①Steve Howe
今回の特集を組むにあたって何か面白いカヴァーはないかいなぁ... とYouTubeで色々と検索していた時に偶然見つけたのがコレ。あのスティーヴ・ハウが「ウォーク・ドント・ラン」演ってんのか... 私は好奇心にはやる心を抑えて早速試聴を始めたのだが、スパニッシュなムード横溢のイントロに続いてエイジアで耳に馴染んだあのギターの音が響き渡った瞬間、“おぉ、コレめっちゃエエわ!!!” と快哉を叫んでいた。私にとってのスティーヴ・ハウは、難解なイエスではなくポップなエイジアでの数々の名演が脳に刷り込まれているので、「ドント・クライ」を想わせる大仰なソロや彼お得意のスパニッシュ・アレンジ(←絶妙のタイミングで鳴り響くカスタネットがたまらんたまらん...)が出てくるたびに大コーフンしてしまう(≧▽≦) 大袈裟に聞こえるかもしれないが、「ウォーク・ドント・ラン」という曲が身悶えして歓喜に打ち震えている... といった感じの、名旋律・名アレンジ・名演奏と三拍子揃ったスーパーウルトラ大名演だ(^o^)丿 こんなカッコイイ「ウォーク・ドント・ラン」に巡り合えただけでも今回の特集を思いついた甲斐があったというものだ。
Steve Howe - Walk Don´t Run
②Chet Atkins
ビートルズ・ファンである私にとってチェット・アトキンスという名前は “ジョージ・ハリスンに大きな影響を与えたギタリスト” として記憶にインプットされてはいたが、チャック・ベリーやリトル・リチャードのようにラジオでかかることは滅多になく、かなり長い間 “「ビートルズ・フォー・セール」で聴けるカントリー・フレイバーたっぷりの奏法=チェット・アトキンス奏法” という活字情報を鵜呑みにして何となく分かった気になっていた。やがて21世紀に入ってベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」をアトキンスが演っていると知り、その頃始めたばかりのeBayで$5.00ポッキリで手に入れたのが「ウォーク・ドント・ラン」入りの名盤「ハイファイ・イン・フォーカス」(1958年)だった。そのサウンドは耳に馴染んだベンチャーズともオリジナルのジョニー・スミスとも違うユニークなもので、ミディアム・テンポで軽やかにスイングするその変幻自在のフィンガー・ピッキングにすっかり魅了されてしまった。因みにドンとボブはこのアトキンス・ヴァージョンを聴いてすっかり気に入り、ベンチャーズでも録音しようと思い立ったのだという。まさにベンチャーズの原点とでも言うべき演奏だ。
Chet Atkins - Walk, Don't Run
③Neil Andersson
何年か前にジプシー・ジャズにハマっていた頃、ジャンゴ・ラインハルト屈指の名曲「ドゥース・アンビアンス」が入っているCDを手当たり次第に買いまくっていた時に知ったのがこのニール・アンダーソンというギタリスト。アメリカ北西部出身ということもあってか本場ヨーロッパの王道マヌーシュ・ギタリスト達とは又違ったユニークな音楽性の持ち主で、ジャンゴの曲を演りながらジョージ・シアリング・クインテットのような軽妙洒脱な味わいも感じさせて中々面白い盤だった。そんな彼が新たに結成したマリブ・マヌーシュというプロジェクトがリリースしたのが「サーフ・ジャズ」というアルバムで、ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」やベンチャーズの「アパッチ」「テルスター」「パイプライン」そしてこの「ウォーク・ドント・ラン」といった一連のサーフィン・ミュージックをリラクセイション溢れるスインギーなプレイでジャズ化しており、エレキ・インストとマヌーシュ・スイングを絶妙にブレンドさせたノリの良い演奏が楽しめる。カタイことは抜きにして60'sの名曲を一緒に楽しみましょうや!といった感じの親しみやすいヴァージョンだ。
マリブ・マヌーシュ
④Johnny Smith
ベンチャーズ・クラシックスとして知られている曲の多くはスタンダード・ナンバーや他アーティストの楽曲をカヴァーしたものなのだが、ベンチャーズ・ヴァージョンのインパクトがあまりにも強すぎて、ついつい彼らのオリジナル曲だと勘違いしてしまうことがよくある。この「ウォーク・ドント・ラン」という曲も実はジョニー・スミスの演奏がオリジナル。何でもジャズ・スタンダードの「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」のコード進行を借用して作ったらしい(←オイゲン・キケロの「ソフトリー」がもろに「ウォーク・ドント・ラン」そっくりなのはそのせいなんだろう...)。
ジョニー・スミスは私が大好きなジャズ・ギタリストの一人で、今から10年ほど前に買った彼のアルバム「イン・ア・センチメンタル・ムード」の中にたまたまこの曲が入っており、 “何でジョニー・スミスがベンチャーズのカヴァーやってんねん???” と不思議に思ったのだが、1954年に出たジョニー・スミス盤に1960年のベンチャーズのヒット曲が入っているというのはどう考えてもおかしい。慌ててベンチャーズ盤のクレジットを見ると、何と作曲者はジョニー・スミスになっているではないか! いやはやまったく、目からウロコとはこのことだ。
両ヴァージョンを比べてみると、ベンチャーズが8ビートにアレンジしてアップテンポで演奏しているのに対し、ジョニスミの方は実に落ち着いたソフトな演奏で、ハラハラと舞い落ちる木の葉のようなメロウな音色で非常に繊細な表現をしているのが大きな特徴だ。彼の幽玄な音世界で楽しむ「ウォーク・ドント・ラン」もベンチャーズとは又違った味わいがあっていいものだ。
JOHNNY SMITH
オイゲン・キケロ バッハのソフトリー サンライズ
⑤Ventures
ベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」には2種類のスタジオ・ヴァージョンが存在する。1960年のデビュー・シングル「ウォーク・ドント・ラン」(全米2位)と、サーフィン・アレンジを施した再演ヴァージョン「ウォーク・ドント・ラン'64」(全米8位)だ。前者はボブ・ボーグル(リード・ギター)、ドン・ウィルソン(リズム・ギター)、ノーキー・エドワーズ(ベース)、そしてスキップ・ムーア(ドラムス)というメンツでレコーディングされたもので、ノーキーがリード・ギターを担当しメル・テイラーがドラムを叩いている後者と聴き比べてみるとそれぞれのプレイの特徴がハッキリと聴きとれて実に面白い。私はメル・テイラーこそがベンチャーズ・サウンドの要だと思っている人間なので、スキップ・ムーアのプレイも捨て難いが(←特にあのイントロは当時としては斬新だったと思う...)どちらか一方を選べと言われればやはり後者ということになるだろう。ドン・ウィルソンのトレモロ・グリッサンド(←要するにテケテケですな...)も冴えわたっていて言うことナシだ (^o^)丿 それにしても2度もトップ10に入る大ヒットを出してもらった原作者のジョニー・スミスは印税がガッポリ入って笑いが止まらんかったやろなぁ...(-。-)y-゜゜゜
The Ventures - Walk -- Don't Run (original) - [STEREO]
The Ventures - Walk Don't Run '64
今回の特集を組むにあたって何か面白いカヴァーはないかいなぁ... とYouTubeで色々と検索していた時に偶然見つけたのがコレ。あのスティーヴ・ハウが「ウォーク・ドント・ラン」演ってんのか... 私は好奇心にはやる心を抑えて早速試聴を始めたのだが、スパニッシュなムード横溢のイントロに続いてエイジアで耳に馴染んだあのギターの音が響き渡った瞬間、“おぉ、コレめっちゃエエわ!!!” と快哉を叫んでいた。私にとってのスティーヴ・ハウは、難解なイエスではなくポップなエイジアでの数々の名演が脳に刷り込まれているので、「ドント・クライ」を想わせる大仰なソロや彼お得意のスパニッシュ・アレンジ(←絶妙のタイミングで鳴り響くカスタネットがたまらんたまらん...)が出てくるたびに大コーフンしてしまう(≧▽≦) 大袈裟に聞こえるかもしれないが、「ウォーク・ドント・ラン」という曲が身悶えして歓喜に打ち震えている... といった感じの、名旋律・名アレンジ・名演奏と三拍子揃ったスーパーウルトラ大名演だ(^o^)丿 こんなカッコイイ「ウォーク・ドント・ラン」に巡り合えただけでも今回の特集を思いついた甲斐があったというものだ。
Steve Howe - Walk Don´t Run
②Chet Atkins
ビートルズ・ファンである私にとってチェット・アトキンスという名前は “ジョージ・ハリスンに大きな影響を与えたギタリスト” として記憶にインプットされてはいたが、チャック・ベリーやリトル・リチャードのようにラジオでかかることは滅多になく、かなり長い間 “「ビートルズ・フォー・セール」で聴けるカントリー・フレイバーたっぷりの奏法=チェット・アトキンス奏法” という活字情報を鵜呑みにして何となく分かった気になっていた。やがて21世紀に入ってベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」をアトキンスが演っていると知り、その頃始めたばかりのeBayで$5.00ポッキリで手に入れたのが「ウォーク・ドント・ラン」入りの名盤「ハイファイ・イン・フォーカス」(1958年)だった。そのサウンドは耳に馴染んだベンチャーズともオリジナルのジョニー・スミスとも違うユニークなもので、ミディアム・テンポで軽やかにスイングするその変幻自在のフィンガー・ピッキングにすっかり魅了されてしまった。因みにドンとボブはこのアトキンス・ヴァージョンを聴いてすっかり気に入り、ベンチャーズでも録音しようと思い立ったのだという。まさにベンチャーズの原点とでも言うべき演奏だ。
Chet Atkins - Walk, Don't Run
③Neil Andersson
何年か前にジプシー・ジャズにハマっていた頃、ジャンゴ・ラインハルト屈指の名曲「ドゥース・アンビアンス」が入っているCDを手当たり次第に買いまくっていた時に知ったのがこのニール・アンダーソンというギタリスト。アメリカ北西部出身ということもあってか本場ヨーロッパの王道マヌーシュ・ギタリスト達とは又違ったユニークな音楽性の持ち主で、ジャンゴの曲を演りながらジョージ・シアリング・クインテットのような軽妙洒脱な味わいも感じさせて中々面白い盤だった。そんな彼が新たに結成したマリブ・マヌーシュというプロジェクトがリリースしたのが「サーフ・ジャズ」というアルバムで、ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」やベンチャーズの「アパッチ」「テルスター」「パイプライン」そしてこの「ウォーク・ドント・ラン」といった一連のサーフィン・ミュージックをリラクセイション溢れるスインギーなプレイでジャズ化しており、エレキ・インストとマヌーシュ・スイングを絶妙にブレンドさせたノリの良い演奏が楽しめる。カタイことは抜きにして60'sの名曲を一緒に楽しみましょうや!といった感じの親しみやすいヴァージョンだ。
マリブ・マヌーシュ
④Johnny Smith
ベンチャーズ・クラシックスとして知られている曲の多くはスタンダード・ナンバーや他アーティストの楽曲をカヴァーしたものなのだが、ベンチャーズ・ヴァージョンのインパクトがあまりにも強すぎて、ついつい彼らのオリジナル曲だと勘違いしてしまうことがよくある。この「ウォーク・ドント・ラン」という曲も実はジョニー・スミスの演奏がオリジナル。何でもジャズ・スタンダードの「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」のコード進行を借用して作ったらしい(←オイゲン・キケロの「ソフトリー」がもろに「ウォーク・ドント・ラン」そっくりなのはそのせいなんだろう...)。
ジョニー・スミスは私が大好きなジャズ・ギタリストの一人で、今から10年ほど前に買った彼のアルバム「イン・ア・センチメンタル・ムード」の中にたまたまこの曲が入っており、 “何でジョニー・スミスがベンチャーズのカヴァーやってんねん???” と不思議に思ったのだが、1954年に出たジョニー・スミス盤に1960年のベンチャーズのヒット曲が入っているというのはどう考えてもおかしい。慌ててベンチャーズ盤のクレジットを見ると、何と作曲者はジョニー・スミスになっているではないか! いやはやまったく、目からウロコとはこのことだ。
両ヴァージョンを比べてみると、ベンチャーズが8ビートにアレンジしてアップテンポで演奏しているのに対し、ジョニスミの方は実に落ち着いたソフトな演奏で、ハラハラと舞い落ちる木の葉のようなメロウな音色で非常に繊細な表現をしているのが大きな特徴だ。彼の幽玄な音世界で楽しむ「ウォーク・ドント・ラン」もベンチャーズとは又違った味わいがあっていいものだ。
JOHNNY SMITH
オイゲン・キケロ バッハのソフトリー サンライズ
⑤Ventures
ベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」には2種類のスタジオ・ヴァージョンが存在する。1960年のデビュー・シングル「ウォーク・ドント・ラン」(全米2位)と、サーフィン・アレンジを施した再演ヴァージョン「ウォーク・ドント・ラン'64」(全米8位)だ。前者はボブ・ボーグル(リード・ギター)、ドン・ウィルソン(リズム・ギター)、ノーキー・エドワーズ(ベース)、そしてスキップ・ムーア(ドラムス)というメンツでレコーディングされたもので、ノーキーがリード・ギターを担当しメル・テイラーがドラムを叩いている後者と聴き比べてみるとそれぞれのプレイの特徴がハッキリと聴きとれて実に面白い。私はメル・テイラーこそがベンチャーズ・サウンドの要だと思っている人間なので、スキップ・ムーアのプレイも捨て難いが(←特にあのイントロは当時としては斬新だったと思う...)どちらか一方を選べと言われればやはり後者ということになるだろう。ドン・ウィルソンのトレモロ・グリッサンド(←要するにテケテケですな...)も冴えわたっていて言うことナシだ (^o^)丿 それにしても2度もトップ10に入る大ヒットを出してもらった原作者のジョニー・スミスは印税がガッポリ入って笑いが止まらんかったやろなぁ...(-。-)y-゜゜゜
The Ventures - Walk -- Don't Run (original) - [STEREO]
The Ventures - Walk Don't Run '64
それぞれ特徴があり面白いです、やはりジョニー・スミスの元曲が良かったからいろいろな人がカバーしたんでしょうね。
それにしてもベンチャーズの演奏は相変わらずすごい。
私はその昔'64年盤を先に知ってからなんで'64年なんだろうと思ったことがあります(笑)。'60年盤もいいですよねおっしゃるようにイントロのドラムがタマランです。
Beatles for Saleのチェット・アトキンス奏法は「Word of Love」とか「Honey Don't」あたりですかね。
「ウォーク・ドント・ラン」ってホンマに名演が多いですよね。
名曲は名演を生む、の典型でしょう。
そういった隠れ名曲を見つけ出してきて自分達流にアレンジしてしまう彼らの音楽的なセンスは凄いですね。
>「Word of Love」とか「Honey Don't」あたりですかね
そうですね。あと、「みんないい娘」もちょっと・あときんすしてると思います(笑)
ビリーの「君微笑めば」を検索中、貴サイトにヒットしました。ベンチャーズ大好きオヤジにはたまらん内容ですね。ありがとうございました。
その昔、私も「ウォーク・ドント・ラン」はベンチャーズのオリジナルと思っておりました。
私がお薦めの「ウォーク・ドント・ラン」は、ドラマー大隅寿男さんの芸歴40周年記念盤です。2009年の作品でタイトルも同曲です。
ピアノのキム・ハクエイとベース生沼邦夫のトリオです。ハクエイはジョニー・スミスは面白くなかったのでベンチャーズを参考にしたと言っておりました。
ベンチャーズが取り上げていなかったら埋もれていたかもしれませんね。
どうぞよろしくお願いします。
「ウォーク・ドント・ラン」も「十番街の殺人」も「パイプライン」も
ベンチャーズはオリジナルを完全に凌駕してますよね。
コレって凄いことやと思います。
仰るようにもしベンチャーズが取り上げていなかったら
「ウォーク・ドント・ラン」は知る人ぞ知る隠れ名曲、で終わっていたでしょうね。
大隅寿男さんってどっかで聞いた名前やなぁと思って調べたら
アン・バートン盤でドラム叩いてはった人やったんですね。
ネットで探して試聴してみます。