殿は今夜もご乱心

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手抜き料理・8

2018年05月19日 10時39分15秒 | 手抜き料理
私の暮らす田舎ではPTA活動、お寺の行事、公民館活動、葬式など

大人数のシロウトが集まって料理をする機会がままある。

そしてそこには自薦、他薦に関わらず料理の得意な女性が多勢いる。


人口の多い都会のことはいざ知らず、田舎の料理自慢‥

ことにお年を召した方々は、何かと厄介だ。

複数いる場合、必ずゴタゴタが起きる。

「味付けは私が‥」

「いや、これこれこういう理由で私こそふさわしい」

「私はこんなに頑張ってるのに、評価されない」

「私が作った物だけ、人気があった」

私、私、私‥準備から後片付けまで自己主張が続く。

料理をテキパキする人には負けず嫌いが多いのと

娯楽が少ない田舎では、他に輝ける舞台が無いのが理由だと思う。


一回り年上の友人で、自他共に認める料理上手のヤエさんですら

最初の出会いは快いものではなかった。

彼女は長年、地元のスーパーで働いていたので、若い頃から顔は知っていた。

「スラッとしてて優しそうで、綺麗な人だなぁ」

優雅に微笑みながら接客をする彼女を見ては、いつもそう思っていた。

やがて私はウグイス、彼女は賄い係として

4年に一度、選挙事務所で顔を合わせるようになるが

挨拶程度で話をしたことはなかった。


親しくなったのは、7年前の選挙。

事務所がゴタゴタして落ち着かないということで、候補から依頼を受けた私は

騒動をおさめるために、告示までの1ヶ月間、賄いを手伝うことになった。

ところが、ゴタゴタは事務所だけでなく台所も同じだった。

ヤエさんの仕切る台所は、複数の料理自慢がしのぎを削り

憎しみ合いの修羅場と化していたのだ。


騒動の元は例のごとく、私が、私が‥。

連日の争いで、ヤエさんのテンションはマックス。

そこに私まで新しく入ったのだから、心穏やかであろうはずがない。

「私も調理師免許、取ろうと思ってたけど仕事が忙しくてねっ!」

これが挨拶の次に言われた言葉である。


ヤエさんは私に冷淡だった。

別に行きたいわけでもなく、面倒臭いので辞めたかったが

候補と約束したので引くわけにいかず

1ヶ月後にはウグイスとして、結局行かなければならないので通う。


そんなヤエさんにとって、今回の選挙は今までと勝手が違った。

我々の候補は市会議員を辞職し、この時は県会に立候補していたからだ。


トップのヤエさんを始め、賄いをする人たちは市議選の経験しか無い。

市議選と県議選の規模は、当たり前だが全く異なる。

20人分ほど作ればよかった市議選と、大所帯の県議選とでは

献立の立て方や仕入れ、作り方、配膳のやり方などが根本から違うのだ。

「おいしいわ、お料理が上手ね」

「あらそんな、おほほ」

なんて流れを期待するお花畑では、逆立ちしたって間に合わない。


30人、50人、70人‥

事務所で食事をする支援者は日増しに増加していく。

大人数に対応するコツや段取りを知らない面々はたちまち行き詰まり

悠長に小競り合いをしていられなくなった。


ここがヤエさんの立派なところ。

「みりこんさん、教えてください」

と申し出た。

私に迎合したのではなく、引き受けた使命を全うしようとする責任感である。

親しくなったのは、それ以降だ。

料理上手のヤエさんと、段取りイノチの私が組んだことによって台所は落ち着いた。


このように何かと厄介な料理自慢に比べ

料理が苦手と言う人たちの謙虚さはどうだ。

「料理はヘタなので、せめて洗い物は任せてください」

「指示してくだされば、いくらでも材料を切りますからね」

老いも若きも、素直で可愛らしい。


口ではそう言うものの、家ではちゃんとやっているだろうし

苦手と言うだけに、おいしい店やテイクアウトの情報が豊富。

「あすこの山にワラビが‥栗が‥」

家食にこだわる料理自慢のショボい話題より、よっぽど楽しくて垢抜けている。

家で何か煮ているより、外に出たいタイプの人が多いので

色々経験していて話が面白く、意外な資格や特技を持っていたり

着る物もおしゃれだったりするのだ。

だから苦手派の人には、自信を持ってもらいたい。


また前置きが長くなってしまった。

手抜き料理、本日のお勧めは炊き込みごはん。

面倒臭そうだが、やってみると意外に簡単。

材料を準備したら、後は炊飯器が作ってくれる楽な料理である。


私がこれをお勧めするのは、一点豪華主義の見地から。

一品に少々の手間をかけておけば、副菜は汁とおひたしくらいでいい。

おひたしがかったるければ、冷奴か刺身こんにゃく。

野菜が足りなきゃ青汁でも飲んどいて。


炊き込みごはんは米を炊く作業と主菜の製作を兼用でき

ごはんをよそうのと主菜の盛り付けも兼用できる。

まして食後の洗い物も少ないとくれば、これはもう立派な手抜き料理。

楽でありながら食卓は華やぎ、家族は喜ぶ。


『炊き込みごはん』

①炊飯器で、普通に米をセット

②鶏モモ肉を2センチ角に切り、少量のめんつゆを振りかけておく。

③その間にゴボウと人参を皮むき器でスライスし、油揚げを小さめに切る。

④米に、顆粒の昆布ダシとめんつゆ、塩一つまみで味を付ける

⑤鶏肉と野菜、油揚げを米に投入して炊飯器のスイッチを入れる。

以上。


大切なのは①。

欲張って、炊飯器の容量ギリギリまでの米を炊こうとしないこと。

具材が入る分、1〜2合少なめの米を用意するのが失敗しないコツ。


それでも万が一、生煮えで仕上がった場合は

米の芯が無くなるまで、何度か炊飯ボタンを押せばいい。

炊飯器はすぐに炊飯をやめてしまうが

気にせずにその都度、食べて確認する。


それでも芯が残っていたら、湯を少し入れて再び炊飯ボタンを押す。

経験上、柔らかくなるが、何とか食べられる。

主食と主菜を兼ねる便利な料理だけに

失敗したら一巻の終わりというイメージが先行して

炊き込みごはんを敬遠する人もいるので

御守り代わりに、この対処法を覚えておくといい。


他に強いてポイントを挙げるなら、④の味付け。

米だけの状態で味を決めるのは、生の鶏肉を入れてしまった後だと

味見をするのに抵抗があるから。

めんつゆだけでも味は付けられるが、たくさん必要になって色が黒くなる。

顆粒ダシで旨味を高め、塩で引き締める方が見た目、味ともに効率がいい。

味付けの目標は、濃いめのすまし汁。

時間的、精神的に余裕のある人は

昆布とカツオで取ったダシを使い、薄口醤油で味付けをするといい。

仕上がりがあまりにも薄味になり過ぎた場合は

塩を振りかけて全体を混ぜたら何とかなる。


中に入れる具材に里芋や栗、缶詰のギンナンなどをプラスしてもおいしい。

米を研ぐ時、1合分をもち米に変えたら「おこわ」と言い張れる。

全部をもち米にすると、前日から水に浸けたり

炊飯器でなく蒸し器を使う必要が生じて面倒になるが

もち米の量が少なければ、普通の白米と同じ扱いで大丈夫。

炊き上がりに、市販されている味付け山菜を混ぜ込んだら山菜おこわだ。


具材の量は適当でいい。

ゴボウは栄養と風味のために、ぜひ入れて欲しい具材ではあるが

手がかかるので、ほんのおしるしでもいいし

いっそ使わなくても何ら問題はない。

盛ったごはんの上に、生のミツバなんぞ1枚乗っければ

そこに視線が集まって、おおかたのことは誤魔化せる。
コメント (4)
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