庄内の特産「庄内柿」は平核無の元祖であり庄内から全国へと普及し、柿といえば平核無が当たり前になった。しかし、このところ需給バランスを崩し安値が続き、柿栽培農家の悩みの種でもあった。そこで、県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室が2002年に柿の樹上脱渋技術の研究をスタートさせた。
樹上脱渋技術とは、柿の実がまだ青い状態のうちに固形アルコールを入れたポリ袋をかぶせ、気化するアルコールで渋みを抜く技術の事で、簡単そうに思えるが気候変動を読み取り、一個一個袋をかけるタイミングや糖度、大きさなど研究に5年も費やした。樹上脱渋柿は、収穫してすぐに食べる事が出来、木ざわしの食感で、果肉にはゴマ状の斑点が入り、日持ちが良い特徴がある。肝心なのは市場にアピールできるネーミングである。ゴマがしぐれ状に入っている事、晩秋から初冬の時雨時期に収穫される事等と併せて、藤沢周平の「蝉しぐれ」にあやかって「庄内柿しぐれ」と商標登録を済ませた。そして、昨年やっと市場に出す事が出来た。市場価格は倍に跳ね上がった。県では「外観、大きさも含めて差別化をはかり、関東、関西の市場をターゲットに栽培面積を広げ、贈答用ブランドの確立を図りたい」としている。
農業の新品種の開発や、技術の開発普及には目に見えない技術者の情熱と執念がある。そして予算がなによりも彼らを勇気付ける源泉である。目に見えない研究費は削減されがちでもある。
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