雨の中の出発となった24日。9時前に新山口駅の南口に降り立つ。こちらが新幹線側ということで、駅前にはビジネスホテルや各社レンタカーが目立つ。
今回利用するのはバジェットレンタカー。前夜、天気予報を見て急遽予約を入れた。9時から16時の利用である。おしまいを16時にしたのは、その後に宇部線に乗って宇部新川に向かうから。公共交通機関をベースとしつつも、レンタカーも織りまぜる。そこには当然クルマならではのプラスアルファは期待したい。
軽ということでスズキのワゴンRが出てきた。まだ走行距離が6000キロあまりという新車である。1人で移動するなら十分だ。
これから龍蔵寺に向かうので、ちょうど来た道を戻る格好ではある。一見無駄な動きのようだが、湯田温泉にはそもそもレンタカー店がなかったし、この先の宇部新川の宗麟寺も一緒に回るのでかえって合理的ではないかと思う。
時折強く降ったり、また少し弱くなったり、変わりやすい天気である。この日は夕方までこうした天候に一喜一憂しながら運転することになる。
20分あまりで湯田温泉の手前まで来て、秋芳洞方面に続く県道に入る。バス停のある吉敷はこの辺りで、龍蔵寺へはローソンの角を曲がって山の方向に進む。住宅地も広がっているところで、少しずつ坂が上っていく。これ、レンタサイクルならじわじわと痛めつけられるパターンだ。
そのうちに道も細くなり、山も深くなった。龍蔵寺は道の行き止まりにある。駐車場から雨の中歩く。緑に覆われて秘境感もただよう。山口県最古の名刹とある。
寺の縁起によると、豊後で修行していた役行者が北のほうに瑞雲と光明を見つけて、この地にやってきた。そこの岩窟を「龍の蔵」と名付けて熊野権現を祀ったのが始まりとされる。後に行基が千手観音を祀り、伽藍を築いたという。以後は山岳修行の場として、また大内氏、毛利氏の保護もあったそうだ。
紅葉に覆われた境内は風情があるのだが、いかんせん大雨である。参道横の川も濁流と化している。
石段を上がり、楼門に差し掛かる。すると正面にはロープが張られ、「閉門」の札が出ている。うわっ、雨のために拝顔中止と来たか。
それでも、入山料を納める小箱は門の横に置かれていたし、これは昨日夕方に「閉門」の札を出していたのがそのままになっているのではないかと思う。本当に入山を止めるのなら駐車場に看板を出すのではないかな。
さらに石段を上がった正面に観音堂がある。ともかくお勤めとする。脇には樹齢860年というイチョウの木が立つ。
奥の院「龍の蔵」へ続く山道の案内があるが、とても行けたものではない。
水溜まりができた中を歩き、鼓の滝に向かう。三段になっていて、中央がくびれた形からこの名がついたという。四季折々に美しい景色を見せるとあるのだが、この時は濁流が上から襲いかかろうかという水流だ。四季の風情などと言ってる場合ではなく、下手すれば寺に土砂が流れ込むのではないかとヒヤヒヤする。ここは、早々に引き上げたほうがよさそうだ。
観音堂から楼門への石段の途中に、本堂への通路がある。本堂横の建物が納経所で、電気がついている。寺じたい閉めたわけではないなと思い、インターホンを押す。もしこれで誰も出てこずに、「再度訪問」となったらどうしようかと思ったが、しばらくして女性が姿を見せたのでホッとした。
内心、こんな雨の中に来たおっさんをどう感じているかはわからないが、普通に筆をとって墨書と朱印を押してくれた。どこから来たのかという質問もなく、「お気をつけて」で送られた。
駐車場に戻ると雨が一層強くなった。ともかくここから出る。吉敷までの細道を通るが、途中、雨ガッパがずぶ濡れになりながら自転車を押していた少年とすれ違う。その先では、大阪ナンバーのクルマと離合する。このクルマの主、同じように中国観音霊場めぐりか?
今回は大雨の中で早々に引き上げたが、山口市の寺といえば瑠璃光寺が有名な中で、こうした山岳信仰に由来を持つ寺に来ることができたのは新たな気づきである。夏は森林浴も楽しめそうだ。中国観音霊場の選定にあたり、毛利氏の菩提寺だった洞春寺とは違うカラーを持った龍蔵寺も選ばれているのは、札所めぐりの景色により一層の彩りを与えてくれるのだなと思う。またいつか、雨に降られていない時に奥の院も含めてゆっくり回ってみたい。
カーナビで次の目的地を第18番・宗麟寺にセットして、国道9号線に戻る。そのうち、無料道路の山口宇部道路に入る。県道6号線の一部との扱いだ。こうした道路の存在も、山口市街から宇部に移動するのは今やこうした道路がメインである。龍蔵寺から宗麟寺まではカーナビだと1時間ほどで着くと出る。これが山口線~宇部線、さらに路線バスに乗るかテクテク歩くかと比べると、その差は歴然としている。公共交通機関の移動の不便さも楽しみの一つではあるが・・・。
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