Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

介護のことは介護した人にしかわからない。

2020-10-18 01:06:17 | ニッポン生活編

さよちゃんの母さんが亡くなってちょうど7週。今日は四十九日の法要だった。

家族だけでとり行うということだったので、無事にあちらの世界に行かれたであろうことに安堵しつつ、私は家で静かに手を合わせていた。

亡くなったのは本当に急なことで彼女もすぐには事態が呑み込めていなかったうえ、これからは快適に介護生活を送れるようにと建て替え中の新居ももうすぐ完成するところだったので、彼女の心に開いた穴はとてつもなく大きかった。

母さんのために一日のスケジュールを組んでいた人だったので、亡くなった後はいきなりすべてが自分の時間になってしまって、すべてを吹っ切るように彼女はとにかく走りだした。

もともと全国のマラソンを転戦するようなランナーだった彼女。いったんそうと決めたらストイックにやり通す彼女の体はみるみると引き締まっていき、「すでに8キロも落とした」といって笑っていた。

どんなつらいことも、嫌なことも、すべてひとり胸の奥にしまって前に進んでいく彼女の姿にいったいどれほど勇気づけられただろう。

時をほぼ同じくして、高校卒業以来離れていた実家に戻るという同じ経験をした私たちには、言い尽くせないほどの共通項があり”シンパシー”があった。

介護やら田舎生活やらコロナやらのストレスで、ガス抜きをしたくなったらどちらからともなく誘い合い、人生を語り合いながら一緒に飲んだ。

何しろ徒歩100メートルの距離に住んでいるのだから、こんな便利なことはない。

 

そして今日も、一連の法要が終わり一区切りついたさよちゃんが、夕方遅くお供え物のおすそ分けを持って我が家にやってきた。

「お疲れさま。今日は飲もう!」

そう言って、彼女をあげてまずは乾杯。とにかくがんばった。よくやった。

兄が二人いて近所には兄嫁もいるというのに、なぜか末っ子の彼女が喪主をし、一連の法事も全て取り仕切ったという。

こういう法事のときになると家族の”事情”が透けて見えるのはどの家庭も同じらしい。

 

お酒がすすむにつれ、さよちゃんはめったに吐かない心の内を吐露し始めた。

「今日法事の席で、姪っ子に”さよおばちゃんは、おばあちゃんのことを2年しか介護してないでえ。うちの母さん(兄嫁)は20年も面倒みよった”と言われた」と。

心の底からさびしかったと。思わず言い返そうかと思ったけれどやめた、と。

姪が言うということは、家族(兄嫁)がそう家で言っている、ということ。

離れて住んでいて、たまに様子を見に来るのを「介護」と呼ぶのならそれでもいい。でも2年半、一緒の家に住んで、一日中母親を中心に一日が回るという生活を続けるということがどれほどの重たさなのか、やったものではないとわからぬ。

食事に関わる一切のこと(買い物、献立、料理、後始末)、寝床や下の世話、ヘルパーや介護施設との連携&連絡・・・本当に目が回るほど忙しく自分のことなどしていられないのが介護と言うもの。

それを立派にやり、たまには外に連れ出してあげていたさよちゃんを、私は心の底から尊敬していた。私にはとてもまねできない。(私なんかすぐ音を上げるし、実際ケンカばかりしている。)

言い返そうとしたその言葉を飲み込んだ彼女の、その時の切なさが胸にせまる。

彼女は、そういう人なのだ。

「私もつらいこといっぱいあるけど、さよちゃんが近所にいてくれてどんなに助かったか。本当にありがとう。」

心からそうお礼を言って、また飲んだ。

たくさん飲んで、たくさん笑って、たくさん泣いた夜だった。

 

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神山探訪

2020-10-03 23:58:52 | ニッポン生活編

大学剣道部の2年後輩で、現在アメリカ・オレゴン州ポートランドで住んでいるY代が、母親の実家である神山町(徳島市から車で約30分の山間の町)に長期帰省中だという。

9月のある日に突然、約30年ぶりに彼女から「神山にいます」とメールをもらってびっくり。懐かしさと古民家見たさにみんなで神山に飛んで行った。

今年大学に入るはずだった彼女の娘さんも、9月に合流。コロナの影響で授業もままならないのなら、いっそのこと入学を一年延ばしてその間日本でさまざまな経験を積むことにしたのだそうだ。

この時間を利用して祖父母が住んでいた神山の古民家をふたりでせっせと改装しており、改装後は一部を部屋貸しし、1階部分は期間貸しのサテライトオフィスとして企業に利用してもらおうと話が進んでいる。

大学時代から行動力とガッツのあったY代。3月に神山に入ってからすでに地元の人たちとさまざまな交流を深めてビジネスの話も進んでいて、感心しきり。

神山は長年の地道な企業誘致が実を結んで、都心企業のサテライトオフィスやアーティスト・ビレッジ建設などが進む徳島でも注目のユニークな場所。

空気はいいし、自然にも囲まれ、ネット環境もいい。静かに仕事をするにはもってこいの環境だ。しかも賃料は都会と比べるとただみたいなもの。田舎のノスタルジーも味わえる。

企業だけではない。古民家をうまくリノベーションして、都会から移住する若い夫婦に貸し出す方策も積極的にとられており、その費用の一部を町が支援している。すでに多くの移住者が第2の人生をここでスタートさせていると聞く。

徳島市内にも住み手のいない空き屋がゴロゴロしていて防犯上も街の景観上も悪影響を及ぼしているのだが、特に何の方策もとられておらず腹立たしい限り。

神山を見習って市として何らかの策を講じてほしいものだ、とつくづく思う。

さておき。

彼女の「古民家」は実に趣深かった。

 

 

玄関でまったりするGORO。やはり柴犬には古民家がよく似合う。

そして・・・畳が気持ちよかったのか爆睡

 

 

 この景色に癒される

2階からは町が一望できる。

 

次に訪れたときにはどうなっているかな?

11月にはほぼリノベーションが完成するというから楽しみだ。

 

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