イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか 」読了

2023年07月19日 | 2023読書
稲垣史生 「DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか 」読了

一般向けの本だが、読んでいてもさっぱりわからなかった。専門用語が多くて、使われているいろいろな単位も全くわからない。
この本は、深海の海底下、すなわち、深海の水の中ではなかではなくてさらにその下、堆積物の中に住んでいる生物たちについて書かれた本だ。
深海の堆積物というとマリンスノーを連想する。マリンスノー自体が食べカスのようなもので海底に降り積もったマリンスノーはさらに海底面の微生物たちに食べられ栄養分は限りなく少なくなっていく。その堆積速度は1000年で5センチメートルほどだそうだ。1メートル下にある堆積物は2万年前のものになる。そこは堆積物がミネラルとくっ付いて石のようになってしまっているという。さらに深くなっていくと水圧で密度が高くなり上の方には少しはあった隙間もほとんどなくなってしまう。
そういった極限環境の中にも生物は生きている。こういった生物を研究する学問を「地球微生物学」というそうだ。

深海底の構造というのは基本的にはどうなっているかというと、海面下の堆積層は場所によるが百メートルほどから数千メートルある、その下は玄武岩でできている海洋地殻がある。海洋地殻は上部の玄武岩層とガブロと呼ばれる層に分かれる。そしてマントルの上部層と続いている。マントルと海洋地殻の境目はモホ面と呼ばれている。
日本近海のように有機物に富む大陸沿海では、海水から供給される溶存酸素は数ミリメートルから数センチメートル程度の深さで消費されてしまう。しかし、こういったところでもわずかな酸素は海洋地殻にまで達していることがわかっている。そういったところではぎりぎりの状態で酸素呼吸をして数千万年以上の時間スケールで生き続けている微生物があるという。人間の寿命はいくら長くても120年というのだからけた違いの寿命である。
しかし、もっとすごいのがそれでも生きてゆける術がなくなったとき、一部の最近では内生胞子というものを作り、その胞子が1億年以上もじっと我慢をして復活の時をまっているという。
素人の読者としては、これらの生物の寿命の長さに驚き、また、深海底下は高温、高圧の世界である。圧力は克服できたとしても生物である限り温度は問題である。現在わかっている、高温下で生きる生物は120℃の温度の中で生きているという。そうったところに驚くのであるが、そういうところはサラッと書かれている。
そういうところをもっと知りたいと思うのだが、それを1冊の本、それも一般人に向けて書くには現時点ではそれほどの話題がないのだろうと思った。ましてや相手は単細胞の微生物だ。そして、細胞分裂するために必要な時間が1年から数百年というのだからちょっと退屈なのかもしれない。
一般人(僕だけかもしれないが・・)が楽しいと思う本が出来上がるまでにはもう少し時間がかかりそうである。

こういった調査をする日本の船は「ちきゅう」という名前の船だ。現時点では、この船の掘削深度が世界最高であるらしい。著者たちの目標は、水深4200メートルの海底から6000メートル掘り進み、マントル上部に到達することだそうだ。それを達成すると、一体生物はどのくらいの深さまで住んでいるのかということが解明されるという。現在は、摂氏120度というのが生物の生存できる限界だが、それよりももっと高温に生きる生物があるのかもしれない。

そこで気になるのは生物の起源だ。すでに、生物の起源というのは、こういった深海の世界であるというのは確実らしい。こういった生物がプレート運動に乗り、プレートの沈み込みの境界にできる付加体に乗って地表近くに現れたのだと著者は考えている。太陽系でプレートテクトニクスが働いているのは地球だけだそうだ。地球の深海に似た環境をもった惑星や衛星はすでに発見されているが、もし、そこに原始生命のようなものが存在していたとしても、プレートテクトニクスが生物の進化の鍵を握っているのだとしたらそこには知性はないのかもしれない。まあ、別の知性に、「お前たちはアホか!?」と言われてしまうのも悲しいからそうでないほうがいいのかもしれない。

もうひとつ、深海底というと地下資源の存在だ。メタンハイドレートというものがエネルギー源として注目されているが、実はこれも深海底の堆積物の中に棲む微生物の代謝の副産物だと考えられているそうだ。海底の有機物の化学変化のものもあるらしいが、それなりの割合で確実に生物由来のものがあるそうだ。
将来、本当に資源として活用されることがあるのかどうかは知らないが、石油と同じように過去からの生物の遺産を食いものにしなければこの文明は維持をすることができないようだ。

まあ、どちらにしてももう少し成熟しないと素人にはわからない世界のようである・・。

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