは見えないような措置が取られた。
 消息筋によると、同容疑者が乗せられた独ミュンヘン(Munich)行きの飛行機は、クリーブランド(Cleveland)のバーク・レイクフロント空港(Burke Lakefront Airport)から午後7時13分(日本時間12日午前8時13分)に飛び立った。
 デムヤンユク容疑者の家族は同日、コメントは発表しない意向を示した。また、米当局もコメントを避けている。一方、あるドイツ当局者は、デムヤンユク容疑者は12日にドイツに到着する予定だと語った。
 同容疑者の家族はこの数か月、高齢のため長距離の移動は耐えられないと主張し、米裁判所に国外追放の差し止め請求を多数起こしていたが、7日に米最高裁が身柄引き渡しの差し止め請求を棄却していた。
 有力ユダヤ人組織「世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress)」は、同容疑者の強制移送を歓迎する姿勢を示した。同会議のロナルド・ローダー(Ronald Lauder)議長は、「米国の司法の手が成功裏かつ正当に、憎むべきナチスの迫害者に対し正義を実行した。米国のユダヤ人社会、特にホロコーストの生存者は、われわれの社会からこの恥ずべき人物が排除されたことを歓迎する」と語った。(c)AFP/Dick Russ


人生の終盤になって、60年前の罪で逮捕・強制送還されるとは。
彼の頭の中に去来するものは、いったい何なのだろうか。

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『The Reader』

2009-05-12 04:39:40 | movie
見たい映画(DVD)が続々近所の図書館に入荷してきて、最近忙しい。
しかもわざわざ図書館に行かなくても、見たい映画があるかどうかをまず図書館のHPで検索し、
貸し出し中の場合オンラインで予約を入れておくことができるので、時間も短縮できる。
さらに便利なのは、貸し出しの順番が回ってくると自動音声で電話をくれるしくみ。
これならピックアップに行って手ぶらで帰ってくる、なんてこともなし。
実に合理的。

というわけで、最近はもっぱら“本年度のアカデミー受賞関連作品”に絞ってもうかたっぱしから見ている。
というか、10作品以上予約を入れているので図書館から毎週のように電話がかかってくる。

先週末、長い長い順番待ちの末ようやくまわってきたのが『The Reader』(邦題:“愛をよむひと”)と『MILK』のふたつ。
ご存知、今年のアカデミー賞の主演男優賞(ショーン・ペン)、女優賞(ケイト・ウィンスレッド)受賞作品、そして共に最優秀作品賞ノミネート作品だけあって、
どちらも見ごたえのあるいい作品だった。
しかしなんというか、違う意味でどちらも胸がしめつけられる映画だった。

★ ★ ★ 『Th Reader』

舞台は1956年のドイツ。
15歳のマイケルは、気分が悪くなったところを21歳年上の女性ハンナに助けられる。クールでいてどこか魅力的な彼女に惹かれた彼は、以来足しげく彼女の元へ通い、ふたりは禁断の関係を持つようになる。
関係を持つたびハンナはマイケルに本を読むことを要求し、マイケルもそれにこたえて毎回いろいろな文学書を選んでは彼女に読んで聞かせることに喜びを感じるようになっていた。
ますま彼女にのめりこんでいくマイケル・・。
しかし、ある日ハンナはマイケルの前から忽然と姿を消してしまう。

8年後、法律専攻の大学生になったマイケルは、授業で見学に出かけたナチスドイツの戦時裁判で、被告人のひとりとなっていたハンナを見て息をのむ。
裁判でハンナの過去が明るみになるにつれて、マイケルはふたりの人生を大きく変えることになるある重大な“秘密”に気づくのだった。
そして、ハンナは終身刑を言い渡される。・・・


(C)Melinda Sue Gordon/TWC 2008


「この映画のテーマは何か?」と聞かれたら、とても一言では答えられない。
「愛」「正義」「罪悪感」「恥」「世代」・・・いろいろなテーマが実に複雑にからみあって襲いかかってくる。
しかしだからといって、複雑怪奇な映画でもない。
何年たっても変わることのないマイケルのハンナへの“愛”だけは、いつも語り手(“朗読者”)であるマイケルとともにあるからだ。
そういう意味では、この映画は究極の“愛”を描いていると思う。

ストーリの鍵となるのが、マイケルのみが知りうるハンナの“秘密”。
それによって彼は彼女を救うことができただろう。しかし、彼はそれを誰にも告げることなく胸にしまいこむ。
罪を背負ってでも「何か」を守り通そうとした彼女のため。
裁く側の人間になった自分のため。
戦後ドイツの「正義」のため。
その“秘密”を、墓場まで持っていこうと誓ったその日から、マイケル自身もまた生きながら死を選ぶことになる。
彼女との出会い、わずかひと夏の恋は、マイケルに一生逃れられないものを残すことになるのだった。

また、映画の重要なシーンとなるのが、戦犯の裁判だ。
戦後何十年たっても、まるで昨日のことのように戦犯が裁かれるということに対し、日本人としてまず驚く。
しかし、収容所で働いていた8000人のうち、有罪判決を受けたのはわずか19人。(記憶が確かなら映画の中ではこう言っていた)それだけ、“時間を遡って”人を裁くということは難しい。
さらに、裁きは「現在の法律」ではなく「当時の法律」によって裁かれるべき、という論理も当然ある。
また、マイケルのクラスメートの学生も言っていたが、「戦争中はヨーロッパだけで何千という収容所が存在していた。なぜ彼ら(アウシュビッツ関係者)だけが裁かれるのか?殺されたのがユダヤ人だからか?加害者がナチスドイツだからか?」
ハンナが裁かれるきっかけになったのも、あるユダヤ人の生き残り少女が書いた一冊の本だった、つまり偶然起こり得たこと。
裁かれる者がいる裏で、裁かれずに平穏に一生を終える人間もいる。その不可解さ。

本当の「正義」とは何か、が頭のなかでぐるぐると回りはじめる。
そしてもちろん、結論は出ない。

獄中で20年を過ごしたハンナが、再会したマイケルに言う。
"It doesn't matter what I feel or what I think. Dead is still dead."
(私がどう感じるか、考えるかなんてどうでもいいの。死んだ人は戻ってこない)

ハンナがはっきりと過去の罪に向き合い、償いの気持ちを口にしたとき、
それは無常にも彼女自身の死を意味することになった。



*日本公開は6月19日から。


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