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羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

潅仏会の午後

2007年04月08日 15時46分28秒 | Weblog
 今朝、選挙に行って、原稿を一つ書いて、新学期授業のレジュメを考えて、本の手配をして……と、欲張った計画を立てた。

 まずは投票に出かけようとしたとき、祝いの花が届いた。
 黄色がメインのアレンジメントを母が寝ている部屋の欅の台に飾った。
 大正15年につくられたカウンターである。江戸指物でちょっと狂いがきてはいるがまだまだ現役として使える。台は一間の幅がある。80年からの時間が、落着いた雰囲気をかもしだしている。

 外に出ると日差しがあたたかく、街角のそこここに植わっている桜の花びらが散りかかってくる。
 目的の小学校へと向かう人、戻ってくる人が三々五々連れ立って歩いている。
 いつもよりものんびりと歩く人々がそこにはいる。

 帰宅して、仕事に取り掛かろうとしたもののやる気が失せている。
 居間のテレビを何気なくつけた。2時をまわっていた。
 男性のナレーションに、すぐにも惹き込まれてしまった。
 どうも二組の家族を追っている番組らしい。
 未婚の母と一人娘、女二人が切り盛りする酒処。
 もう一つの家族は、再開発問題と癌の病に悩む夫と妻が開いている洋風の定食屋。

 その町に定着して50年。
 何気ない市井の人々の暮らしに隠された秘密が明かされていく。
「人の一生まさかの連続。ここは人生神楽坂」
 味わいのある言葉を、変に甘すぎないが、情緒ある声色のナレーションが静かに盛り上げていく。

 ふと、思い出す。
 数年前のこと。
 病室ではなく、食堂で昼食を食べていたときのこと。
 60代後半の男女の会話が後ろから聞こえてきた。
 綺麗な日本語だった。東京弁だった。とりわけ女性の話し言葉はしゃきっとしながらも柔らかなイントネーションが心地よかった。

 同じ病棟に入院してる二人のうち、男性の方が以前この近くに住んでいたらしい。女性は家付き娘で、近くの老舗の女将さんらしい。懐かしそうに子供のころの町の様子を語り合っていたのだ。
 
 突発性難聴をわずらった私が入院した東京女子医大は、神楽坂の目と鼻の先にある。
 懐かしい思いを抱きながら番組を見て、あの町に暮らす人々の何気ない日常も、一歩踏み込んでみると、そこにはさまざまな人生があるんだなぁ~と、ため息がこぼれた。
 
 ナレーションは更に続く。
「神楽坂は上り下りの人生そのもの」
 変わりゆく町に、人の思いが交錯する。
 フジテレビ「ザ・ノンフィクション」、1時間の番組だった。

「人生まさかの神楽坂」
 途中から見ていたものの目頭があつくなった。
 いい番組を見せてもらった。
 
 そして58回目の潅仏会の日は穏やかだ。
「おめでとうさん」
 隣の部屋から、花束の贈り主の言葉が聞こえるようだ。
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