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婦人会会長時代
このブログにもたびたび登場している私のおばぁちゃん(父の母)が、つい先日99歳の誕生日を迎えた。
20年ほど前におじいちゃんを亡くしてからずっと一人暮らし。普段の生活は誰の手も借りず、借りようとせず、自分のことはすべて自分でやっていることが自慢でありそれが生きがいになっている。
しかし2月には少し体調を崩し、そのときはさすがにあわてたと先日帰省したとき母が言っていた。
「もういいかげん一緒に暮らしたほうがいい」と説得を試みたが、「自分のことは自分でする」と言って頑なに断られたそうだ。今まで自分のリズムでやってきたのに、息子夫婦とはいえよそ様がそこに入ってくるとかえって気を遣いおかしくなるのだろう。その気持ちも痛いほどわかる。
この間、Jazzイベントに出演するために帰省していたときのこと。
我が家にはいつものように音楽仲間たちが滞在していた。私が仲間のひとりを空港に送りに行っていて留守だったときに、家ではちょっとした事件が起こっていた。
なんでもおばぁちゃんが出かけようとして家を出たところの道路で気分が悪くなりてうずくまってしまい、通りがかりの奥さんに「あの家が息子の家なので連絡してください」と頼んで、連絡を受けた母が血相を変えて飛び出した。ただ事ではない気配に驚いて客人もみな母に続いて家を飛び出した。
幸いおばぁちゃんは大したことはなかったものの、家で休ませようと客人のひとりである超弩級の男性におんぶして帰ってもらうことにした。
そのとき、なんとおばぁちゃんは大層あわてて「ええからええから」と遠慮しまくりこう言ったそうだ。
「男の人におぶってもらうなんて生まれて初めて」。
遠慮していたのではなく、恥らっていたのだ。しかも、そんな状況でも体を預けようとはせず必死で離そうとする姿に、一同目が点になったそうだ。
(かなり興奮したのか、それからもしばらくは「男の人におんぶしてもらった」とうれしそうに話していた。)
幸いにも客人の中に看護婦さんがいたので彼女に脈を診てもらい、安静にして事なきをえたのだが、その彼女は「それにしてもこんなにキレイに支度して・・」と驚いていた。98歳にして完璧にお化粧をほどこし、少しヒールのある靴をはいて近所にお買い物に出かけようとしたその姿は実にあっぱれだ。
両親の家とおばぁちゃんの家は目と鼻の先なので、母は毎日それとなく様子を見に行っている。
ある日、朝早く見に行ったところおばぁちゃんはまだ起きたばかりで、“お顔”も“おぐし”も整える前だった。母の顔をみたとたん、おばぁちゃんは身支度ができていないことにうろたえ慌て、それ以来、母も遠慮して朝一番には行かないようになったという。
何十年も知っている嫁に対しても寝起きの姿をみせることにうろたえるその心意気に、ふたりで感服しきりだった。
「朝素顔でいると(亡くなった)おじいさんに怒られた」というから、明治の女の心意気は良くも悪くも男に作られてきたのだろう。田舎に帰るといつもすっぴんでジャージの私に口を酸っぱくしてよくこう言ったものだった。
「おとこはんは脂粉(注:おしろいのこと)の匂いに寄ってくるんよ。もっときれいにして町歩きないよ」
結婚した今になっても「毎日きれいにしといたらだんなさんも喜ぶけん」と説教される。
女としては到底かなわない。
来年は100歳。
誰の世話にもならず100歳というのは、誇れることだと思う。
がんばればぁちゃん。