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維新直後の金谷宿の米札

(フヨウに雨宿りのマルハナバチ - 会社駐車場より)

一日雨。帰宅後、久し振りに「歳代記」の「古文書に親しむ」で入会以前の教材だった分を読んだ。今日読んでみたのは、明治維新直後、東海道の金谷宿での貨幣制度の様子を書き記した部分である。読み下したものを記す。

当(明治ニ年)五、六月頃より、太政官民部省通商司様より、金札通用厳しく仰せ出され、もっとも七、八月頃より、正し金銀相見え申さず、拠(よんどころ)無く金札通用に相成り、当駅御伝馬所にて米札拵え、これ通用致し候。同川会所にても米札凡そ千両程も拵え、通用致し候。もっとも当節正銭は少しも相見え申さず、唯々金銭とも紙切れにて通用仕り候。
※ 米札 - 江戸時代の藩札の一。米を兌換準備としたもので、米の量とその金銭に換算した額が記してある。

維新直後には通用する貨幣を見ることがなくなったので、禁止されたにも関わらず、致しかた無く、伝馬所や川会所で米札をこしらえて、宿内に通用させたという。

明治三(午)年正月中旬より、往来通行薄く相成り、追々諸色高値、米値段金壱両に付き、玄米壱斗弐升位に相成り申す。右に応じ升ものは勿論、一切高値。諸家様にて新規御吹き立てに相成り候弐分金、すべて悪金にて下々に通用これ無く、徳川様御代御吹き立てとも、吉し悪し抱えず、下々に通用これ無く、中には諸家様御吹き立て成られ候弐分金、弐朱位に売りたく候いても相手これ無く、この金、チャウニキンと云う。
※ 諸色 - 必要ないろいろの品物。
※ 升もの - 升(ます)で計るもの。穀物類のこと?
※ 悪金 - 質の悪い貨幣。
※ 弐分金、弐朱位 - 弐朱は弐分の4分の1

また徳川様御代々金銀とも、宿方、村方、山内、高持金万家へ治まり候と申す事。当時下々には見る事もなく、通用金の義は金札ばかり。または正銭は、元四文銭が弐拾四文に通用、文久銭が拾六文に通用、元壱文銅銭が拾弐文に通用、鐚銭元同断に通用、右の適用にて正銭これ無く、伝馬所、川會所とも宿内限り米札拵え通用仕り候。米札表へ米壱合と印し、銭四十八文に通用、壱合百文、弐合半弐百四十八文、三合印し三百文、五合五百文、宿内限りとは申しながら往来旅人へ持ち為し、大きに通用よろしく、当五月頃より、伝馬所米札引揚方に差し支え、川會所も同断、一向下々不通用に相成らず、川會所の義は追々引替え仕り候えども、伝馬所の義は当時引上げ相付き申さず候。
※ 高持 - 高持百姓。本百姓のこと。
※ 金万家 - お金持ち。
※ 鐚銭(びたせん)- 表面の文字が磨滅した、質の粗悪な銭貨。
※ 元同断 - 元と同じ。

使える貨幣が出回らず、米札が通用してなかなか回収出来なかった。なお、銭四十八文に通用した米札は壱合ではなくて、半合で無ければ辻褄が合わない。誤記かもしれない。
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