師走も早いもので28日。今日あたりで「仕事納め」という企業も多いようで、夜の街は忘年会をやるグループも目に付く。帰りの電車で、途中の駅から乗ってきた、いかにも酔っ払って足下がおぼつかなさそうなおっちゃんが、電車が発車した瞬間にバランスを崩して派手に転がった。それでも意識の薄そうなおっちゃんと、周りでその様子を見る白い目。
さて、労働法制のあり方を審議していた労働政策審議会なるものが、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を報告としてまとめ、早ければ年明けの通常国会にて審議されるという報道があった。
「ホワイトカラー・エグゼンプション」。またしても官僚の好きな横文字であるが、エグゼンプションというのは「適用除外」というそうな。ならそう言えや。つまりは、労働基準法で定められているところの「週40時間労働」の適用を、労働の自由裁量が効きやすいとされるホワイトカラー、特に管理職一歩手前の層や、研究職を対象に除外するというもの。これにより、時間ではなく成果により賃金を支払うというものである。正に能力主義・成果主義が問われるご時世を反映しているといえる。
現状はどうだろう。ホワイトカラーは自由裁量で労働ができるといえば聞こえがいいが、何をもって成果とするかという話もある。また、管理者が残業を「命令」しなくても、成果が上がらなければ残業でも休日出勤でもせざるをえない実情があり、それは「管理者が命令しなくても労働者が自主的に出勤してきたのだから、残業代とは関係ない」という労務管理が広く行われている面がある。「手がキレていつも定時で仕事を片付ける労働者と、手がキレずにダラダラとやって、残業代のかかる労働者と、どっちが経営者にとってはありがたいか」という考え方もあるだろう。
しかし、これって、経営者の都合のよいように「成果主義」という言葉を出しているだけではないだろうか。また、残業代を支払わない、長時間労働を課している現状に対して法律でお墨付きを与えるようなものである。別に横並びの労働環境がよいとは言わないが、使用される側にとってみればたまったものではない。
「残業する前に業務の効率化を考えましょう」「早く帰れるように工夫しましょう」という。しかし、それには労働者自身の意識でできることと、労働者を取り巻く環境により物理的に無理な場合があるだろう。労使が協調して(といっても、使用者側とベッタリの幹部という日本の労働組合はアテになりませんが)その状況を改善するのが先ではないかと思う。
所得格差、過労による病気、果ては自殺・・・労働を取り巻く問題は山積しているが、この「適用除外」により、これまで以上に労働へのモチベーションの低下や、会社への「忠誠心」の低下を招くことになりはしないか。人材の流出、そして結局は業務の海外流出に拍車をかけ、結局は企業や産業全体に悪影響を及ぼさないか。それだけに、この法案の行方については、与野党(特に野党!!)の慎重な議論を求めたい。