まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第24回四国八十八所めぐり~結願の寺に到着

2019年02月21日 | 四国八十八ヶ所
大窪寺に向けて県道3号線から国道377号線に差し掛かる。そこで12時のチャイムが鳴ったのは学校のチャイムのようだ・・・と思ううちに出てきたのは学校らしい建物。手前には休憩用のベンチもあるが、校舎には「天体望遠鏡博物館」の看板が見える。

この建物はかつて「多和小学校」だったところだ。2012年に122年の歴史を閉じた小学校(さかのぼれば明治時代、日清戦争よりも前に開かれた小学校ということになるのだが)の廃校舎を利用して、2016年にできた施設である。こうしたところに天体望遠鏡の博物館があるというのは夜の星空を楽しむことができる環境ということだろう。実際、観測のイベントも行われることがあるそうだ。

また校内には「結願の郷」という建物で土地の農作物や手作りの産品などが売られていて、休憩もできる。ちょうど12時すぎだが食事は大窪寺のお参りが終わってからにしようということで、ここはいったん休憩とする。お茶と小袋の節分豆のお接待を受ける。トイレも最新の設備を揃えていて、大窪寺に向けての最後の休憩スポットとしては快適なところだ。

係の人から「今から大窪寺ですか?」と訊かれる。「ずっと歩いて?」となるが、そこは正直に鉄道やバス利用中心だったが、最後は歩いてたどり着くつもりと答える。まあ、ローカル列車、ローカルバスなどの乗り物のダイヤをどう組み合わせるかというのも遍路旅(遍路を旅と言ってはいけないのかもしれないが)の楽しみである。別に誰かをだますつもりでもないのだが、たまたま最後の区間を歩いているだけでも「遍路道を全て歩いて来た」と見られるものなのかなと思う。

店内には「結願御礼」というどぶろくの四合瓶が置かれている。結願の記念に買ってもいいかなと思ったが、これからまだ5キロ以上あるし、瓶を担いでいくのもちょっと・・・という感じで見送る。持ち運びが容易な300ミリリットルやワンカップなら何本か購入するところだったが・・(何本も買うたら余計重たなるやろが)。

しばらく休憩した後、国道を歩く。まただらだらとした上り坂となる。それを上りきったところで三十四丁石の案内板がある。カウントダウンが七十丁から始まったから半分を過ぎたところである。丁石は国道の拡張工事にともない崖の上に移したとあるが、それらしき姿は見えない。

ここから下りに転じて、左手に休憩所のベンチがあって三十丁。いよいよ大詰めかなと思う。ここからは道路拡張工事の対面通行区間を過ぎて山村風景の集落を過ぎる。ここまで来ると時間を気にせず淡々と歩くばかりである。

二十丁のところで旧遍路道は国道と分かれて左手に伸びる。後はこの道なりに行けば大窪寺に至る。前日はにわか雨が降ることもあったが、この日は冬の穏やかな日差しが差し込む。少なくとも雨に打たれながらとか、夏の猛暑で汗だく・熱中症になりかけながら大窪寺にトボトボとたどり着くということもなく、この時季を選んだのは悪くないなと思う。

道端に十六丁石を示す矢印がある。わざわざ脇道を指していて、民家の庭先のようなところも通る。川沿いの細い道に建てられた名残だという。どう見ても民家の軒先で、こういうところを通って大丈夫かと思うが、遍路道を示す矢印のステッカーも貼られているのでそのまま進む。次の十五丁石は地元の家らしい墓石とともに覆いにかぶさって安置されていた。

さらに十四丁、十三丁となると完全に畑の中を歩くし、さらにその先の藪の中にある。夏場だったら草むして歩くどころではないのではないか。また途中に門扉を開けるところもあり、大丈夫か、不法侵入になっていないかヒヤヒヤする。最後に昔の姿を残す遍路道らしいところを歩いたといえば聞こえはいいが、果たしてどうだろうか。丁石にそこまでこだわらず普通に車道を歩けば十分だと思う。

そのまま進むとようやく車道に戻り、「大窪寺 0.7k」と手書きの遍路道の標識が出てきた。これには私ですらうなったので、ここまで1200キロをずっと「ガチの歩き遍路」で来た人ならよりグッと来るものがあるのではないかと思う。スポーツの実況なら、「さあ、いよいよ残り1キロを切って来た!! ビクトリーロード! 栄光のゴール、結願までは残りわずかです!!」とでも言うか。ただ、周りには他に歩く人はおろか、家はあるが住む人の気配がほとんど感じられない静かな集落である。淡々と歩くが、最後はまた上り。わずか数百メートルと思うが結構ダラダラ続くように感じられる。

それでも遠くに山門の屋根がチラリと見えた。ああ、着いたんやなとスピードを上げて、大窪寺の立派な山門の前に出た。別に誰かがゴールテープを持っているわけでもなく、拍手が起こるわけでもない。単に「着いたな」というくらいのものである。

回り方は人それぞれ、私もここまで結構変わったやり方で来たが、ともかく八十八所目の札所に着いた。長尾寺を出たのが朝の9時で、大窪寺に着いたのは13時半。やれやれと、最後の札所にて手を合わせることに・・・。
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