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通学途中のひとコマ。街はすっかり秋景色。
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今期、大学で学んでいるもうひとつの科目が、“Early Childhood Development(幼児発達学)”。
ここでいうEarly Childhoodというのは、「生命誕生の瞬間から、8歳までの子ども」のことをさしている。
これをさらに、1)産まれるまで、2)Infancy(0~2歳)、3)Preschool(2~5歳)4)Primary years(6~8歳)の4段階に分け、それぞれの段階における身体、知覚、感情、言語の各発達について詳しく学んでいく。
授業は週に一度(水曜)、約2時間。
クラスは25人(うち男性一人)、ほとんどがカレッジ・リクルート、いわゆるハイスクール卒業したばかりの18~19歳。そのほか、働きながら次のキャリアのためにカレッジで学び直している人たち(22~25歳前後)や、私のように個人的興味で学んでいる人まで、いろいろだ。
このクラス、何が大変って宿題の多いこと!
翌週学ぶ項目のテキストを読んでいくことはもちろん、毎週Observation(観察)記録を提出しなければならない。
まず第1週は、「子どもの観察記録を12例書いてくること」だった。
近所に小さい子がいないので、見つけるのに四苦八苦。夕方家の前で遊んでいる子どもを観察したり、挙句の果てには近所のチャイルドケアセンターにお願いして、遊んでいる子どもたちを観察させてもらったり。
2週目は「違った観察手法での観察記録」
同じ子どもを、10分ごとに6回(1時間)観察する手法と、30分間実況中継のように書き続ける手法、2種類のレポートを提出。
3週目は「出産経験のある人への取材およびレポート」
1990年以前、以後にそれぞれ出産した人に、妊娠時のケアや出産の手法、仕事への復帰時期などについて詳細をインタビュー。90年前後では、prenatal care(妊婦・胎児ケア)などでどのような違いが見られるかを探るのが目的。
4週目からは12週目(クラス終了)までは毎週、幼児の観察記録が必修となった。
4~7週は、「infant(3ヶ月~30ヶ月)」
8~11週は、「Preschooler」(30ヶ月~5歳)
12週は、「School Age Child」(5歳~8歳)
それぞれ、身体、行動、言語という項目についてどんな小さな事柄もつぶさに観察して記録していかねばならないのだが、それがはじめは苦痛でたまらなかった。
でも何度か続けていくうちに、テキストだけではわからなかった事柄が実物を見て実感できるようになり、だんだん楽しくなってきた。
また、幸いにも日本人の友人が3人のお子さんを持つ友だちを紹介してくれ、(しかもこの子たちは見事にこの3段階に合致する!)その方も快く私の「観察対象」を引き受けてくださって大助かり。
そのうえ、人見知りのない超アクティブな性格の子たちで私にとっても観察のし甲斐があるので、近頃では私も会って遊ぶのが楽しみになってきた。
そんなこんなで、毎週火曜日の夜にはテンパっている私。
でも、この数ヶ月で本当に多くのことを学ぶことが出来た。
そもそも私がこのクラスを取ったのには二つの理由があった。
ひとつは、子育てや教育関連の記事を書くときの、専門知識のバックアップが必要だと感じていたこと、そしてもうひとつは、Pちゃんだ。
彼には、子ども時代のトラウマがあるという。
1歳にもならない頃に実の父親は家を出て行き、そのあとは働きに出た母親の替わりにその母(お祖母ちゃん)の元で、“邪魔にならないように”ひっそりと過ごした幼少時代。しかも、母親はいつもヒステリックでPちゃんは叱られおびえてばかりいたという。
彼が今でも自分に妙に卑屈だったり、何をやっても自信が持てなかったり、人の言動に過剰反応する(傷つきやすい)ということの裏には、この幼少期が大きく影響しているのは間違いない。
それがいかに心の中に深く根を下ろしているのかをちゃんと理解し、対処のヒントを得たかった。
そして、学べば学ぶほどそれが痛いほどわかってきた。
「幼児の脳発達に一番大きく影響を及ぼすのは、特別な意味を持つ大人(親や世話をしてくれる人)とどれほど感情的な絆をもてるかどうかである。親(またはは世話をしてくれる人)から温かく、好意的なケアを受けた赤ちゃんは、その人たちを信じるようになる。その結果生まれる絆は、文字通り人間の脳をストレスやトラウマから守る役割を果たす」(Gunnar,1996)
「虐待され無視された赤ちゃん、欲求に反応してくれる保育者がいない赤ちゃん、または何かの理由で世の中が信頼するに足りないと感じる赤ちゃんは、感情の葛藤をポジティブに解決することが出来ない」(Erikson)
つまり「3歳までに大人からどれほどの愛情を受け、どれだけ信頼関係を気づけるか」が、その人のその後の性格形成や生き方に大きく影響してくるという。
一人歩きを始めた赤ちゃんはよちよちと「冒険」を始めるが、そこには信頼できる親の存在が必ず必要だ。
歩いては振り返り、親の存在を確かめてはまた歩き出す。
言い換えれば、「信頼できる確かな存在や戻れる場所があるという安心感が、その子を未知の世界へ勇気を持って羽ばたかせることができる」ということだ。
そんなことを日々いろいろ考えていると、近頃では誰を見てもこの人はどんな幼少期を過ごしたのだろう、とまず考えてしまう。
よく笑う人、会話が跳ね返ってくる人、滅多なことではたじろがない人、人の目を見ないでしゃべる人、人の話を聞かない人、言うことがいちいちネガティブな人、人一倍がんばっているのに「自分はだめだ」という思いにとらわれている人・・・
「親の顔が見たいもんだ」と昔の人はよく言ったものだが、これは良くも悪くも、的を射ている。
どんな性格も、その人が幼い頃に親や保育者とどんな信頼関係を築けたかどうかでほぼ決定付けられるのだ。
改めて、しみじみと親の存在の重さを感じる。