広島から呉線の「清盛マリンビュー」で東進。三原に到着してからはどうするか。山陽線沿いにも途中下車したくなる街、そして久しく訪れていない街が結構ある。尾道、福山、倉敷。何なら井原鉄道に乗るという選択肢もあるし、岡山に早くに行って「例のミシュラン居酒屋」に行くという手もあるし・・・。
その中で結局選んだのは倉敷。駅からほど近いところに美観地区があるが、それを訪ねたのはいつ以来だろうか。少なくとも、広島を離れてからは行ったことがない。駅の北側は確か「チボリ公園」だったはずだが、それが今では大規模なアウトレットモールができている。今はテーマパークは廃れ、こういうモール街が人を集めるのだろう。倉敷という立地であれば岡山市内からの集客も見込まれると思う。
美観地区はそれとは対照的な駅の南側に広がる。10分も歩けば蔵造りの建物、そして土産物屋や甘味処の並ぶ街並みに出る。多くの観光客が歓声を挙げる中、水路の両側に広がる街並みをそぞろ歩く。10数年前の記憶というのもいい加減なもので(当時はこうやってブログで記録を残すこともなかったので)、「こういう街だったのか」と新鮮な感じで見ることになる。
倉敷を訪れようと思ったのが、今となっては古いナンバーであるが、ガーデンズというユニットによる「エンドレスサマー」のメロディが頭の中を流れたこと。昔の単発ドラマ(私は見ていないのだが)で「同窓会へようこそ」という作品があり、その主題歌に使われたのがこの曲。ネットでドラマの記事を見たことがあり、何だろう、ガーデンズの歌の世界に広がる切なさと、夏の終わりという寂しさがよく合ったナンバーというのかな、それを感じようかなと。
・・・ただ、それには季節が違いすぎたし、またそのナンバーも今や知る人のほうが少ないだろう。倉敷という街の歴史の中に飲み込まれたような感じで、それをうかがわせるものはない。
しばらくぶらつく中で出会ったのが、星野仙一・楽天監督にちなんだ記念館。倉敷出身の同監督を顕彰する建物ではあるが、ファンシーショップのような建物群の一角であるし、だいたい私自身星野仙一という人をそれほどリスペクトしているわけでもないので、外観だけ見て引き上げることに。考えようによっては、倉敷の街並みの品格を落としている建物という評価にもなりかねない。
しばし歩き回り、最後はアーケードの商店街をくぐり抜けて駅に戻る。さて日はまだ高いがこれからどうしようか。
ふと思ったのが、ローカル線に乗ること。これまで何度も姿を見て、一度も乗車したことがなかったのが、水島臨海鉄道。水島臨海の工場群からの貨物線の役割も果たすが、倉敷近郊の路線としても活躍している。1両の気動車であるが座席もほぼ満席で発車。
時折高架の線路も走る中、駅ごとに客が下車する。20分ほどで水島の中心街に至り、最後の水島駅で乗客は私一人になる。
線路はこの先カーブを描き、終着の三菱自工前に到着。両側を道路に挟まれたホーム1本きりの駅。ただ線路はこの先にも伸びており、目を凝らすに車庫があるようだ。貨物駅は分岐の側線ということになるだろうが、これほど殺風景な駅も珍しい。おそらく平日の朝夕は通勤客で混雑するのだろうが・・・。また、その筋には人気のキハ20も走る路線ということだが、今でも走っているのだろうか。
一度先の車庫に引っ込んだ気動車が再び戻ってきて倉敷市行きとなる。今度は私一人が口開けの客となり、以後少しずつ乗車してくる。倉敷近郊路線としてまずまずの存在感を示しているようである。
倉敷に到着。さてこれから夕食ということだが、もう一度美観地区に行くか。昔ながらの風情の居酒屋があるのも確認したし。でも値段が高そうである。旅の思い出とどちらを取るか、はたまた、今から岡山に移動して例の店に行くか。
そんなことを考えながら駅前を歩くと、その答えは見つかった。何と、駅前のちょっとさびれたような路地の商店街に足を踏み入れたところに見つけたのが、その名も「鳥好」。あの、岡山の例の店と同じ名前である。ひょっとして姉妹店とか。
扉を開けると「やはりこれは姉妹店かな」というのが確信的になった。年季の入った大ぶりなテーブル、これといった名物料理はないがいずれも安い値段で提供してくれる酒肴類、岡山駅前のような大将の姿は見えないが、店と客との雰囲気もよさそうである。しばしこちらに落ち着くことに。
結局この後は岡山に移動し、そのまま新幹線の「こだま」で2列シートの乗り心地を味わうことに。
山陽路にもいろいろな街並みがある。多くは北前船や朝鮮通信使の往来で賑わったところであるが、地味ながらもほっと落ち着くスポットが多い。またいずれ、それらの街並みを訪れることもあるのかなと、ぼんやりと考えるのであった・・・・。
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