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手抜き料理・3

2018年05月08日 07時59分26秒 | 手抜き料理
結婚する時に持って来たのは、母の嫁入り道具だった分厚い料理辞典。

内容はかなり本格的で、老舗ホテルや老舗料亭の有名料理長が

料理を伝授してくれている。

和洋中だけでなく、シシカバブやピロシキの作り方なんかも載っていた。


「鯉(こい)のおろし方って、必要なんだろうか?」

そんなことを思いながら、硬くて重たい料理辞典を広げては

ページをめくる新婚の日々。

母の方は「夫婦喧嘩でこの本を投げたら、旦那が危ない」

と心配していたらしい。



『マカロニグラタン』

小麦アレルギーのかたには申し訳ないけど、手始めはグラタン。

昔はせっせとホワイトソースを作っていた。

例の料理辞典の教えに従い、ローリエの葉っぱなんか入れてさ。

女って、赤ちゃんにお乳を与える可能性のある間は

こういう乳臭い物が好きなのかもしれない。


近年はどうでもよくなり、滅多に作らない。

しかもインスタントの方がよっぽどおいしい。

鶏肉と玉ねぎを炒めたフライパンに

グラタンの素と水と、付属の乾燥マカロニを入れてちょっと煮たら

すぐにベースができてしまう。


私が長年やってきたのは何だったの?

という腹立たしさはともかく、家族が多い場合

バターを塗った人数分のグラタン皿にベースを取り分け

パン粉やチーズを載せてオーブンで焼くなんざ

手間がかかってしょうがない。


火葬の順番待ちをするグラタン皿なんか見ていたら

目まいがしそうなので、私は長方形の弁当箱みたいな

ホーロー製のタッパー1個にフライパンの中身を全部入れ、一括で焼く。

食べる時は各自が取り分ける。

下に木製の鍋敷きを置けば、熱々でも大丈夫。

取り分ける際には、広島名物お好み焼きに欠かせない相棒

ステンレス製のヘラが活躍する。


入れ物にバターは、面倒なので塗らない。

昔のグラタン皿は、先にバターを塗っておかなければ

汚れが取れにくかったようだが、今はそんなことはない。


耐熱皿でも普通の皿でもいいけど、とにかく深型の長方形がいい。

なぜならオーブントースターや魚焼きグリルに入るから。

ちゃんとオーブンを使おうとするから、構えてしんどくなるのだ。

今朝パンを焼いたオーブントースター

さっき魚を焼いたグリルを使えば、気軽に作れる。


インスタントの素を使う

長方形の入れ物を使う

一括で焼いて取り分け形式にする

グラタンはこの3つで、スピードおかずに成り下がる。

一緒にごはんを混ぜて焼けば、ドリアだ。

「ママ特製」と言い張りながら、残りごはんの処理をする。



『ナポリタン』

素を使ったサツバツ料理が続くが、我慢してもらいたい。

ナポリタンはレトルトを使う。


ただし、レトルトは湯煎しない。

スパゲティをゆでながら

隣のコンロでレトルトを温めたあかつきには

熱い鍋を二つ洗う羽目になる。

これはものぐさ族にとって、案外面倒臭い。


事前にフライパンで玉ねぎ、ピーマン、人参など

この際、家族に食べさせたい野菜を細切りにして炒める。

あればベーコン、ハムなどの肉っ気も入れる。

炒め終えたら、そこへ湯煎しないレトルトの中身を入れる。


ここまでしておいてから、スパゲティに取りかかる。

ということは朝やっておいて

昼や夜にスパゲティをゆでてもいいわけ。

何もかも連続してやろうとすると洗い物が多くなるし

慣れないと疲れる。

次の食事の準備がほぼできていれば、余裕が生まれる。

余裕が生まれるとおかずが一品増え、笑顔も増えるというものだ。


スパゲティがゆであがったら、炒めた具とレトルトの入ったフライパンに

箸でせっせと移す。

洗い物を増やしたくないから、ザルは使わない。

ザルを使わないと、スパゲティの湯切りができないので

ゆで汁も多少入るが

レトルトとスパゲティを馴染ませるためと

野菜を足した分、薄らいだ塩分を補うために必要なので気にしない。


スパゲティを入れたら、混ぜながらひと煮立ち。

粉チーズをかけて、ママ特製ナポリタンのできあがり。


結局はスパゲティをゆでる鍋とフライパン

2つの洗い物が生まれるじゃないか‥そう思うだろうが、違う。

ザル未使用というポイントは高い。

さらに輝かしい作品が鎮座するフライパンは

料理を作る過程で生まれる下積みの洗い物とは身分が異なるため

さほど苦にならない。



『肉じゃが』

いにしえより、お袋の味と呼ばれ

意中の男を落とす最善の料理として名高くなった。

そのため神格化してレシピが複雑になり

かえって敬遠されている気配の肉じゃが。


うちの近くには、じゃがいもの産地がある。

この地方のじゃがいもは、最盛期が夏と冬の年2回。

その都度、箱でもらうじゃがいもを消費するため

私も肉じゃがに興味を持たざるをえない。

本も読んだし、料理番組も見たし、年寄りにも聞いて

試行錯誤を重ねてきた結果

手をかけるほど残念な仕上がりになると判明。


お袋の味と言うけど、そのお袋が現役の頃

肉や芋を油で炒める習慣は定着していただろうか。

たかが肉じゃがに、当時は贅沢品だったと思われる酒やみりんを

惜しげもなく注ぐだろうか。

そんな疑問から、行き着いたのがこれ。


生肉とじゃがいもと人参と玉ねぎをひたひたの水にぶち込んで

顆粒の昆布だし、砂糖、醤油を適当に入れて煮詰める。

以上。


炒めないからこそ、とろけるじゃがいも。

みりんを入れないからこそ、蛋白凝固の機会を逃した柔らかい肉。

これほど簡単な手抜き料理があろうか。

よその家は知らないが、うちではこれが一番評判がいい。


なぜ昆布だしか。

じゃがいもとカツオだしは、合わないから。

なんだかんだ言ったって

相性の悪いじゃがいもとカツオだしを仲良くさせるために

油炒めや下煮なんかの手間が必要になるのだ。

昆布だしを使えば、どうあがいてもおいしい肉じゃがになる。
コメント (2)
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