Pちゃんがこだわったもののひとつが「ワーキング・テーブル」。
これからは自分の仕事部屋で邪魔されずに心ゆくまで仕事したい、かどうかは知らないが、その一心でいろいろ下見を重ねた結果大きなワーキングテーブル&チェアを購入、先日雪の中をやっとこさ運んできた。
しかし!この重いことといったら、まじしゃれんならん。
ソリッド・ウッド(無垢)製なので、まるで石のようでびくとも動かない。
このまま永遠にガレージで眠ってくれてくれればいいのに・・と思っていたがそうもいかずついにこの日がやってきた。やっと訪れた週末、Pちゃんがごそごそし始めた。このクソ重いセットを無謀にも2階に運び込もうというのだ。もちろん、どう考えても私には無理。前回のキャビネット事件からというもの、Pちゃんも少し慎重になっている。
「ご近所に助っ人を頼もう」
(こんなあほみたいに大変な仕事、私ならいややしよう頼まんわ・・
)
でも、Pちゃんはこういうときには一目散。迷わず行動に出た。
「助っ人が見つかったよ~。首まで刺青入ったお兄ちゃん!」
「・・(すばらしすぎて無言)・・」
かくして登場したがビルというお向かいさん。年のころなら30代前半くらい。家の前で雪かきをしていたところをPちゃんにスカウトされたのだ。
ふたりでガレージにある3ピース(L字型机とハッチ)をひーふーと持ち上げ、まずは玄関に。これから難関の“階段のぼり”だ。
ビルはたくみにPちゃんに指示を出しながら、下の重いパートを持ってゆっくりと階段を上がっていく。上がりきったらあとは毛布に乗せて床を滑らせるのみ。やった~!!
しかし。
部屋の前まで行って思わぬ事件が起こる。机の幅がドアと寸分たがわず同じなのでドアがつっかえて入らない。もう絶対に無理。
(また悪夢か・・・)とPちゃんと私が青くなった瞬間、「ドアをはずそう」とビル。Pちゃんと一緒にさっさとドライバーでドアをとりはずしてくれた。そしてようやく、机は仕事部屋へ収まった。
「ハレルヤ~~
」とPちゃん。
「ありがとう!!(将来)ここから引っ越すことなんか今は考えたあない気分やわ」と私。
「ノープロブレム!」といいながらビルは帰っていった。おまけに、傷ついた壁を修理するための補修財も家から持ってきてくれた。何と彼はプロの塗装屋だったのだ!ああ、こういうとき頼りになるのはこういう屈強なガ・テンなひとなのだわ
かくして何ごともないようにおさまった机。
* * * * * そして数日後・・・。 * * * * * * *
机が終わったら、今度はテレビのことで頭がいっぱいのPちゃん。
いろいろ研究&検討した結果、旧式のフラット画面テレビ(いわゆるぶ厚いタイプ)を安く買うことに決定。今あわてて1000ドルは下らない壁掛けタイプを買うより2009年に総デジタルになるまで旧式で様子を見ようという判断だ。
さっそくインターネットで売りたし買いたしサイトのCraigslistをチェックしてみると、なんとご近所でMoving Saleをしているご家族がJVCの32インチフラットTVを売りに出していた。しかもなんと150ドル(約1.7万円)。
すかさずメールして、Pちゃんと一緒に今晩見に行き気に入ったらその場で買います、という約束を取り付けた。
夕方、ふたりでお宅に伺う。売主は来月インドに帰る予定というインド人の4人家族で家の中の物をすべて処分しているという。リビングの隅にどで~んと鎮座まします32型テレビ。コンディションもよさそうだ。アナログ対応なのでアンテナで普通にチャンネルを見ることができるうえ、デジタルチューナーも内蔵しているので将来のデジタル化にも対応できる。即決め。
しかしモンダイはその大きさ。普通のセダン車には絶対入らない。
「明日の朝、トラックを借りて取りに来るしかないなぁ」。デポジットを払って今日のところは退散することに。
しかしどうしてもあきらめきれないのがPちゃん。その日、完結しないと気がすまないのはご存知のとおり。「誰かトラック持ってないかなぁ。どうせレンタカー代払うんだったらその人にお金払ってすぐに持ち帰ったほうがいいよな・・」とぶつぶつ。
そして、帰宅したPちゃんはひらめいた!
「そうだ、ビルに頼もう!子供もいるしきっと彼ならでかい車を持ってるにちがいない」
ふたりでスパイ。にらんだとおり車はJeepだった。
正直、この時間(夜7時半過ぎ)に「車貸して」は非常識だよなぁ、と私はどん引き。でもPちゃんは真剣だ。まぁ、この間のこともあるしお礼がてらにワインを持ってふたりでご挨拶にいく→その流れでお願いしてみる、というのはどうだろうと私が提案。こうなったら恥もなにもかなぐり捨てよう。かくしてビルの家を襲撃。
美人の快活な奥さんジェニーが明るく出迎えてくれる。でかい犬も飛びついてきた。(ついでにPちゃんの靴にちびってしまった
)
「この間は本当にありがとう。おかげで助かったよ。これはお礼のしるし」といってまずPちゃんがワインを差し出す。ビルも奥さんもうれしそうで、ほっとする。
「・・・実は今日はもうひとつお願いがあってきたんだけど・・」とPちゃんがテレビ獲得までの長~い話を聞かせる。この人、結論にたどりつくまでが長い。まるでおばはんみたい。
「・・・で、30分ほどお宅の車を拝借させてもらえないだろうか?」
驚いたことに、ビルは何のためらいもなく「いいぜ」とOK。しかも彼が運転してくれるという。なんといういいやつなんだ、ビル!
あわてて家に戻り、さっきのオタクに電話を入れ、ビルの運転で再度出撃。
ビルは黙々と巨大テレビをPちゃんと一緒にかかえてJeepに積みこみ、うちのリビングにまで運んびこんでくれた。差し出したガス代も水臭いぜ、と受け取ってくれなかったビル。なんていいやつなんだ、ビルよ!
そして、待望のテレビが我が家にやってきた。
明日は衛星放送がやってくる!
(つづく・・)