NHK番組の「ウクレレおじさん」として有名なキヨシ小林さんは、日本人で初めてフランスのジャンゴ・フェスティバルに参加した、日本のマヌーシュ・ギタリストの草分け的存在である。ウクレレ・アロハマンとマヌーシュ・ギタリストの2足のわらじを履きこなす凄い人なのだ。彼の1stジプシーギター・アルバムDjango Swing は、アップテンポな演奏が新鮮なMy One And Only Love や女性ヴォーカル・フィーチャーのShanghai、哀愁舞い散るAnniversary Song(ドナウ川のさざ波)等、マヌーシュ・スウィングに留まらない彼の多様な音楽性が集約されたような素晴らしい内容だったが、リズムギターが引っ込んで聞こえるおとなしめの録音なのが惜しかった。それに対して2nd にあたるこの Douce Ambiance では葛巻善郎さんという超こだわりのレコーディング・マスタリング・エンジニアがリズムギターをデカく音録りした(エヴァンス・トリオのヴァンガード・ライヴにおけるスコット・ラファロみたいな録音バランス!)せいもあってか1曲目からスイング感が全開で、ザクザク・リズムが快感を呼ぶ。やっぱり音楽のわかった録音エンジニアってすご~く大事なんやね。ザクザク効果が特に顕著なのがジャズ・スタンダードの⑦How High The Moon と⑪Night And Day で、息子の小林なおさんが刻むギターのリズムが大きなうねりを作り出し、音楽を前へ前へと推し進めていく大きな推進力になっている。親子でスイング、ってめっちゃエエねぇ。そして待ってましたのチャボロ・シュミット特別参加!③のTchavolo Swing は自分の持ち歌ということもあってかプリプリバリバリと気持ち良さそうに弾きまくっている。それにしても一音弾いただけでその場の空気を変えてしまうチャボロの圧倒的存在感は凄いの一言。触発されたキヨシさんもノリノリで、軽快なテンポでホットなソロが続く至福の3分57秒である。①④⑨といったシャンソン・ミュゼット系の曲にはアコーディオンも参加しており、パリのエスプリが横溢する粋なアルバムになっている。更に②Douce Ambiance(甘い雰囲気)と⑬Songe d’Automne(秋の夢)という自分だけの「隠れ名曲」を教わったアルバムとしても忘れられない、いいことだらけの私的マヌーシュ愛聴盤なのだ。
熊本を拠点に活動する若手4人組マヌーシュ・スウィング・バンド Swing Amor のデビュー盤。まず注目すべきは彼らがチャボロ・シュミットの代表曲である⑪Mire Pralを取り上げているところ。聴いてみるとやはりというべきか、いきなりチャボロ・ライクなリズムギターが爆裂!弦が切れそうなぐらいザクザク刻んでくれる。こりゃー最高だ!映画「僕のスウィング」の冒頭で強烈なインパクトを与えたチャボロ・ヴァージョンが完璧すぎるせいか、どのバンドも手を出しかねているようでこの曲のカヴァーはとってもレアなのだが、Swing Amor は大胆にも挑戦し、チャボロの名演に迫る見事な演奏を聞かせてくれる。特に「ジャララララララッ!!!」と弦を擦るところなんかもう最高(^o^)丿そのチャボロも取り上げていたガーシュウィンの①Lady Be Good、ジャンゴの②Minor Swing、ビレリの⑤Made In France、マヌーシュ・スタンダードの王様⑥Dark Eyesと名曲名演のオンパレードで、バリバリのマヌーシュ・スウィングが展開する。④のSwing Easy は、ずばり「Swing Amor 版 Tchavolo Swing」といった感じのスインギーなオリジナル曲で、彼らのチャボロへの傾倒ぶりがわかろうというもの。ハイテクニックなプレイを繰り広げながらも決して技術至上主義を前面に押し出さず、正統的なマヌーシュ・スウィングという土壌を愛し続ける実にシンプルな音楽をポンと提示したところにSwing Amor の魅力がある。「型」にこだわるマヌーシュ・バンドが多い中、自分たちのルーツを的確に表現した彼らの音楽がかえって新鮮に映るのだ。特に上記の⑪でマヌーシュ・スウィングの俗に言う「泥臭い」フィーリングが圧倒的な凄さで流れ出した瞬間、思わず鼓動が激しくなった。ここまでマヌーシュ・スウィングが好きなのか、といった徹底的な自我意識が描写されていて聴いてて胸が熱くなる。彼らの音楽はその背景、土壌、そして何より信じる音楽への敬意の重要性というものを教えてくれる。まるでベテラン・バンドの作品を聴き終えたような充実感と深い満足感。マヌーシュの真髄、躍動するリズム、どこを切っても充実の手ごたえが飛び出してくる。チャボロ・シュミットやモレノといったいわゆる「ザクザク・マヌーシュ系」のギターが大好きな人にはこたえられないアルバムだ。
Swing Amor "Minor Swing"
Swing Amor "Minor Swing"
先日のCafe Manoucheライブ終了直後に川瀬さんから最新作のこのCDを直接購入。一般発売は10/19とのことなので、1週間早く聴けるのが妙に嬉しい。この「ちょっとでも早く新作を聴きたい感」ってめっちゃ久しぶりやなぁ(≧▽≦) リアルタイムで活躍してるアーティストでは Cafe Manouche と Janet Seidel と B'zぐらいか(←好みが無茶苦茶やん!) 何よりもまず目を引くのがカラフルなジャケット。ピンク/イエロー/ブルーをあしらったタイトル文字、上下縁、そして中村さんのセーターの色使いが実に新鮮である。早速1曲目から聴いていく... タイトル曲の①Decarajue は中村さんのオリジナルで、フランス語で「ズレてる」って意味らしい。派手さはないものの、妙に心に引っ掛かる曲とでもいえばいいのか、聴き終えた後も何故か頭の中で鳴り続けるタイプの曲だ。そうさせているのは中村さんの輪唱的曲想と川瀬さんの絶妙なリズム・カッティング。ホンマに匠の技ですな。一通り聴き終えた感想としては... 予想してたのと何かちょっと違う。前作にあったあの緊張感と性急とでもいうべき疾走感はここにはない。「究極のジプシー・スウィング」といえる前作に対して「さらに深化し続けるジプシー・スウィング」といえるくらいアレンジが練られている。それが一番顕著に現れているのが⑩のMinor Swingだ。マヌーシュ・スウィング界で最もカヴァーされてきたであろうこの大名曲は、だからこそというべきか、どうしてもアレンジが似通ってくるものだが、Cafe Manouche のヴァージョンは一味も二味も違う。のっけから全開で斬新なソロを展開する山本さん、1分54秒からのわずか30秒の間に「言いたいことをすべて言い切ったような」ソロを聞かせる中村さん、そのバックで顎が落ちそうなくらい気持ちの良いリズムを刻み続ける川瀬さん... こんな Minor Swing 聴いたことない! これこそが Cafe Manouche の新境地であり、ジプシー・スウィングの未来形なんだと思う。CDの帯に「ジプシースウィングのこれからの扉を開けるアルバム」と書いてあったが、まさに看板に偽りなしの名盤だ。
Cafe Manouche を知ったのは半年ぐらい前のこと、たまたまネットで試聴して一発で気に入り、即注文。届いたCDを聴いてまず驚いたのはとにかく音がデカイこと。まるでヴィーナス・レコードのCDみたいにカッティングレベルが高く、実に生々しい音なのだ。特にベースの音が「ボン、ボン!」ではなく「ズン、ズン!」、曲によっては「ブルン、ブルン!」と聞こえる快感... ウッドベースを聴く悦びここにあり、だ。次に曲目を見て気づくのは「ジャズのスタンダード・ソング」①③④⑧⑫と「マヌーシュ・オリジナル」②⑤⑥⑦⑨⑩⑪の絶妙なバランスである。すべての曲の配置が考え抜かれ「ここしかない」といえる位置に置かれているのだ。特に気に入ってるのが①~③の冒頭3連発の流れ。
①:I Can't Give You Anything But Love
いきなり川瀬さんの軽やかなリズム・カッティングで始まるジャズ・スタンダード。このイントロでつかみはOKといったところか。歌心溢れる山本さんの流麗なソロに続いて2分22秒あたりから中村さんの重低音ベースが縦横無尽に暴れまくる。まさに疾風怒濤の3分41秒。
②:Latcho Drom
ドラド・シュミットが書いた哀愁のマヌーシュ・オリジナル。突き刺さるようなイントロからゲストのヴァイオリンも入れて一体となった4人が急速調で飛ばしまくる。まるで軽量スポーツカーでワインディングをひょいひょいとクリアしていくようなスピード感がたまらん!
③:Summertime
いわずと知れたガーシュウィンの超有名スタンダード。サンタナと化した(笑)山本さんは途中「黒いオルフェ」のフレーズなんかも織り交ぜながら哀愁のメロディーを連発、わずか4分という演奏時間の中でありとあらゆるテクニックを駆使して歌いまくる。2分28秒からストーケロ・ローゼンバーグが乗り移り2分43秒あたりでハッと我に返る(ように聞こえる?)ところもマニアにはこたえられまへん(≧▽≦)
まぁこんな感じでラストのUndecidedまで一気呵成に聴けてしまう、Cafe Manouche の1st CD。マヌーシュ・スウィング・ファンは必聴ですぜ。
①:I Can't Give You Anything But Love
いきなり川瀬さんの軽やかなリズム・カッティングで始まるジャズ・スタンダード。このイントロでつかみはOKといったところか。歌心溢れる山本さんの流麗なソロに続いて2分22秒あたりから中村さんの重低音ベースが縦横無尽に暴れまくる。まさに疾風怒濤の3分41秒。
②:Latcho Drom
ドラド・シュミットが書いた哀愁のマヌーシュ・オリジナル。突き刺さるようなイントロからゲストのヴァイオリンも入れて一体となった4人が急速調で飛ばしまくる。まるで軽量スポーツカーでワインディングをひょいひょいとクリアしていくようなスピード感がたまらん!
③:Summertime
いわずと知れたガーシュウィンの超有名スタンダード。サンタナと化した(笑)山本さんは途中「黒いオルフェ」のフレーズなんかも織り交ぜながら哀愁のメロディーを連発、わずか4分という演奏時間の中でありとあらゆるテクニックを駆使して歌いまくる。2分28秒からストーケロ・ローゼンバーグが乗り移り2分43秒あたりでハッと我に返る(ように聞こえる?)ところもマニアにはこたえられまへん(≧▽≦)
まぁこんな感じでラストのUndecidedまで一気呵成に聴けてしまう、Cafe Manouche の1st CD。マヌーシュ・スウィング・ファンは必聴ですぜ。
連休最後の月曜日、Cafe Manouche のライブを見に、久しぶりに大阪へ出かけていった。でもなんばマルイってどこよ? 調べてみると何のことはない、以前南街劇場のあったビルがそっくりそのままマルイになっていた。早く着いたおかげで前から2列目のド真ん中の席をGET! 開演時間が近づくと Cafe Manouche の3人が現れチューニング開始。ミーハーな性格のせいか、写真でしか見たことのなかったミュージシャンを間近で見れるだけでコーフンしてしまう。さぁ、いよいよ演奏開始だ。1曲目はAfter You've Gone。2本のマカフェリギターが絶妙に絡み合いながらミディアムテンポで気持ちよくスイングし、まずは名刺代わりの1曲といったところ。2曲目は意表をついてRecado Bossa Nova。この曲にジプシー・ギターがこれほど合うとは思わなんだ。とにかく光速ソロのアメアラレ攻撃。この曲の他ヴァージョンが瞬時にして砕け散る、それほどカッコイイ演奏だ。3曲目のArtillerie Lourde、スローバラッドの4曲目(曲名忘れた)に続いて5曲目が待ってましたのLatcho Drom。軽やかにリズムを刻む川瀬さん、シャープなソロを連発する山本さん、そして歌心溢れる力強いプレイで音楽の根底をしっかり支える中村さん... 3人が一体となって疾走する、このスリリングな展開こそがマヌーシュ・スウィングを聴く醍醐味なんよね(≧▽≦) 本来ならこれで終わりのはずが、まだ少し時間があるとのことでもう1曲... I'll See You In My Dreams。映画「ギター弾きの恋」でもラストに使われとった名曲で、まぁ例えてみればメインディッシュの後のデザートのような感じの、まさに「シメ」にふさわしい曲。そんなこんなでハッピーな余韻を残してライブは終了。今度はぜひどこかのライブハウスでじっくり聴きたいと思わせる、素晴らしい30分だった。
カフェ・マヌーシュ
カフェ・マヌーシュ