蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

捕虜収容所の死

2005年07月06日 | 本の感想
マイケル・ギルバートさんの書いた「捕虜収容所の死」(創元推理文庫)を読み終わりました。
イタリア軍の捕虜収容所からの脱走を企てるイギリス軍兵士たちの話。脱走計画と殺人事件の捜査が並行して描かれます。

昔(20年以上前)、厚紙の盤と駒で遊ぶシミュレーションウォーゲームに凝った時期がありました。どのゲームの中でもイタリア軍の戦力評価は非常に低くて、精強なドイツ軍とはスタック(同じマス(地域)に部隊を集結させること。1つのマスに集結させられる駒に限度がある)できず、だいたい囮とか捨石程度にしか使えなかったことを思い出しました。(当時やったゲームのすべてはアメリカ企業の発売していたものでしたが、ドイツ軍の機甲部隊はやたらと強力な評価がされているのに対してなぜかアメリカ軍の評価はかなり低く設定されていました。作者がドイツの重戦車に蹂躙された思い出でももっているのでしょうか?それとも湯水のごとく補給されるアメリカ軍とのゲームバランスの考慮だったのでしょうか?)

例によって話がそれましたが、この本の中のイタリア軍もなんだかヘナチョコです。それに加えてイタリア軍側は悪者ばかりで、一方のイギリス軍は(一見裏切り者として)殺される兵士も実は・・・といった調子でいい人が目立ちます。

確かこの本は出版された年の「このミス」の1位か2位だったと思いますが、選ばれたのは解決のロジックがとても鮮やかである点に要因があるのではないでしょうか。
ストーリーはかなり入り組んだ構造になっていますが、「なぜ彼しか犯人になりえないのか」という探偵役の兵士の説明は極めて簡潔で、かつ、伏線も十分なため、納得性が高いものになっています。
こうした謎解きの楽しさの他に、イギリス軍兵士の生態(?)が生き生きと描かれている点も本書の優れた点です。特に最終部分での収容所脱出後、友軍を求めてイタリア半島を彷徨するあたりの描写が出色です。

この本の本国での出版は1950年代とのこと。そんなのを発掘してきて文庫化したら、ランキングの上位を奪取して予想外の大ヒット・・・編集者冥利につきるというものですね。
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