「瑞祥のかたち」の展示物は原則撮影OKだった。
展示物に関して内容を全く知らないので、図説を求めてにわか勉強だ。
新しい年の門出を祝う初日の出、最も相応しい光景と言えば、伊勢二見浦の夫婦岩だろう。
荒波が打ちつける夫婦岩の背後に巨大な朝日が昇る神々しい光景、古来から多くの人々の信仰をあつめてきた。
二見浦旭日波涛図 土佐光貞
齢千年の長寿に相応しい鶴と松、右側の鶴は親子三羽が描かれており、幸せを寿ぐとともに子孫繁栄の願いも込められている。
松鶴延齢図 今尾景年(いまおけいねん)
新しい年が来るのを喜び、幸福を願う気持ちは様々な形で残されてきた。
なかでも、不老不死の仙人が住む蓬莱山は、理想郷として誰もが憧れを抱いてきた。
第1回文化勲章受章者の横山大観の手になる蓬莱山、金泥に緑青と群青で描かれた神々しい山、画面中央の山には神の使いである鹿が戯れ、画面中段右手の山には鶴が舞っている。
蓬莱山 横山大観
室町時代の「宝来物語」に基づいて描かれた。
蓬莱山は海の遥か彼方にあって仙人しか辿り着けないが、財宝に満ち溢れ、珍しい動植物が生息し、不老不死の秘薬があると言う。
齢数万年の6匹の亀の上にあり、瑪瑙、琥珀、金、銀、白玉で飾られた楼閣があり、鳳凰や麒麟が住むと伝えられる。
目を凝らすと、この様子が精彩に表現されているのが分かる。
蓬莱山絵巻 上巻
秦の始皇帝も憧れたと言われる蓬莱山は、書棚にも残されている。
荒い金粉と漆を混ぜる技法を用いて描き上げた。
蓬莱雲鶴蒔絵書棚 六角紫水(ろっかくしすい)他
優れた天子の世に表れる瑞鳥の鳳凰も、多くの作家が描いている。
これは衝立の表裏に七宝画で描かれた、鳳凰と初日の出である。
七宝鳳凰図暖炉前衝立
花の咲いた「あおぎり」の上に番いの鳳凰を描いており、右側に山を配して自然な光景のような描写をしている。
架空の動物が、あたかもこの世に表れたかのような描写が珍しい。
桐に鳳凰之図 川端玉章(かわばたぎょくしょう)
松にとまった真っ白な一羽の鳳凰、片足を上げて翼を広げたダイナミックなポーズだ。
羽毛や松など植物も繊細なタッチで、克明に描きあげられている。
国宝 動植綵絵 老松白鳳図 伊藤若冲
そして蓬莱山は霊峰富士へとつながっていく。
生涯に二千点以上富士山を描いたと伝わる、横山大観渾身の力作である。
高234センチ×幅448センチと、大観の描いた富士の中で最大級の大きさを誇る。
朝日に輝く霊峰富士を描いているが、大観は富士山を描くとき、江戸時代の大噴火で出来た宝永山(愛鷹山)を決して描かない。
日出処日本 横山大観
展示品はのほとんど撮影可能と言うことで、大いに張り切ってコンデジでトライしたが、全くモノに出来なかった。
作品の注釈らしきものは、皇居三ノ丸尚蔵館発行の図説を意訳している。