津和野からの「DLやまぐち号」に乗車する。まずは先頭に向かって機関車の姿を見る。この日(4月29日)は普通の祝日だったためか観光客の姿も思っていたより少なく、特に子ども連れが少なかったように思う。機関車の前で記念撮影する人もちらほらいる程度。
やはり、乗る客車は同じレトロ風車両だったとしても、それを牽引するのがSLかDLかの違いによって、人気、注目度も違うのかなと思う。私としては実際に乗車した経験からDLのほうに懐かしさを感じるのだが、やはり見て絵になるということではSLに軍配が上がるだろう。
客車に乗る。今回取った席は最後尾の5号車。戦前を代表するオハ31を復刻したもので、後ろには展望車がついている。先頭の1号車グリーン車(マイテ49を復刻)は満席で、中央の2~4号車(オハ35を復刻)はガラガラだったが、5号車はそれなりの乗車率で、各ボックスに1人以上客がいた。展望車がついているからだろうか。
前回乗った時は中央部のオハ35だったが、そちらは背もたれにもシートがあったのに比べて、オハ31は板張り。それがより一層のレトロ感を出している。
また、昨今の事情を反映して、テーブルにはアクリル板が設置されている。もっともこの日は普通車は全体的に空いていて、知らない人同士がボックス席で相席になっている様子はなかった。ちょうどアクリル板を支える足のところが飲み物を置くのにちょうどよかった。
発車する頃にはすっかり青空が戻り、15時45分、津和野を出発。早速、展望デッキに出てみる。心地よい風が吹き出す。
展望デッキも譲り合いということで、しばらくして客席に戻る。飲み鉄もしないといけないし。天気もよいので窓も開けてみる。SLと違って煙が入り込む心配はないのだが、それでも車内放送では「トンネルの中では『排気ガス』が入りますので、展望デッキには出ないようにしてください、窓も閉めてください」という注意が入る。
まずは長い白井トンネルをくぐり、島根県から山口県に向かう。次の船平山からは穏やかな田園地帯。再び窓を開ける。ちょうど田植えの時季、田圃に水が張られているところ。こういう、窓を開けても文句を言われない列車というのも貴重な乗車機会だ。
展望デッキにも出てみる。こうして外の風を感じるのがよい。天気が回復してよかった。撮影する人、クルマの窓から手を振る人、やはりこうした列車はみんなの目を引く。
この「DLやまぐち号」は春は5月5日までの運行で、次は7月から9月まで、土日祝日を中心に走る。そのインターバル機関の5月30日、山陽線の厚狭~下関間の開業120周年記念イベントとして、このレトロ風客車を使用した臨時列車が走るという。牽引するのは「トワイライトエクスプレス」などを牽引したEF65で、さしずめ「ELやまぐち号」といったところ。乗ってみたいとも思うが、札所めぐりも進めたいし・・。
給水塔跡が残る篠目に到着。ここで3分停車ということでいったん外に出る。ディーゼル機関車となると給水は直接関係しないが、かつての鉄道景色ということで楽しめる。
ここから再びの峠越え。ただ、先ほどの船平山もうそうだが、どちらかといえば下り勾配がメインである。やはり往路、新山口方面から険しい峠に挑むのが列車の見どころだろう。
山口に到着。観光列車としての風情は次の湯田温泉までで、後は新山口に帰るための走行である。車内にも「もうすぐ終点か」という雰囲気が漂う。後は住宅が広がる中を走り抜ける。
17時30分、2時間近い走行を終えて新山口に到着。DD51も自分で客車を車庫に回送させるべくいったん切り離され、入替線に向かう。お疲れ様でした。
SL2両の検査、修繕ということで今季は「DLやまぐち号」としてDD51が使われているが、この機関車も徐々に役割を終えて、2021年3月のダイヤ改正ではJR貨物の定期運用からも姿を消した。SLは各地でイベント列車として運行されているが、DLは観光客向けにはアピールが弱いのかそうした話もなく、現在表舞台で見られるのはこの「DLやまぐち号」くらいしかない。見方によっては、SL列車に乗るよりも貴重な機械かと思う。
さてこれから広島に戻る。今回使うのは「山陽新幹線直前割きっぷ」。利用3日前から前日までネット限定での発売。「こだま」「ひかり」の指定席が割引になるが、3月までは「直前割50」という名前で50%引きだったのが、4月からは割引率が減少した。それでも、新山口~広島間が通常5370円のところ3500円で利用でき、乗車券も「広島市内」までとなっているから、利用価値はある。
18時01分発の「こだま864号」を予約していた。時刻表を見ると500系使用とあり、ならば6号車がかつてのグリーン車の流用である。博多寄り(後方)の席を指定していた。
到着の案内があり、列車が来る方向を見るとどうも500系と様子が違う。やって来たのはN700系(山陽・九州新幹線用)だ。車両運用の都合かと思うが、「こだま」にも登場するとは。
500系の6号車はあくまで普通車の指定席だが、N700系は「みずほ」「さくら」での運用がメインで、6号車は博多寄りの半分が指定席、新大阪寄りの半分が現役のグリーン車である。それが「こだま」運用ということで6号車は普通車の指定席なのだが、私が取っていたのは博多寄りのほう。まあ、N700系の指定席は2人がけシートが並び快適なのだが、席の選択によってはグリーン車に乗れたわけだ。このきっぷは列車、座席の変更ができないのでちょっと惜しいなと思いつつ自席に座る(実際は、停車の間にちょっとだけ席に腰かけてみたのだが)。
鈍行で広島に戻ってもよかったのだが、青春18きっぷの時季ではないので、通常の運賃に1200円ほどの差額を払って新幹線に乗って時間短縮できるのはよい。翌日は通常の出勤なので、早めに帰宅しようというところだ(最近、自分の中でこうした思考が増えているように思う)。
徳山でコンビナート群を見た後は山の中に入り、18時50分、広島に到着。いろんな乗り物に出会えた津和野行きとなった。
これで大型連休を迎えることになったが、緊急事態宣言とは関係なくこういうプランで行こうと考えていたコースをたどることにする。行先は同じ中国地方だ・・・。
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