金曜日の午前、母の施設に口腔ケアの歯科衛生士の方が来る予定になっている。
そこでその時間に合わせて、出かけていった。
丁度、ケアがはじまったときだった。
その間、介護士の方と話をしていた。
「今朝はトイレで、立派な太いバナナが出てくれました」
「まぁ、去年から少なくなってましたから、よかったですね。手を合わせてしまいますね」
二人、にこやかに話し合った。
「やっぱり、お襁褓ではなく、便座に座って自分の力で排便ができることは、ご本人にとっても気持ちがいいんですよねー」
「本当にそうですね」
食事も完食になって、おやつもあっさり食べ切っているそうだ。
母の部屋に行って、持って行ったタオルケットに名前を書いて戻ってくると、丁度、口腔ケアが終わっていた。
挨拶をすると、若い女性の歯科衛生士の方が、ものすごく嬉しそうに
「お口の中をみてください」
相当綺麗になっていて、下の歯の裏側が黒ずんでいるのを、これから丁寧にケアをすると、伝えてくれた。
「随分、歯が残っていて、ちゃんと噛めるので常食がたべられるので、よかったですね」
入居する前に、ほぼ2年をかけて歯の治療を行った。30回近く、歯科医院に通ったことを伝えた。
「入れ歯もなく、虫歯もないくて、すばらしいですね。だいぶ前から嫌がらずにやらせてくれるようになりました」
私が褒められているような気分になった。
その後、一年に一回の健康診断に行っている間、仲良くなった入居者のまり子さんとひとしきりおしゃべりをしたり、もうひとりの介護士の方に自分でする眉間から頭、頭頂部、頸、肩のマッサージと、肋骨をたっぷり動かす呼吸法と腰が痛まない程度に上体をゆする体操をお教えした。
直接、腰を動かすことができないくらいの腰痛に悩まされている。
「これって、いつでも出来ますよね。まず、ここからはじめてみます」
私の肋骨に触って、呼吸の時にどのくらい動くかをしってもらった。
「こんなに動くですね。やってみます。痛くない程度で……」
しばらく仕事をしながら、会話をしていた。
母が帰って来たので、用意した新聞を拡げて、手の爪を切って、話をする。
爪切りはこれで二回めだった。
私の切る動作に合わせて、指の位置を少しずつズラしてくれる、という変化を見せてくれた。
仲良くしているまり子さんとも、介護士さんとも少しずつ会話をするようになったそうだ。
よくここまで来ました。
人は変わる。いくつになっても少しずつでも変わる力がある、ということを知った。
「この調子だと、百歳まで生きるんじゃない?」
毎日の刺激は、自宅で留守番をしている毎日とは、まったく違う。
「脱衣もなくなってきましたよ」
帰りがけに、思い出したように報告してくれた。
11時半。
外は、猛烈な暑さだったが、ホッとしたせいか、足取りも軽く自宅へと向かった。
スタッフの方々が、真剣に取り組んでくださったお蔭だ。
人間は孤独になってはいけない、とつくづく思った次第。
人が人を生かすんですねー。
そこでその時間に合わせて、出かけていった。
丁度、ケアがはじまったときだった。
その間、介護士の方と話をしていた。
「今朝はトイレで、立派な太いバナナが出てくれました」
「まぁ、去年から少なくなってましたから、よかったですね。手を合わせてしまいますね」
二人、にこやかに話し合った。
「やっぱり、お襁褓ではなく、便座に座って自分の力で排便ができることは、ご本人にとっても気持ちがいいんですよねー」
「本当にそうですね」
食事も完食になって、おやつもあっさり食べ切っているそうだ。
母の部屋に行って、持って行ったタオルケットに名前を書いて戻ってくると、丁度、口腔ケアが終わっていた。
挨拶をすると、若い女性の歯科衛生士の方が、ものすごく嬉しそうに
「お口の中をみてください」
相当綺麗になっていて、下の歯の裏側が黒ずんでいるのを、これから丁寧にケアをすると、伝えてくれた。
「随分、歯が残っていて、ちゃんと噛めるので常食がたべられるので、よかったですね」
入居する前に、ほぼ2年をかけて歯の治療を行った。30回近く、歯科医院に通ったことを伝えた。
「入れ歯もなく、虫歯もないくて、すばらしいですね。だいぶ前から嫌がらずにやらせてくれるようになりました」
私が褒められているような気分になった。
その後、一年に一回の健康診断に行っている間、仲良くなった入居者のまり子さんとひとしきりおしゃべりをしたり、もうひとりの介護士の方に自分でする眉間から頭、頭頂部、頸、肩のマッサージと、肋骨をたっぷり動かす呼吸法と腰が痛まない程度に上体をゆする体操をお教えした。
直接、腰を動かすことができないくらいの腰痛に悩まされている。
「これって、いつでも出来ますよね。まず、ここからはじめてみます」
私の肋骨に触って、呼吸の時にどのくらい動くかをしってもらった。
「こんなに動くですね。やってみます。痛くない程度で……」
しばらく仕事をしながら、会話をしていた。
母が帰って来たので、用意した新聞を拡げて、手の爪を切って、話をする。
爪切りはこれで二回めだった。
私の切る動作に合わせて、指の位置を少しずつズラしてくれる、という変化を見せてくれた。
仲良くしているまり子さんとも、介護士さんとも少しずつ会話をするようになったそうだ。
よくここまで来ました。
人は変わる。いくつになっても少しずつでも変わる力がある、ということを知った。
「この調子だと、百歳まで生きるんじゃない?」
毎日の刺激は、自宅で留守番をしている毎日とは、まったく違う。
「脱衣もなくなってきましたよ」
帰りがけに、思い出したように報告してくれた。
11時半。
外は、猛烈な暑さだったが、ホッとしたせいか、足取りも軽く自宅へと向かった。
スタッフの方々が、真剣に取り組んでくださったお蔭だ。
人間は孤独になってはいけない、とつくづく思った次第。
人が人を生かすんですねー。