Life in America ~JAPAN編

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悪夢の終焉と、次なる試練の始まり。~大統領選挙雑感

2020-11-08 23:41:11 | アメリカ生活雑感

 

4年に一度やってくる「大統領選鬱」

アメリカの大統領選は、エンターテイメントのようなもの。

民が二つに分かれて2年以上の長い戦いに明け暮れ、疲れ果て、そして最後は花火がど~んと打ちあがって終わる、そんな感じ。

今回のこの馬鹿げたショーを、アメリカ国内で見ずにすんだことにまずほっとしている。

これまでのようにアメリカで体験していたら、今回こそ正気ではいられなかったと思う。

選挙権のない私たちでさえそうなのだから、国民はさぞかし大変だろう。でもそれもこれもひっくるめて全てがショーなのだから、慣れっこなのかもしれない。

投票から4日目でようやく決着(数字の上での)が着くという異例尽くしの大統領選は、今もなお波乱含みだ。来年1月に無事に就任式が行われるかどうかも、今のこの状態では予想すらできない。

トランプという男は何をやってくるかわからない、テロリストのようなやつだからだ。

普通の神経では予想できないことを平気でやってくる。逆に言うと、だからこそこれほどの熱狂的信者を集めたとも言える。

今まで表だって出てこなかった”普通の神経ではない”半数近い輩が、もっとすごい奴に覚醒されてしまった。モンスター映画みたいに。

日本時間11月7日午前1時半すぎ速報が入ると同時に「長い悪夢はおしまいだ」というSNSの投稿があふれ出した

 

メディアが支配した大統領選

トランプは負け惜しみで開口一番こう吠えた。

「これは、メディアが作り上げた選挙結果だ」と。

ある意味、これは当たっている。アメリカも日本も、政治はメディアの報道に振り回され、一般市民はそれを真に受けてしまうからだ。

アメリカのメインTV局は、これまでさんざん「フェイクニュース」呼ばわりされ罵詈雑言をツィートされ続けた恨みから、もちろん「反トランプ」で結束している。

報道もいつも以上に民主寄りで、バイデン氏を支持するというよりはトランプを引きずり下ろすことで一つになっている感があった。現にバイデン氏に都合の悪いニュースは、表だって報じずにいた。

選挙戦も終盤に差し掛かったころ、バイデン側にとって都合の悪い爆弾ニュースが流れ始めた。

バイデン氏の次男ハンターが、ウクライナのエネルギー会社の取締役に就任して多額の給与を受け取っていたことが判明。それだけなら特に問題にはならないのだが、その期間のほとんどが父親であるバイデンが副大統領だった時期と重なる。

「父親の地位を利用して口利きをした報酬を受け取っていた」との疑われても仕方ない。

ハンターは同時期に、中国関連の投資会社の役員も務めており、これは父親が訪中したときに同行した時期と重なる。「父親とは関係ない」とは言い切れないだろう。

しかし、アメリカの主要メディアは一部を除いてこの”爆弾ニュース”をスルーした。明らかにバイデン擁護に動いたのだ。

その理由は4年前の大統領選。投票日約1か月前にヒラリーの「個人メール事件」が発覚したときの主要メディアの報道で、それまで優勢だったヒラリーはの勢いは急に陰りを見せトランプにまさかの逆転勝利を許してしまった。

この苦すぎる経験をふまえ、今回メディアは「バイデン擁護網」を敷いて慎重にスキャンダルを抑え込んで臨んだといえる。

そんなメディアにトランプは「徹底的にこのウクライナ事件を調べろ!」と一層牙をむいた。

しかし、このウクライナ事件は皮肉にも自分の首を絞めることになる。ウクライナ当局に「ハンターと当該企業との関係を捜査しろ、さもなくばアメリカはウクライナへの支援を止める」と迫ったことが判明。

相手候補のスキャンダルを暴くために大統領の地位を利用したという恐喝罪で、弾劾裁判にまで発展した。

共和党が過半数を占める上院でこの弾劾裁判は否決されたが、命拾いしたバイデンに対するトランプ信者たちの怒りはまるでハリケーンの渦のごとく投票日に向けて大きくうなり続けた。

隠れトランプ票を入れてもバイデン氏が一定の差をつけて勝利するとみられていた選挙がここまでもつれ込んだのも、最後の1か月のトランプ側のなりふり構わない「ウソでもなんでもありキャンペーン」が一定層に熱狂的に受け入れられたからだった。

 

8年間の”黒人大統領”の揺り戻し

コロナでの失策による22万人の死者、あからさまな人種差別問題とそれをあおる言動、サイエンスを無視した根拠のない発言、パリ協定からの脱退宣言、不法移民入国家族から子供たちを引き離して監禁する非人道的行為、国境への壁建設・・・と身の毛もよだつような傍若無人ぶりを繰り返し、それでも自分を正当化し美化するモンスター。

州法に基づいてこれまで粛々と行われてきた郵便投票を、自分が不利となると「不正だ」と根拠なく息巻き、保守系「FOXニュース」の垂れ流す陰謀説やフェイクニュースを平気でツィートし続ける卑怯者。

これが日本だったら、武士道の風上にも置けぬ。切腹ものだ。

それでもアメリカの半分はこれからのさらなる4年間を託そうとした。その事実にもまた、震撼する。

その理由はなぜなのか? 

一連の流れの始まりは2016年、トランプ大統領が生まれたあのときだった。

8年もの間、世界から一目置かれノーベル平和賞まで受賞してしまった”黒人大統領”に対する、白人主義者たちの口には出せない憎しみが、次期大統領候補ヒラリー・クリントンといういけ好かない女性に向けられた。

ヒラリーと最後まで民主党候補者指名で争った左派のバーニー・サンダース氏は、金まみれの”政治屋”にアメリカを託すことに絶望していた若者を中心に絶大な支持を得ていた。

にもかかわらず、その”あまりにもクリーンで正統すぎる”信条と、企業からの資金献金に頼らない独自のキャンペーンと若者からの圧倒的支持に恐れた民主党幹部たちが、蜜月関係にある主要メディアをおさえてバーニーの露出を控えさせ、支持の拡大を防いだという過去がある。

バーニーの支持者たちはこのしくみに怒りを爆発させたのは言うまでもない。

「メディアに作られたヒラリーをアメリカの歴史で最初の女性大統領にさせまじ」と、彼女に票を入れるくらいなら棄権するか、もしくは腹いせに(どうせ負ける)トランプに入れてやろう、という動きにつながったことは確かだ。

今回、2020年の民主党候補選びにおいても、バーニー氏は直前まで人気を凌駕しておりほとんと指名を勝ち取りかけていた。にもかかわらず、またもら民主党内から足をすくわれた。

「極左のバーニーでは民主党はトランプに勝てない」と決めつけたのだ。

多くの民主党幹部がバイデン支持を表明し、バーニーは自ら指名争いから身を引かざるを得なかった。

ただ、今回は4年前の轍を踏まぬようバイデン側も「バーニー氏と手を携える」ことを公言し、バーニーも「トランプから政権を奪回するためにもバイデン氏に投票を」と早い時期に呼びかけた。

 

「政治屋」 VS 「ならず者」の戦い

バイデンはある種、運のいい人である。

今回選挙で勝てたのは、ひとえに過去の過ちを犯さないように陣営がしっかりと対策をたてていたこと、そしてコロナの影響で民主党支持者の多くが投票所で並ばずに早くに郵便投票をすませることができたおかげだ。

本当の闘いはむしろこれから。

バイデン政権がすぐに目に見える成果をあげなければ、中間選挙でまたアメリカは真っ赤に色づくだろう。

勝って兜の尾を閉めろ。

さぁ、ショーは終わった。

グッドラック、アメリカ。

 

 

※以下、バイデン氏当確の瞬間からSNSのタイムラインに流れ出した印象的なpostから抜粋。

”ジミー・カーター第39代大統領(民主党:96歳)は、生きて再びジョージア州がブルー(民主党)に変わったのを見届けた”

南部ジョージア州は共和党の牙城。1992年以来一度も大統領選で民主党候補が勝つことはなかった。ジョージア州出身のカーター氏はこの歴史的瞬間を生きて見届けた。

 

二人の勝利を天の上から見届けた”エンジェル”4人。出身州はいずれも民主党の勝利となった。

左から、イライジャ・カミングス Elijah Eugene Cummings (メリーランド州選出下院議員・民主党。公民権運動の推進に尽力した。トランプ政権のロシア疑惑や脱税疑惑などを厳しく追及し、真っ向から対決した。2019年10月に68歳で没)、ジョン・マケイン John McCain(アリゾナ州選出上院議員・共和党。2008年の大統領選挙でオバマ氏と激しく争って敗北したが、党派を超えて”正義の人”と呼ばれた。トランプ政権を激しく非難したことでも知られる。2018年8月に81歳で没)、ジョン・ルイス John Robert Lewis (ジョージア州選出下院議員・民主党。公民権運動活動家。1963年にキング牧師らと「ワシントン大行進」に参加した。2020年7月80歳で没)、ルース・ベイダー・ギンズバーグ Ruth Bader Ginsburg(1993年から27年間にわたりアメリカ連邦最高裁判事を務めたリベラル派判事。特に妊娠中絶など女性の権利に対して進歩的だった。2020年9月に87歳で没。※大統領選挙の約1ヶ月半前の死去に際して、新大統領就任までは自身の後任人事が行わないよう言い残していたが、トランプは保守派のエイミー・バレット後任として指名するという暴挙に出た。)

 

「46代大統領と47代大統領」というかなり気の早い投稿も。

 

 

Comments (2)
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