shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

In Through The Out Door / Led Zeppelin

2018-08-05 | Led Zeppelin
 音楽ファンにとって、お気に入りのアーティストのニュー・アルバムをリアルタイムでドキドキワクワクしながら体験することに勝る喜びはない。私の場合、音楽を聴き始めたのが1975年なのでビートルズ関連ならポールの「ヴィーナス・アンド・マース」やジョージの「33&1/3」あたりからが純粋な新譜になるのだが、ゼップは前作「プレゼンス」から3年半ぶりにリリースされたこの「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」が最初にして最後の “新譜” 体験だった。
 当時の私の情報源はFMラジオがメインだったが、そんな中でも一番好きだったのが日曜深夜にFM大阪でやっていた「ナガオカ・ワールドミュージック」。小林克也氏がキャッシュ・ボックス誌の編集部に国際電話をかけ、誌面に載る前のシングルとアルバムの最新チャート・トップ20を紹介していくという、洋楽ファンにとってこれ以上のものは考えられないのではないかと思える音楽番組で、今でも英語で相槌を打つ時は “Uh-Huh?” とか “Yeah?” とかいう感じで克也氏が憑依してしまうのだが(笑)、その中の新譜アルバム紹介コーナーで強~いインパクトを受けたのがゼップの「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」だった。
 このアルバムは当時首位を突っ走っていたザ・ナックの「ゲット・ザ・ナック」を蹴落として初登場№1になり(←赤丸急上昇を “With a bullet” って言ってた...)その後イーグルスの「ザ・ロング・ラン」に取って代わられるまで10週近く首位を独走したように記憶しているが、とにかく毎週毎週 “The No.1 Album of this week is IN THROUGH THE OUT DOOR by LED ZEPPELIN” という同じフレーズが繰り返されるのを聞いて “やっぱりゼップの強さは別格やなぁ...(≧▽≦)” と感心したものだ。
 しかしこのアルバムを初めて聴いた時の印象はかなり微妙で、A面1曲目の「イン・ジ・イヴニング」こそ、そのカッコ良さに痺れまくって “このヘヴィーなグルーヴ最高や!!!” と大コーフンしたものの、A②以降はゼップらしくない曲がずらりと並び、正直 “はぁ? どーなってんの、これ??” と戸惑ってしまったというのが正直なところ。ホンキートンク調ピアノとプレスリーみたいなヴォーカルに面食らうA②「サウスバウンド・サウレズ」、フォークダンス調から一転してサンバのリズムが出てきて “何じゃいコレは???” 状態だったA③「フール・イン・ザ・レイン」、ジョーンジーのノリノリのピアノをバックにペイジがロックギターでカントリー&ウエスタンを弾き倒すという空前にして絶後のゼップ版ロカビリーA④「ホット・ドッグ」、10分を超す冗長なゼップ流シンセ・ポップB①「ケラウスランブラ」、名曲は名曲なんだけどゼップにしては甘ったるすぎるB②「オール・マイ・ラヴ」、そしてスロー・バラッド2連チャンでアルバムが終わってしまうという閉塞感にガッカリしたB③「アイム・ゴナ・クロール」と、楽曲そのものは決して悪くはないのだが、少なくとも私が彼らに求めているのはあくまでもA①のようにリフを主体としたグルーヴで聴く者を圧倒するハード&ヘヴィーなロックであって、サンバやC&Wやバラッドではない。
 良く言えば “ヴァラエティーに富んだ”、悪く言えば “まとまりのない” このアルバムの内容を “まるでフィジカル・グラフィティのよう” と評したレヴューをいくつか読んだことがあるが、一体どこを聴いとんのじゃ??? 過去のいくつかのセッションの寄せ集めでありながら一本ハガネのような筋の通ったへヴィー・ロックが展開される「フィジカル・グラフィティ」とこのアルバムに類似点など微塵も感じられない。私にはバンドとしての煮詰まりから(←というか実際にはペイジとボンゾがそれぞれドラッグとアルコールに溺れていて物事がうまく進まなかったというのが真相らしいが...)新たな方向性を模索する“悩める王者”の姿を浮き彫りにしているように思えてならないのだ。そういう意味ではこのレコードは「聖なる館」に通じるものがあるように思った。
 そういうワケで彼らのアルバムとしてはイマイチではあるもののA①1曲の魅力で十分オリジナル盤を買う価値があると考えた私は十数年前に£6.50でUK盤をゲット。マト末尾は A5/B5 で、両面に機械打ちで STRAWBERRY の刻印が入っている。更に今回のゼップ祭りで RI(リッチモンド)プレスのUS盤も入手。こちらの方は ULTRASONIC CLEANING (←ヤフオク業者風に言うと“神洗浄” か... 笑)で有名なクリーヴランドのセラーから $25で買ったもので、マト末尾はAB両面とも KKK。やはり STRAWBERRY 刻印入りだが、UK盤とは違って手書きで刻まれている。
 いつものように UK盤とUS盤の音を比較してみたところ、US盤の方が音場が広く感じられてダイナミックなサウンドに思えたのだが、その違いが US盤自体の優位性なのか、手書きSTRAWBERRY に起因するものなのか、それとも ULTRASONIC 洗浄効果から来ているのか、私にはよく分からない。ただ、これまでの他のアルバムのような大きな違いではないので、このアルバムに関してはUK・US云々よりも盤質重視で買うのがいいと思う。
Led Zeppelin - In the Evening , Vinyl Sound .

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